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一条の光明
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受け取った聖剣エクスグラス。それは、重かった。重量があるという訳じゃない。イアンの気持ちが、想いが詰まっている。それが、聖剣エクスグラスに宿っている。折れたとしても、それはとても大切なモノなのだ。
俺はそれを、聖剣エクスグラスを手に入れた。折れた柄だけだが、大事に手に持つ。
「そういえば、イアン。聖剣エクスグラスについて、なにか知っている事はないか?」
「私にも、聖剣エクスグラスは良く分からない。ただ、聖剣の持ち主として認めた者の、心の強さによって力が増す。というくらいだ」
「何年頃からあるのとか、どんな鉱石で創られたとか、そう言う事は分かるかしら?」
エイミーがそう尋ねるが、イアンはその問いに首を振って答える。
なにも知らないって事か。じゃあ、自分達でいつからあるのか、どんな鉱石で創られたのか、誰が鍛えたのか、を調べないといけない。
「すまない。折角の話なのに、力になれなくて……」
「いや、仕方ないさ。俺達でなんとか調べて見るよ」
とは、言ったものの。一体どうやって調べたら良いのやら……。
聖剣エクスグラスは、歴史書にも載ってないんだよなぁ。そりゃ、魔王を封印したときには、イアンが使ったわけじゃない。封印魔法で魔王を封印したんだ。
だから、歴史書に載ってないのも仕方ないのである。
つまるところ、打つ手がない。そう言う事だ。
エイミーはこれについて、何か具体的な案を持っているのだろうか? あるなら聴きたい所だ。
「じゃあ、早速調べてみるわ。行きましょう! みんな」
「分かった」
「任務、了承」
「……お願い申し上げる」
イアンは頭を下げて、俺達にそう告げた。その真摯な態度を見て、イアンの為にも絶対に、聖剣エクスグラスを元通りにしてやりたいな。そう思った。
そうして、俺達はイアンの下を去って行った。
帰り道、エイミーに聖剣エクスグラスを元に戻す案があるのか、尋ねてみる。
「なあ、エイミー。エイミーは、聖剣エクスグラスを元に戻すための具体的な案はあるのか?」
エイミーは思案顔で腕を組んでいる。
「そうね。聖剣エクスグラスを元に戻す。それは、私達の一番重要な目的よ。まず、今の現状を確認しましょう。――」
エイミーは語る。
一つ、聖歴七百四十五年に、聖剣エクスグラスを兄のケヴィン=ブレイズが手に入れる。
二つ、精鋭百人を用いて、兄のケヴィン=ブレイズと、弟のイアン=ブレイズが魔王の城近くまで行く。
三つ、魔王の城近くで、魔王が現れて精鋭と兄のケヴィン=ブレイズが殺される。そして、兄に聖剣を託されたイアンは魔王に斬り掛かったが、聖剣が折れてしまう。
四つ、魔王はイアンを逃がす。
五つ、五年後にイアンは魔王を倒すために、命を懸けて封印魔法を使って、魔王を封印する。
「これが、確定している現状。私達は、五つ目のイアンが魔王を封印する。という現状を変えたい。その為に、私達は五年前に行ったんだけど、結果は失敗。聖剣エクスグラスを手に入れられなかった。とすると、聖剣エクスグラスを元に戻す必要がある。それには、――」
一つ、聖剣エクスグラスを誰が鍛えたのか調べる。
二つ、聖剣エクスグラスはどんな素材で創られたのか調べる。
三つ、聖剣エクスグラスはいつ創られたのかを調べる。
「これが、知りたいわけ。じゃあ、どうやって調べるか。と、言う事になるわけなんだけど……。正直、これと言って案は無いわね」
ありゃ、エイミーでも案が無いのか。それだと、これからどうするべきか。
方針は分からない。でも、刻一刻と時間は迫っている。貴重な時間だ。無駄にする事は出来ないのだ。
「とりあえず、砦の人達に聴いて見るか。良い情報が手に入るかはわからないけどさ。やらないよりはマシだろ?」
俺の問いに、エイミーも頷いた。
「そうね。有益な情報が手に入るかは分からないけど。現地の人の方が、知っている可能性はあるかもしれないわね」
そうと決まったら、砦に行くとしようか。
「じゃあ、一先ず砦に向かおうか」
「良いわよ」
「了承」
という事で砦に向かう。
また、この砦に来てしまった。門兵は死んだ魚のような目でこちらを見ている。
と、俺の顔を見て濁っていた目に光が戻った。
「これは、先の戦いの英雄殿! 一体どうしました?」
「いや、ちょっと聴きたい事があって戻って来たんだ」
