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~黄金の国ジパングは人食い民族⁈~
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黄金の国ジパング。
イタリアのマルコポーロが書いた東方見聞録に記載されている国の名前である。日本の事を書き表しているのだという説もあるその国は、中国大陸から1500マイル東に位置する場所にある島国で、その国は金の産出国。宮殿はすべて金で出来ていると書かれている。日本では捕虜にした人間を食べるとい習慣があるという記載があり、マルコポーロ自身は話を聞いただけで実際に日本を訪れた訳ではないので、その信憑性に関しては甚だ疑わしいものだったが、当時の中世や近世ヨーロッパの人たちにとって地球の果の東方の地にある蛮族が住む宝の山の国という認識だったのだろう。
大航海時代、西回り航路でインドを目指したコロンブスはアメリカ大陸に辿り着き、原住民族をインド人だと誤解した事から彼らのことをインディアンと呼んだのは有名な話である。また南米大陸の方にはインカやマヤなどの黄金を多用する文明が発展してきたこともあり、ヨーロッパ以外の未開の地には伝説の地黄金郷(エルドラド)があると信じられていた。
大航海時代の未開の地の冒険は、キリスト教の普及が目的だと言われているが、実際のところは力が強いものが正義の原則という考え方から来る、黄金の支配と略奪を目的とした虐殺の歴史でもある。
幸い当時の日本では金の略奪目的のヨーロッパ勢力の軍隊が来る事は無かったが、中国大陸からの脅威にさらされる事は度々あり、元寇の際には彼らに捕まえられた人々は手に穴を開けられそこに縄を通して繋がれ連れ去られたという。連れ去られた日本人達は吊るされて干し肉にされ彼らに食べられていた。また肉饅頭も三国志時代、捕虜の人の頭を食べていたものがルーツである事を知る者は少ないが、それらを鑑みると中国大陸の方では食人の習慣が古くからあったのは間違いない様である。その東方の大陸食人文化がそのまま日本の食文化として勘違いされた可能性が考えられた。
「今日のおすすめはさんまのお刺身よ」
まだまだ残暑厳しい夏の夕暮れ時、仕事を終えていつものように立ち寄った小料理屋の女将は冷たいお手拭きを渡しながらにっこりと笑った。
「もうそんな季節ですか…早いですね」
「お魚屋さんに初物として入荷していたから…まだ脂はそんなに乗っていなかったけれど」
「初物を食べると寿命が延びるって言うし、それ頂きます」
注文を聞いた女将は早速さんまをさばき始める。その女将の頬や鼻の頭が日に焼けたのかいつもより赤い。
「女将…日焼けしました?」
「あ、わかる? ちょっと今日は田んぼの雑草引きに行っていたから」
「田んぼ?」
女将は近郊の米農家に依頼して稲を育ててもらっているので、たまにお世話の手伝いに行っているらしかった。
「毎日のお世話は無理だけど、田植えや稲刈り体験もできるし楽しいわよ」
「へぇ、プチ稲作体験が出来るんですね」
「小さな子供さんがいるご家庭の参加者も多いみたい」
子供の体験教育にも良さそうな企画である。
「お米の収穫が楽しみですね」
そう言うと女将は「美味しい新米も楽しみだけど、黄金色に染まる季節って風景も素敵なのよね」と言って微笑んだ。
確かに女将が言うように、収穫時期の田んぼは輝いている様に見えてとても美しい。
「田植えの頃の若草色から夏の濃い緑色、そして黄金色の田園風景…それぞれの美しさがあって私はすごく好き」
どうやら田園風景を見ていると農耕民族の血が騒ぐらしい。
「棚田の風景とか美しいですよね…農家の高齢化で維持管理が大変らしいと聞きますが」
ポスターなどで見かける日本の原風景は美しいが、山の斜面の狭い場所を切り開いた場所なので、機械などが入らないので手入れが大変だという話はよく耳にする。
「そのうちに棚田の風景も見られなくなるかもね…黄金の国ジパングじゃなくなっちゃうかも」
女将のため息に似た呟きに私は首を傾げる。
「あれって奥州平泉の中尊寺金色堂が元だって話を聞きましたが…」
私の言葉に女将は頷いたところをみると、女将もその説は知っているようだった。
