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【ボーダー】奪還戦
港町と鮭サブレ
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イヴィンギルという港町に着いた一行は此処で一泊し、それから船で国境を越えることにした。
「あー、やっとついた。予定より2時間遅れだな」
アランが笑いながら言った。
「そうだね。とりあえず宿をとろうか。日も落ちてきたし」
リオは端末をとり、宿について調べている。
ニックスは街灯がだんだんとついていくのを見ていた。
この世界で最も使われるエネルギーは魔力だ。街の灯りも、端末のバッテリーも魔力によって灯っている。
数十年前まで使われていた電気というエネルギーより容易に確保でき、長期保存が可能なのだ。主な確保手段としては炭鉱に山のようにある「幻妖鉱」という鉱物を精錬することだ。精錬された鉱石は高級な武器などによく使われる「魔鋼」とエネルギーとしての「魔力」が得られる。
この辺りは起伏が激しくすぐ側に大きな炭鉱があるため、港町であると同時に炭鉱の町でもあるのだ。
ニックスの視界の端に「イヴィンギル銘菓 鮭サブレ」の看板が入った。初めてこの町へ来たニックスは目を輝かせた。それはまだ出会って間もない三人が分かるほどに。
「ニックス。あれ、気になるの?」
ユリの問いにニックスは少し戸惑ったようにし、しばらくして諦めたように言った。
「あぁ。……ちょっと買ってきていいか?」
「いいよ。待ってるから」
リオはニコニコしながらそれを許した。
「んじゃ俺は酒でも買ってくる」
歩いて行くニックスをしばらく見た後にアランが言った。
「私は宿に行くから。ユリはニックスについててもらえる?」
「えぇ。わかった」
そう言うとユリはニックスのあとを着いて行った。
鮭サブレを買ったニックスとユリは近くのベンチに座っていた。彼は今までのどの時よりもいい笑顔をしている。
「ん、うまいなーこれ」
ビスケットとはまた違ったサブレ特有の食感とほんのりとしたバターと鮭の風味が合わさってとてもおいしい。
「そうね。分けてくれてありがと」
「ふいへはははひひふんは」
彼は鮭サブレをかじりながら言った。
「何言ってるかわかんないから。……お昼はありがとね」
彼はごくん、とサブレを飲み込む。
「何が?」
「列車での事よ。あなたがいなかったらあそこで全滅してたかも・・・いや、おそらくそうなってた。だからありがとう。それと謝るわ。あなたを信用しなかったこと」
「あー、信用のとこは仕方ないさ。助けたのもついでだし」
彼女は声が出せなかった。そう呟いた彼の目はとてつもなく冷たかったから。
「……そう怖い顔すんなよ。この仕事が終わるまでは三人とも仲間だ。殺させやしないさ」
彼は優しく微笑むとまたサブレをかじり始めた。
「なぁ、ユリ。お前キョウって知ってるか?」
「知ってるも何も、私はそこの出身だけど……どうかしたの?」
「やっぱりか。俺の友達にもキョウ出身のやつがいてさ。なんとなく雰囲気似てたからそう思った」
「へー。なんて人?」
「えーと……ちょっと色々あって言えないや。ごめん」
ニックスは頬を掻きながら謝る。
「ふーん。ならまた今度教えて」
「ん、了解。なんか行きたいとこある?あるなら──────」
「よっ」
一人の少年が話しかけてきた。彼と同じくらいの歳だろうか。赤い髪をした少年は飲み物片手に歩いていたようだ。
「ユキじゃん。久しぶり」
「ヒノ!?お前この町にいたのか!?」
ニックスはとても驚いていた。それを見たヒノはけらけらと笑っている。
「えーと……この人は誰?」
ユリが少し申し訳なさそうに聞いてきた。
「あー、俺の友達の一人だよ。名前はヒノ」