「それはどういう事でしょうか。差し支えなければ、私が答えます」
ふむ。門兵さんに聴いて見る。とりあえず、色んな人に聴いて見るつもりだったから良いか。
「実は、――」
「――『草』より、報告有り! 早々に門を開けてくれ!」
その時、馬の駆ける音と共に騎乗した騎士から大声が掛かる。
「はっ! 承知しました! 門を開けてくれ! ……英雄殿すみません」
門兵の声と共に、門がゆっくりと開いていく。
「いや、気にしなくて良い。何か重要な情報みたいだしな」
「そう言って頂けると、幸いです」
「じゃあ、俺達も中に入れさせてもらうけど、良いか?」
「はい、どうぞお通りください」
門が完全に開くと、馬が砦の中を駆けて行った。
俺達もそれを通って行く。
「ねぇ。『草』ってどういう意味なの?」
「地面に生えている植物の総称デス」
「アル……。そういう意味じゃないの」
アルの真面目な答えに、エイミーが呆れている。確かに『草』って、聞いても良く分からないよな。俺も確かではないが、良くゲームとか、そういうもので聴いた事があるので分かる。
「んー、『草』っていうのは、つまり、斥候の事だ」
「という事は、さっきの騎士は斥候からなにか重大な情報がある。って事を言いたかったのね」
「そういう事さ。一体どんな情報なのかは知らないけどな」
あの慌てようだ。決して、良い情報ではないだろう。はてさて、どんな情報なのやら。
砦の中はいつも通り、負傷兵がごった返している。それを癒す、回復魔法使いは必死になって治療を続けている。
「さて、どうやって情報を手に入れるか」
「一兵卒に聴いても、分からないと思うわ」
「俺もそれは思う」
一兵卒じゃ、知らないだろう。だとするならば、騎士や貴族等の有力な権威の持ち主や身分の高い人に聴く方が良いだろう。
だが、ここで問題だ。俺は、先の戦いで四魔将が一のトードスゴットを討ち取った英雄だ。だとしても、ただの志願兵だ。英雄だとしても身分の高いお方に俺が会って、尚且つ話を聴いてくれるだろうか?
状況は半々と言った所だろう。教えてくれる人もいれば、妬んで教えてくれない人もいるかもしれない。そもそも、会ってくれない可能性もあるのだ。
「さて、一体どうしたら身分の高い人に会う事が出来るのかね」
「んー、そうね。もう、国王から報酬は頂いちゃったしね。今から会える訳もない。どうしようかしら」
エイミーと二人で唸る。ただ、良い案は浮かばない。そうそう、良い案なんて思いつかないよな。
その時、大広間で騎士が大声で叫んだ。
「皆の者! これから、三十分後に陛下から重大なお言葉がある! 三十分後に大広間に集まるのだ!」
嫌な予感がした。というか、嫌な予感しかしない。
エイミーはどうする? と、こちらに目を向けてくる。
「とりあえず、三十分後に大広間で話を聴いて見ようか」
「それもそうね」
「了承」
これと言って、良い案もないし嫌な予感はするが、話だけでも聴いておこう。聴くだけは聴く。それから、俺達がどうするか決めればいい。
三十分後。大広間に、こんなにいたのか? と思うほどの人数が集まっていた。
恐らく、この前の三倍。三千人くらいが集まっていた。
そこに、外壁の上に国王がゆっくりと現れた。
「皆の者! 集まってくれて感謝する! 斥候の情報より、魔王軍の軍勢が移動しているのを捕捉した。その数は四千程だ! 今から、三日後にここに到着する予定だ。皆の者。ここが正念場だ!
ここで、魔王軍に大打撃を与えて勝利をこの手に掴もうぞ!」
国王の一言にぽつぽつと歓声が上がり、次第にその声は大きくなって、全員が雄たけびを上げた。
やっぱり、良い情報じゃなかった。魔王軍がまた攻めてくるのか。しかも、前回の1.5倍かそれ以上の数。相手は本気だ。
だが、これは――。
「もしかしたら、チャンスじゃないか?」
ぽつりと呟いた。
「え? なんて言ったの!?」
兵士の大歓声にエイミーが聴き取れないと、再度尋ねてくる。
「ここで、手柄を立てたら国王陛下に謁見出来るかもしれない!」
「そうか! それなら、情報が手に入るかもしれないわね!」
行く先が不透明だったが、一筋の光明が見えた。
そうさ。ここで、もう一度手柄を立てたら、謁見出来るかもしれない。
そして、聴くんだ。聖剣エクスグラスについて。
「なんとか、希望が見えてきたな!」
「そうね! 頑張りましょう!」
三日後だ。三日後に戦争が始まる。そこで、相手の大将を討ち取れば、また謁見出来るかもしれない。道は見えた。さぁ、頑張ろうじゃないか!