「昔の日本の権力者が中国の皇帝への贈り物として大量の砂金を贈って皇帝を驚かせたって話もあるわよ」
弥生時代の馬具など金メッキの細工物が使われていたものが発掘されているし、日本書紀にも金に関する記述があるので、古い時代から日本でも金が採掘されていたのは間違いがないようである。
「…ただね、貴金属の金が街中の装飾に使われていた訳ではないし、一部の建物なんかを表現するのに黄金の国と称するにしては過大表現過ぎるんじゃないかと思うのよ」
言われてみればそうである。黄金の国と聞いてまずイメージするのは国中が光り輝いているような様子である。
「…奥州の中尊寺金色堂や京都の金閣、おまけして秀吉の黄金の茶室を加えるとしても、国と表現するにはいささかオーバーではありますね」
「稲刈りシーズンになるといつも思うのだけど、黄金の国っていう表現は、日本の秋の田園風景を言い表したんじゃないかって気がするの」
「あ…なるほど」
本州以南は弥生時代から稲作が盛んに行われていたという事は、日本の歴史の授業で最初に習う事である。集落の周り土地の多くは日本人が農耕民族だった事から考えても稲を植え付けた土地だった可能性が高い。確かに実りの秋の季節、見渡す限り黄金色に輝いている風景が広がっている様に見えるのは想像が出来た。
あくまで自分の想像だけど…と、女将は笑う。
「黄金の自然の恵みが満ちる国…金は食べられないけれど、お米は命を養ってくれる神様からの贈り物」
貴金属よりも食べ物の方が大切であるという価値観の持ち主の女将らしい発想である。
「命の維持に全く必要のない金を奪い合って殺し合うなんて愚の骨頂だわ」
いささか辛辣ではあるが、生き物としては真っ当な意見でもある。
「日本の今の食料自給率ってどのくらいか知ってる?」
「50%ぐらいですか?」
そんなに日本の食料自給率は高くないという話を聞いた事があるので、半分ぐらいを見積もって答えたが、女将は残念そうに首を横に振る。
「全体で38%で、米や小麦などの穀物だけだと28%」
「そんな低いんですか…」
想像以上に低い数値なのに驚く。
「資源の無い国が取る事が出来るのはみんなと仲良くする事。外国の超大国の様なガキ大将のふるまいをすれば破滅するだけ」
「でも迷惑な奴をそれでは抑えられませんよね」
他人の迷惑を顧みず好き勝手している連中が非常に不愉快に思っていたのでそう言うと、女将は自分の頭を指でコツコツ叩く。
「日本は大和の国…和を以て貴しとなすのが基本」
それは確か聖徳太子の言葉だったか…。
「和を以ってとは言っても何でも許すのではなく、ルール違反をする国にきちんとNOと言う事が大事。軍事力に頼る前にまずはっきりした意思表示をする事ね。そして仲間を増やして平和的ルールを守らない国には経済や技術協力をストップする――外交と言えばお金をばら撒くだけだと勘違いしている政治家が多すぎてどうしようもないのが現状ではあるのだけれど」
「その政治家を選んでるのは我々だからなぁ…」
「有名人だからとか、世襲議員で親の時から便宜を図ってもらっているからとか、無責任で自分の利益しか考えない事から、日本の政治がおかしな方向に突き進んでいる事に気が付かなくちゃ」
選挙で特定の候補を投票するようにとお願いされる事はよくあるが、本来政治家を選ぶうえで必要なのは誰かに頼まれたからではなく、この人ならこの国の為に働いてくれると信じる事ができる人物かどうかである。
日ごろから口先だけで耳障りが良い事を言っていても、行動が全く伴っていない人間などごまんといる。昔は身近な者しかわからない事だったが、インターネットが普及した今では様々な事を知る事が出来るので――肯定的否定的な数多くの情報を集め真偽を吟味する必要性はあるものの――普段の言動が一致しない妙な人物を政治家として選ばないようにする事はできるのだから、有権者の意識改革が大切だと言えた。
娯楽に時間を費やす時間はあるのに、難しい事はわからないと勉強する時間を取る事もせず、わからないから選挙には行かない。行っても何も変わらないと言っていること自体が怠慢だし無責任な人間である事を自白しているのである。それを恥ずかしいと思わない人間が増えたのも日本人の質の低下につながっているのだろう。