「うん。僕はヒノ。よろしくね。君は見るに騎士団の人間みたいだね」
「あ、どうも。私はユリ・ムツキです」
彼女は少し遠慮したように言った。
「ユキが世話になってるみたいだね。迷惑かけてない?」
「ガキかよ、俺は」
ヒノはまたけらけらと笑っている。
「あ、それと……ユキって?」
「ん、あー、あだ名というか、愛称というかって感じ?」
「ニックスって名前が古い言葉が元で、雪って意味があるからね。それで僕らはそう呼んでるんだよ」
「そうだっけ」
「忘れんなよ」
「ふふっ。仲良しなんですね、お二人は」
ユリは口元を抑えて笑っている。
「まーなー。俺ら結構長い付き合いだし」
「そうだね。というかユリちゃんとお前二人だけ?」
「んや?他二人いてそいつらはまた別行動だな」
「あ、ニックス。もうリオからメール入ったから、そろそろ宿に行かない?」
「なるほどな。ヒノ、お前はこの後どうするんだ?」
「んー、宿とってないしなー。ねえユリちゃん、それ一人一人個室とってる?」
「え、えぇ。そのはずだけど」
「んならユキの部屋に泊めてよ」
「えー……いいけど」
「いいのね」
ユリははあ、とため息をつくと一人増える旨をリオに伝えた。
宿の前に着いた。リオとアランはそこで少し待っていたようだ。
「その人がニックスの友達?」
「僕はヒノ。よろしくね」
「怪しい奴連れてくるなよ……」
アランは頭を抱えている。
「悪かったよ。今日だけ頼む」
「……隊長が許したんだ。もうなんも言わねーよ」
「もちろん対価は払うよ。向こうの情報、欲しいだろ?」
ヒノはニヤッとして言った。
「あー、ヒノは諜報がすごく上手くてな。なんかめぼしいのあるか?」
「ぼちぼちだ。まあ聞いて損はないでしょ」
「おい、俺らの情報を向こうに回したりしないだろうな?」
アランが睨みながら言う。
「まさか。僕が協力するのは仲間と、その仲間に対してだけだよ。信用してよ、アラン・フー」
「俺らの名前も把握してるってか」
「ま、続きは中で話そうか」
一行とヒノは宿の中にある酒場へと入っていった。
「あー、やっとついた。予定より2時間遅れだな」
アランが笑いながら言った。
「そうだね。とりあえず宿をとろうか。日も落ちてきたし」
リオは端末をとり、宿について調べている。
ニックスは街灯がだんだんとついていくのを見ていた。
この世界で最も使われるエネルギーは魔力だ。街の灯りも、端末のバッテリーも魔力によって灯っている。
数十年前まで使われていた電気というエネルギーより容易に確保でき、長期保存が可能なのだ。主な確保手段としては炭鉱に山のようにある「幻妖鉱」という鉱物を精錬することだ。精錬された鉱石は高級な武器などによく使われる「魔鋼」とエネルギーとしての「魔力」が得られる。
この辺りは起伏が激しくすぐ側に大きな炭鉱があるため、港町であると同時に炭鉱の町でもあるのだ。
ニックスの視界の端に「イヴィンギル銘菓 鮭サブレ」の看板が入った。初めてこの町へ来たニックスは目を輝かせた。それはまだ出会って間もない三人が分かるほどに。
「ニックス。あれ、気になるの?」
ユリの問いにニックスは少し戸惑ったようにし、しばらくして諦めたように言った。
「あぁ。……ちょっと買ってきていいか?」
「いいよ。待ってるから」
リオはニコニコしながらそれを許した。
「んじゃ俺は酒でも買ってくる」
歩いて行くニックスをしばらく見た後にアランが言った。
「私は宿に行くから。ユリはニックスについててもらえる?」
「えぇ。わかった」
そう言うとユリはニックスのあとを着いて行った。
鮭サブレを買ったニックスとユリは近くのベンチに座っていた。彼は今までのどの時よりもいい笑顔をしている。
「ん、うまいなーこれ」
ビスケットとはまた違ったサブレ特有の食感とほんのりとしたバターと鮭の風味が合わさってとてもおいしい。
