22 / 66
▼3人で寝ようか
しおりを挟む
攻略本というのは、なかなかだ。なかなかに外れないし外させてくれないようだとしみじみと感じる。私は前世でRPGをやる時にも攻略本は見なかった口だから、強制力というものを本当には理解しきれていなかったのかもしれない。
先日の誕生日パーティーで、攻略本の通り私アリシア・ローランと、そこで私が作った紫陽花のアイシングクッキーを至福の表情で食べているエイベル・ディオンは婚約を発表した。
パーティーではもはや知らない人はいない情報であったので、衝撃もなく、和やかに祝福され、あれ?披露宴だったかな?という形で恙無く終了した。
あれから、親交を深めるため週一回程度どちらかの家で勉強や遊びをすることになっているが、いつも、お願いされる手作りのお菓子を延々パリパリと幸せそうに食べ続けるので、王子様が子豚になってしまうのでは?と心配になり食欲減退を目的に寒色系の見た目にしてみているが、あまり効果はなく怖々と見つめている。
婚約者と言っても私もエイベル様も6つの幼子。慣れるのが目的だ。2人きりという事はなく、だいたい一緒にアレクシスがいる。
3人ともやらなければならないならやるが、積極的に体を動かすタイプでもないので、大抵が、一緒にいても三者三葉好きな事を同じ空間でしているだけであるが。
「アリシアちゃん、なによんでるの?」
「んー、このせかいのしんりがかいてあるほん。」
「なんだいアリシア嬢。哲学書かい?見慣れない文字が書いてあるね…」
凄いな、と呟きながら攻略本を覗きこまれたが、全く慌てない。なぜなら、この世界の住人に攻略本の内容は読めないようになっているらしいのだ。
以前うっかりアレクシスの前で広げたままにしてしまったが、絵が載っているところまで全く問題なかった。ご都合主義ありがとうございます。というか、読める私が本当にこの世界にとって異物なんだなと少し悲しくなる。
「アリシア嬢は本当に優秀なんだなぁ!」
にっこにこと王子様スマイルを浮かべてオーラを放っているが、この場にそれが通じるものはいない。ざんねん!
本の通りに世界は回る。
だが、言い換えれば、本に書いてあるとおりに世界を回せば、ルートによっては私の断罪イベント回避も出来るのではないだろうか。
今の所そんなルートはみつからないけれど、例えば、これは全て主人公目線で描かれているから、アリシアが絡まないルートを進めるように画策、いやお手伝いをすれば。しなくとも、影に隠れて日向に出ない生活を送ればワンチャン!
静かに闘志を燃やしていた所、アレクシスが傍によって「アリシアちゃん」とだけ呼び上目遣いをしてきた。なにかある。
「どうした、アレクシス。何かあったか?」
「おひるねしよう。アリシアちゃん。」
「そうか、眠くなっちゃったんだねアレクシスは。」
「エイベルも帰るし。」
「まだ帰らないよ。それなら3人で寝ようか。」
…なぜだろう、会話が片思い過ぎる気がする。
「そろそろエイベルさまもおかえりになるじかんだから、そうしたらおひるねしましょう。」
「わかった!」
「僕も一緒に寝たかったけど、確かにそう言われれば時間だね。残念だけどまたの機会にお楽しみは取っておくよ。」
一方通行にめげることなく、エイベルは自己回復するとサッと使用人に馬車の用意をさせ挨拶も爽やかに帰って行った。
「アレクシス、おひるねするのではないの?」
「しないよ?」
帰った途端、ピッタリと張り付いて読めもしない攻略本を一緒に眺めている。攻略本に姉に虐げられているとか書かれていなくてよかった、と思いつつ、実際虐げられていたルシウスとはあそこで袂を分かったんだなと攻略本を捲りめくり確認する。
私からルシウスに出来ることは無いし、関わって主人公がルシウスルートでエンディングを迎えた時断罪されるのは御免なのでなにかする気は毛頭ない。
ルシウスルートはまだ6歳だが、アリシア目線としては片付いたものと思っていいだろう。立派な騎士となってこの世界を守って欲しいものである。
「アリシアちゃん、ぼくもこのほんよめるようになりたいからかしてくれる?」