「私利私欲しか考えられない人間を政治参加させちゃいけないの」
政治家しかり官僚しかり、そして選挙民しかり。
選挙制度が出来た時代、海外、日本を問わず政治家を選ぶ権利は、地域の名士と言われる者にしか与えられていなかった。頭が良く一定の収入があり、地域の人たちなどの世話が出来る能力のある者——いわゆるエリート層である。その理由は経済的に困って居らす、人の為に物事を考え世話をしているので、私利私欲ではなく大衆の為の判断が下せるという理由からであった。
それが差別を無くせという平等の名の元、私利私欲や考えの浅い者、大衆の利益を考える事が出来ないものが投票権を持つようになり、投票者の利害に一致するものが選出されるようになり政治の質が低下していった。
「区別と差別の違いも分からない人間に国の為に働く事が出来る人間を選ぶ事は出来ないわ」
なかなかもって手厳しい意見である。
「今の世の中、日本国民の利益の為に働ける人間がどれだけいる? 口では大和魂と言いながら力が正義という外国魂に変わり果てた者ばかり。大和魂っていうのは自分だけではなく周りの者の幸せの為に働く事が出来る者の事でもあるのよ。自分も幸せに周りも幸せなのが大和の心」
大和魂や大和撫子という言葉はよく耳にしてはいたが、深い意味など考えた事はなかった。
「日本の軍備を増強して迷惑な隣国に制裁を与えるべきだなんて勇ましい意見もあるけど、日本は小さい国で資源が乏しいから、食料だけではなく、石油をはじめあらゆるものを輸入に頼っているのを忘れて紛争状態になれば輸入はすべてストップして、あっという間にみんな餓死ね」
第二次世界大戦の時の日本の食糧不足も深刻であったが、当時より人口も多いし家電化が進んでいるので停電による影響も計り知れない事は簡単に想像が出来た。
「外国魂の政治家がこのまま力が正義を推し進めれば、戦争へまっしぐら。餓死する前に国民同士で共食いなんていう地獄絵図が繰り広げられるなんてまっぴらごめんだわ」
おそらく私もそんな状況にならば共食い…人食は出来ないので餓死を選ぶだろう。
——そうならない為にどうするのか?
世界情勢が不安定な今、皆が真剣に考えなければいけない時期に来ているのかもしれない。
イタリアのマルコポーロが書いた東方見聞録に記載されている国の名前である。日本の事を書き表しているのだという説もあるその国は、中国大陸から1500マイル東に位置する場所にある島国で、その国は金の産出国。宮殿はすべて金で出来ていると書かれている。日本では捕虜にした人間を食べるとい習慣があるという記載があり、マルコポーロ自身は話を聞いただけで実際に日本を訪れた訳ではないので、その信憑性に関しては甚だ疑わしいものだったが、当時の中世や近世ヨーロッパの人たちにとって地球の果の東方の地にある蛮族が住む宝の山の国という認識だったのだろう。
大航海時代、西回り航路でインドを目指したコロンブスはアメリカ大陸に辿り着き、原住民族をインド人だと誤解した事から彼らのことをインディアンと呼んだのは有名な話である。また南米大陸の方にはインカやマヤなどの黄金を多用する文明が発展してきたこともあり、ヨーロッパ以外の未開の地には伝説の地黄金郷(エルドラド)があると信じられていた。
大航海時代の未開の地の冒険は、キリスト教の普及が目的だと言われているが、実際のところは力が強いものが正義の原則という考え方から来る、黄金の支配と略奪を目的とした虐殺の歴史でもある。
幸い当時の日本では金の略奪目的のヨーロッパ勢力の軍隊が来る事は無かったが、中国大陸からの脅威にさらされる事は度々あり、元寇の際には彼らに捕まえられた人々は手に穴を開けられそこに縄を通して繋がれ連れ去られたという。連れ去られた日本人達は吊るされて干し肉にされ彼らに食べられていた。また肉饅頭も三国志時代、捕虜の人の頭を食べていたものがルーツである事を知る者は少ないが、それらを鑑みると中国大陸の方では食人の習慣が古くからあったのは間違いない様である。その東方の大陸食人文化がそのまま日本の食文化として勘違いされた可能性が考えられた。
「今日のおすすめはさんまのお刺身よ」