「そうね。分けてくれてありがと」
「ふいへはははひひふんは」
彼は鮭サブレをかじりながら言った。
「何言ってるかわかんないから。……お昼はありがとね」
彼はごくん、とサブレを飲み込む。
「何が?」
「列車での事よ。あなたがいなかったらあそこで全滅してたかも・・・いや、おそらくそうなってた。だからありがとう。それと謝るわ。あなたを信用しなかったこと」
「あー、信用のとこは仕方ないさ。助けたのもついでだし」
彼女は声が出せなかった。そう呟いた彼の目はとてつもなく冷たかったから。
「……そう怖い顔すんなよ。この仕事が終わるまでは三人とも仲間だ。殺させやしないさ」
彼は優しく微笑むとまたサブレをかじり始めた。
「なぁ、ユリ。お前キョウって知ってるか?」
「知ってるも何も、私はそこの出身だけど……どうかしたの?」
「やっぱりか。俺の友達にもキョウ出身のやつがいてさ。なんとなく雰囲気似てたからそう思った」
「へー。なんて人?」
「えーと……ちょっと色々あって言えないや。ごめん」
ニックスは頬を掻きながら謝る。
「ふーん。ならまた今度教えて」
「ん、了解。なんか行きたいとこある?あるなら──────」
「よっ」
一人の少年が話しかけてきた。彼と同じくらいの歳だろうか。赤い髪をした少年は飲み物片手に歩いていたようだ。
「ユキじゃん。久しぶり」
「ヒノ!?お前この町にいたのか!?」
ニックスはとても驚いていた。それを見たヒノはけらけらと笑っている。
「えーと……この人は誰?」
ユリが少し申し訳なさそうに聞いてきた。
「あー、俺の友達の一人だよ。名前はヒノ」
「うん。僕はヒノ。よろしくね。君は見るに騎士団の人間みたいだね」
「あ、どうも。私はユリ・ムツキです」
彼女は少し遠慮したように言った。
「ユキが世話になってるみたいだね。迷惑かけてない?」
「ガキかよ、俺は」
ヒノはまたけらけらと笑っている。
「あ、それと……ユキって?」
「ん、あー、あだ名というか、愛称というかって感じ?」
「ニックスって名前が古い言葉が元で、雪って意味があるからね。それで僕らはそう呼んでるんだよ」
「そうだっけ」
「忘れんなよ」
「ふふっ。仲良しなんですね、お二人は」
ユリは口元を抑えて笑っている。
「まーなー。俺ら結構長い付き合いだし」
「そうだね。というかユリちゃんとお前二人だけ?」
「んや?他二人いてそいつらはまた別行動だな」
「あ、ニックス。もうリオからメール入ったから、そろそろ宿に行かない?」
「なるほどな。ヒノ、お前はこの後どうするんだ?」
「んー、宿とってないしなー。ねえユリちゃん、それ一人一人個室とってる?」
「え、えぇ。そのはずだけど」
「んならユキの部屋に泊めてよ」
「えー……いいけど」
「いいのね」
ユリははあ、とため息をつくと一人増える旨をリオに伝えた。
宿の前に着いた。リオとアランはそこで少し待っていたようだ。
「その人がニックスの友達?」
「僕はヒノ。よろしくね」
「怪しい奴連れてくるなよ……」
アランは頭を抱えている。
「悪かったよ。今日だけ頼む」
「……隊長が許したんだ。もうなんも言わねーよ」
「もちろん対価は払うよ。向こうの情報、欲しいだろ?」
ヒノはニヤッとして言った。
「あー、ヒノは諜報がすごく上手くてな。なんかめぼしいのあるか?」
「ぼちぼちだ。まあ聞いて損はないでしょ」
「おい、俺らの情報を向こうに回したりしないだろうな?」
アランが睨みながら言う。
「まさか。僕が協力するのは仲間と、その仲間に対してだけだよ。信用してよ、アラン・フー」
「俺らの名前も把握してるってか」
「ま、続きは中で話そうか」
一行とヒノは宿の中にある酒場へと入っていった。
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