俺はそれを、聖剣エクスグラスを手に入れた。折れた柄だけだが、大事に手に持つ。
「そういえば、イアン。聖剣エクスグラスについて、なにか知っている事はないか?」
「私にも、聖剣エクスグラスは良く分からない。ただ、聖剣の持ち主として認めた者の、心の強さによって力が増す。というくらいだ」
「何年頃からあるのとか、どんな鉱石で創られたとか、そう言う事は分かるかしら?」
エイミーがそう尋ねるが、イアンはその問いに首を振って答える。
なにも知らないって事か。じゃあ、自分達でいつからあるのか、どんな鉱石で創られたのか、誰が鍛えたのか、を調べないといけない。
「すまない。折角の話なのに、力になれなくて……」
「いや、仕方ないさ。俺達でなんとか調べて見るよ」
とは、言ったものの。一体どうやって調べたら良いのやら……。
聖剣エクスグラスは、歴史書にも載ってないんだよなぁ。そりゃ、魔王を封印したときには、イアンが使ったわけじゃない。封印魔法で魔王を封印したんだ。
だから、歴史書に載ってないのも仕方ないのである。
つまるところ、打つ手がない。そう言う事だ。
エイミーはこれについて、何か具体的な案を持っているのだろうか? あるなら聴きたい所だ。
「じゃあ、早速調べてみるわ。行きましょう! みんな」
「分かった」
「任務、了承」
「……お願い申し上げる」
イアンは頭を下げて、俺達にそう告げた。その真摯な態度を見て、イアンの為にも絶対に、聖剣エクスグラスを元通りにしてやりたいな。そう思った。
そうして、俺達はイアンの下を去って行った。
帰り道、エイミーに聖剣エクスグラスを元に戻す案があるのか、尋ねてみる。
「なあ、エイミー。エイミーは、聖剣エクスグラスを元に戻すための具体的な案はあるのか?」
エイミーは思案顔で腕を組んでいる。
「そうね。聖剣エクスグラスを元に戻す。それは、私達の一番重要な目的よ。まず、今の現状を確認しましょう。――」
エイミーは語る。
一つ、聖歴七百四十五年に、聖剣エクスグラスを兄のケヴィン=ブレイズが手に入れる。
二つ、精鋭百人を用いて、兄のケヴィン=ブレイズと、弟のイアン=ブレイズが魔王の城近くまで行く。
三つ、魔王の城近くで、魔王が現れて精鋭と兄のケヴィン=ブレイズが殺される。そして、兄に聖剣を託されたイアンは魔王に斬り掛かったが、聖剣が折れてしまう。
四つ、魔王はイアンを逃がす。
五つ、五年後にイアンは魔王を倒すために、命を懸けて封印魔法を使って、魔王を封印する。
「これが、確定している現状。私達は、五つ目のイアンが魔王を封印する。という現状を変えたい。その為に、私達は五年前に行ったんだけど、結果は失敗。聖剣エクスグラスを手に入れられなかった。とすると、聖剣エクスグラスを元に戻す必要がある。それには、――」
一つ、聖剣エクスグラスを誰が鍛えたのか調べる。
二つ、聖剣エクスグラスはどんな素材で創られたのか調べる。
三つ、聖剣エクスグラスはいつ創られたのかを調べる。
「これが、知りたいわけ。じゃあ、どうやって調べるか。と、言う事になるわけなんだけど……。正直、これと言って案は無いわね」
ありゃ、エイミーでも案が無いのか。それだと、これからどうするべきか。
方針は分からない。でも、刻一刻と時間は迫っている。貴重な時間だ。無駄にする事は出来ないのだ。
「とりあえず、砦の人達に聴いて見るか。良い情報が手に入るかはわからないけどさ。やらないよりはマシだろ?」
俺の問いに、エイミーも頷いた。
「そうね。有益な情報が手に入るかは分からないけど。現地の人の方が、知っている可能性はあるかもしれないわね」
そうと決まったら、砦に行くとしようか。
「じゃあ、一先ず砦に向かおうか」
「良いわよ」
「了承」
という事で砦に向かう。
また、この砦に来てしまった。門兵は死んだ魚のような目でこちらを見ている。
と、俺の顔を見て濁っていた目に光が戻った。
「これは、先の戦いの英雄殿! 一体どうしました?」
「いや、ちょっと聴きたい事があって戻って来たんだ」
「それはどういう事でしょうか。差し支えなければ、私が答えます」
ふむ。門兵さんに聴いて見る。とりあえず、色んな人に聴いて見るつもりだったから良いか。
「実は、――」
「――『草』より、報告有り! 早々に門を開けてくれ!」
その時、馬の駆ける音と共に騎乗した騎士から大声が掛かる。
