呟き

ヤクモ

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2021/01/27

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 呪い。それを自覚してもがいている人はどれだけいるのだろう。

 私は、母親の呪いがかかっている。きっかけは父の死だった。父を失った母を、私は長子として支えなければならないと思っていた。周囲の大人たちも当然のように私が母を支えるのだと言ってきた。それが、当たり前だと思っていた。それまで苦労を知らずに育った無知なこどもが大人を支えようとしたとき、何ができるのだろう。何も、できないのだ。何もできずにいるべきだった。そうすれば周囲の大人たちが気づき、手を差し出していたかもしれない。しかし、私は支えることがどういうことなのかもわからないまま、母親の隣にいた。隣で、母親を肯定し続けた。私の話などろくに聞かず、自分のことばかり話、泣く母親の背中をさすった。いつからか、私の考えは母親の考えと同じになっていた。母が良いとするものを私も肯定し、母が拒否するものを私も否定した。

 成人して、はじめて恋人ができた。そのとき私は母親の呪いに気づかずにいて、父の死の呪いがかかっていることだけを恋人に言った。恋人は「気にしない」と言った。
 同棲をするようになって、母親から離れる時間ができた。恋人と私の価値観は正反対なことが多く、そのたびに「母はそんなこと言わないのに」と思っていた。その時、ふと、なぜ私は母のことを考えているのだろうと思った。隣にいない母親の顔色を気にしていた。あぁ。これが呪いか、と思った。

 私自身もまた母親に依存していた。自分の考えを母親のものに合わせていた。呪いを、私自身が強めていたのだ。今の私の隣にいるのは母親ではなく恋人だ。しかし、私の恋人を知らない人には、私の隣にいるのは母親なのだろう。

 今の私は母親の呪いから逃れようと、恋人に寄生している。傍からみると私はただの依存体質だ。しかし、私にとって母親の呪いには父の死の呪いもついてくる。二重の呪いで苦しめられるよりなら、恋人の甘い誘惑に依存するほうがいくらか呼吸が楽だ。

 呪いなんて簡単に解けないのだろう。
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