まだまだ残暑厳しい夏の夕暮れ時、仕事を終えていつものように立ち寄った小料理屋の女将は冷たいお手拭きを渡しながらにっこりと笑った。
「もうそんな季節ですか…早いですね」
「お魚屋さんに初物として入荷していたから…まだ脂はそんなに乗っていなかったけれど」
「初物を食べると寿命が延びるって言うし、それ頂きます」
注文を聞いた女将は早速さんまをさばき始める。その女将の頬や鼻の頭が日に焼けたのかいつもより赤い。
「女将…日焼けしました?」
「あ、わかる? ちょっと今日は田んぼの雑草引きに行っていたから」
「田んぼ?」
女将は近郊の米農家に依頼して稲を育ててもらっているので、たまにお世話の手伝いに行っているらしかった。
「毎日のお世話は無理だけど、田植えや稲刈り体験もできるし楽しいわよ」
「へぇ、プチ稲作体験が出来るんですね」
「小さな子供さんがいるご家庭の参加者も多いみたい」
子供の体験教育にも良さそうな企画である。
「お米の収穫が楽しみですね」
そう言うと女将は「美味しい新米も楽しみだけど、黄金色に染まる季節って風景も素敵なのよね」と言って微笑んだ。
確かに女将が言うように、収穫時期の田んぼは輝いている様に見えてとても美しい。
「田植えの頃の若草色から夏の濃い緑色、そして黄金色の田園風景…それぞれの美しさがあって私はすごく好き」
どうやら田園風景を見ていると農耕民族の血が騒ぐらしい。
「棚田の風景とか美しいですよね…農家の高齢化で維持管理が大変らしいと聞きますが」
ポスターなどで見かける日本の原風景は美しいが、山の斜面の狭い場所を切り開いた場所なので、機械などが入らないので手入れが大変だという話はよく耳にする。
「そのうちに棚田の風景も見られなくなるかもね…黄金の国ジパングじゃなくなっちゃうかも」
女将のため息に似た呟きに私は首を傾げる。
「あれって奥州平泉の中尊寺金色堂が元だって話を聞きましたが…」
私の言葉に女将は頷いたところをみると、女将もその説は知っているようだった。
「昔の日本の権力者が中国の皇帝への贈り物として大量の砂金を贈って皇帝を驚かせたって話もあるわよ」
弥生時代の馬具など金メッキの細工物が使われていたものが発掘されているし、日本書紀にも金に関する記述があるので、古い時代から日本でも金が採掘されていたのは間違いがないようである。
「…ただね、貴金属の金が街中の装飾に使われていた訳ではないし、一部の建物なんかを表現するのに黄金の国と称するにしては過大表現過ぎるんじゃないかと思うのよ」
言われてみればそうである。黄金の国と聞いてまずイメージするのは国中が光り輝いているような様子である。
「…奥州の中尊寺金色堂や京都の金閣、おまけして秀吉の黄金の茶室を加えるとしても、国と表現するにはいささかオーバーではありますね」
「稲刈りシーズンになるといつも思うのだけど、黄金の国っていう表現は、日本の秋の田園風景を言い表したんじゃないかって気がするの」
「あ…なるほど」
本州以南は弥生時代から稲作が盛んに行われていたという事は、日本の歴史の授業で最初に習う事である。集落の周り土地の多くは日本人が農耕民族だった事から考えても稲を植え付けた土地だった可能性が高い。確かに実りの秋の季節、見渡す限り黄金色に輝いている風景が広がっている様に見えるのは想像が出来た。
あくまで自分の想像だけど…と、女将は笑う。
「黄金の自然の恵みが満ちる国…金は食べられないけれど、お米は命を養ってくれる神様からの贈り物」
貴金属よりも食べ物の方が大切であるという価値観の持ち主の女将らしい発想である。
「命の維持に全く必要のない金を奪い合って殺し合うなんて愚の骨頂だわ」
いささか辛辣ではあるが、生き物としては真っ当な意見でもある。
「日本の今の食料自給率ってどのくらいか知ってる?」
「50%ぐらいですか?」
そんなに日本の食料自給率は高くないという話を聞いた事があるので、半分ぐらいを見積もって答えたが、女将は残念そうに首を横に振る。
「全体で38%で、米や小麦などの穀物だけだと28%」
「そんな低いんですか…」
想像以上に低い数値なのに驚く。
「資源の無い国が取る事が出来るのはみんなと仲良くする事。外国の超大国の様なガキ大将のふるまいをすれば破滅するだけ」