「はっ! 承知しました! 門を開けてくれ! ……英雄殿すみません」
門兵の声と共に、門がゆっくりと開いていく。
「いや、気にしなくて良い。何か重要な情報みたいだしな」
「そう言って頂けると、幸いです」
「じゃあ、俺達も中に入れさせてもらうけど、良いか?」
「はい、どうぞお通りください」
門が完全に開くと、馬が砦の中を駆けて行った。
俺達もそれを通って行く。
「ねぇ。『草』ってどういう意味なの?」
「地面に生えている植物の総称デス」
「アル……。そういう意味じゃないの」
アルの真面目な答えに、エイミーが呆れている。確かに『草』って、聞いても良く分からないよな。俺も確かではないが、良くゲームとか、そういうもので聴いた事があるので分かる。
「んー、『草』っていうのは、つまり、斥候の事だ」
「という事は、さっきの騎士は斥候からなにか重大な情報がある。って事を言いたかったのね」
「そういう事さ。一体どんな情報なのかは知らないけどな」
あの慌てようだ。決して、良い情報ではないだろう。はてさて、どんな情報なのやら。
砦の中はいつも通り、負傷兵がごった返している。それを癒す、回復魔法使いは必死になって治療を続けている。
「さて、どうやって情報を手に入れるか」
「一兵卒に聴いても、分からないと思うわ」
「俺もそれは思う」
一兵卒じゃ、知らないだろう。だとするならば、騎士や貴族等の有力な権威の持ち主や身分の高い人に聴く方が良いだろう。
だが、ここで問題だ。俺は、先の戦いで四魔将が一のトードスゴットを討ち取った英雄だ。だとしても、ただの志願兵だ。英雄だとしても身分の高いお方に俺が会って、尚且つ話を聴いてくれるだろうか?
状況は半々と言った所だろう。教えてくれる人もいれば、妬んで教えてくれない人もいるかもしれない。そもそも、会ってくれない可能性もあるのだ。
「さて、一体どうしたら身分の高い人に会う事が出来るのかね」
「んー、そうね。もう、国王から報酬は頂いちゃったしね。今から会える訳もない。どうしようかしら」
エイミーと二人で唸る。ただ、良い案は浮かばない。そうそう、良い案なんて思いつかないよな。
その時、大広間で騎士が大声で叫んだ。
「皆の者! これから、三十分後に陛下から重大なお言葉がある! 三十分後に大広間に集まるのだ!」
嫌な予感がした。というか、嫌な予感しかしない。
エイミーはどうする? と、こちらに目を向けてくる。
「とりあえず、三十分後に大広間で話を聴いて見ようか」
「それもそうね」
「了承」
これと言って、良い案もないし嫌な予感はするが、話だけでも聴いておこう。聴くだけは聴く。それから、俺達がどうするか決めればいい。
三十分後。大広間に、こんなにいたのか? と思うほどの人数が集まっていた。
恐らく、この前の三倍。三千人くらいが集まっていた。
そこに、外壁の上に国王がゆっくりと現れた。
「皆の者! 集まってくれて感謝する! 斥候の情報より、魔王軍の軍勢が移動しているのを捕捉した。その数は四千程だ! 今から、三日後にここに到着する予定だ。皆の者。ここが正念場だ!
ここで、魔王軍に大打撃を与えて勝利をこの手に掴もうぞ!」
国王の一言にぽつぽつと歓声が上がり、次第にその声は大きくなって、全員が雄たけびを上げた。
やっぱり、良い情報じゃなかった。魔王軍がまた攻めてくるのか。しかも、前回の1.5倍かそれ以上の数。相手は本気だ。
だが、これは――。
「もしかしたら、チャンスじゃないか?」
ぽつりと呟いた。
「え? なんて言ったの!?」
兵士の大歓声にエイミーが聴き取れないと、再度尋ねてくる。
「ここで、手柄を立てたら国王陛下に謁見出来るかもしれない!」
「そうか! それなら、情報が手に入るかもしれないわね!」
行く先が不透明だったが、一筋の光明が見えた。
そうさ。ここで、もう一度手柄を立てたら、謁見出来るかもしれない。
そして、聴くんだ。聖剣エクスグラスについて。
「なんとか、希望が見えてきたな!」
「そうね! 頑張りましょう!」
三日後だ。三日後に戦争が始まる。そこで、相手の大将を討ち取れば、また謁見出来るかもしれない。道は見えた。さぁ、頑張ろうじゃないか!
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