「でも迷惑な奴をそれでは抑えられませんよね」
他人の迷惑を顧みず好き勝手している連中が非常に不愉快に思っていたのでそう言うと、女将は自分の頭を指でコツコツ叩く。
「日本は大和の国…和を以て貴しとなすのが基本」
それは確か聖徳太子の言葉だったか…。
「和を以ってとは言っても何でも許すのではなく、ルール違反をする国にきちんとNOと言う事が大事。軍事力に頼る前にまずはっきりした意思表示をする事ね。そして仲間を増やして平和的ルールを守らない国には経済や技術協力をストップする――外交と言えばお金をばら撒くだけだと勘違いしている政治家が多すぎてどうしようもないのが現状ではあるのだけれど」
「その政治家を選んでるのは我々だからなぁ…」
「有名人だからとか、世襲議員で親の時から便宜を図ってもらっているからとか、無責任で自分の利益しか考えない事から、日本の政治がおかしな方向に突き進んでいる事に気が付かなくちゃ」
選挙で特定の候補を投票するようにとお願いされる事はよくあるが、本来政治家を選ぶうえで必要なのは誰かに頼まれたからではなく、この人ならこの国の為に働いてくれると信じる事ができる人物かどうかである。
日ごろから口先だけで耳障りが良い事を言っていても、行動が全く伴っていない人間などごまんといる。昔は身近な者しかわからない事だったが、インターネットが普及した今では様々な事を知る事が出来るので――肯定的否定的な数多くの情報を集め真偽を吟味する必要性はあるものの――普段の言動が一致しない妙な人物を政治家として選ばないようにする事はできるのだから、有権者の意識改革が大切だと言えた。
娯楽に時間を費やす時間はあるのに、難しい事はわからないと勉強する時間を取る事もせず、わからないから選挙には行かない。行っても何も変わらないと言っていること自体が怠慢だし無責任な人間である事を自白しているのである。それを恥ずかしいと思わない人間が増えたのも日本人の質の低下につながっているのだろう。
「私利私欲しか考えられない人間を政治参加させちゃいけないの」
政治家しかり官僚しかり、そして選挙民しかり。
選挙制度が出来た時代、海外、日本を問わず政治家を選ぶ権利は、地域の名士と言われる者にしか与えられていなかった。頭が良く一定の収入があり、地域の人たちなどの世話が出来る能力のある者——いわゆるエリート層である。その理由は経済的に困って居らす、人の為に物事を考え世話をしているので、私利私欲ではなく大衆の為の判断が下せるという理由からであった。
それが差別を無くせという平等の名の元、私利私欲や考えの浅い者、大衆の利益を考える事が出来ないものが投票権を持つようになり、投票者の利害に一致するものが選出されるようになり政治の質が低下していった。
「区別と差別の違いも分からない人間に国の為に働く事が出来る人間を選ぶ事は出来ないわ」
なかなかもって手厳しい意見である。
「今の世の中、日本国民の利益の為に働ける人間がどれだけいる? 口では大和魂と言いながら力が正義という外国魂に変わり果てた者ばかり。大和魂っていうのは自分だけではなく周りの者の幸せの為に働く事が出来る者の事でもあるのよ。自分も幸せに周りも幸せなのが大和の心」
大和魂や大和撫子という言葉はよく耳にしてはいたが、深い意味など考えた事はなかった。
「日本の軍備を増強して迷惑な隣国に制裁を与えるべきだなんて勇ましい意見もあるけど、日本は小さい国で資源が乏しいから、食料だけではなく、石油をはじめあらゆるものを輸入に頼っているのを忘れて紛争状態になれば輸入はすべてストップして、あっという間にみんな餓死ね」
第二次世界大戦の時の日本の食糧不足も深刻であったが、当時より人口も多いし家電化が進んでいるので停電による影響も計り知れない事は簡単に想像が出来た。
「外国魂の政治家がこのまま力が正義を推し進めれば、戦争へまっしぐら。餓死する前に国民同士で共食いなんていう地獄絵図が繰り広げられるなんてまっぴらごめんだわ」
おそらく私もそんな状況にならば共食い…人食は出来ないので餓死を選ぶだろう。
——そうならない為にどうするのか?
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