「それはできないの。」
これは優しい世界を守る、ひいては家族であるアレクシスを守るものだから渡すことは出来ない。
「かわりに、このあいだよんだ、さいこうにおもしろいロマンスしょうせつをかしてあげましょう」
「ろまんすしょうせつ…」
先日の誕生日パーティーで、攻略本の通り私アリシア・ローランと、そこで私が作った紫陽花のアイシングクッキーを至福の表情で食べているエイベル・ディオンは婚約を発表した。
パーティーではもはや知らない人はいない情報であったので、衝撃もなく、和やかに祝福され、あれ?披露宴だったかな?という形で恙無く終了した。
あれから、親交を深めるため週一回程度どちらかの家で勉強や遊びをすることになっているが、いつも、お願いされる手作りのお菓子を延々パリパリと幸せそうに食べ続けるので、王子様が子豚になってしまうのでは?と心配になり食欲減退を目的に寒色系の見た目にしてみているが、あまり効果はなく怖々と見つめている。
婚約者と言っても私もエイベル様も6つの幼子。慣れるのが目的だ。2人きりという事はなく、だいたい一緒にアレクシスがいる。
3人ともやらなければならないならやるが、積極的に体を動かすタイプでもないので、大抵が、一緒にいても三者三葉好きな事を同じ空間でしているだけであるが。
「アリシアちゃん、なによんでるの?」
「んー、このせかいのしんりがかいてあるほん。」
「なんだいアリシア嬢。哲学書かい?見慣れない文字が書いてあるね…」
凄いな、と呟きながら攻略本を覗きこまれたが、全く慌てない。なぜなら、この世界の住人に攻略本の内容は読めないようになっているらしいのだ。
以前うっかりアレクシスの前で広げたままにしてしまったが、絵が載っているところまで全く問題なかった。ご都合主義ありがとうございます。というか、読める私が本当にこの世界にとって異物なんだなと少し悲しくなる。
「アリシア嬢は本当に優秀なんだなぁ!」
にっこにこと王子様スマイルを浮かべてオーラを放っているが、この場にそれが通じるものはいない。ざんねん!
本の通りに世界は回る。
だが、言い換えれば、本に書いてあるとおりに世界を回せば、ルートによっては私の断罪イベント回避も出来るのではないだろうか。
今の所そんなルートはみつからないけれど、例えば、これは全て主人公目線で描かれているから、アリシアが絡まないルートを進めるように画策、いやお手伝いをすれば。しなくとも、影に隠れて日向に出ない生活を送ればワンチャン!
静かに闘志を燃やしていた所、アレクシスが傍によって「アリシアちゃん」とだけ呼び上目遣いをしてきた。なにかある。
「どうした、アレクシス。何かあったか?」
「おひるねしよう。アリシアちゃん。」
「そうか、眠くなっちゃったんだねアレクシスは。」
「エイベルも帰るし。」
「まだ帰らないよ。それなら3人で寝ようか。」
…なぜだろう、会話が片思い過ぎる気がする。
「そろそろエイベルさまもおかえりになるじかんだから、そうしたらおひるねしましょう。」
「わかった!」
「僕も一緒に寝たかったけど、確かにそう言われれば時間だね。残念だけどまたの機会にお楽しみは取っておくよ。」
一方通行にめげることなく、エイベルは自己回復するとサッと使用人に馬車の用意をさせ挨拶も爽やかに帰って行った。
「アレクシス、おひるねするのではないの?」
「しないよ?」
帰った途端、ピッタリと張り付いて読めもしない攻略本を一緒に眺めている。攻略本に姉に虐げられているとか書かれていなくてよかった、と思いつつ、実際虐げられていたルシウスとはあそこで袂を分かったんだなと攻略本を捲りめくり確認する。
私からルシウスに出来ることは無いし、関わって主人公がルシウスルートでエンディングを迎えた時断罪されるのは御免なのでなにかする気は毛頭ない。
ルシウスルートはまだ6歳だが、アリシア目線としては片付いたものと思っていいだろう。立派な騎士となってこの世界を守って欲しいものである。
「アリシアちゃん、ぼくもこのほんよめるようになりたいからかしてくれる?」
「それはできないの。」
これは優しい世界を守る、ひいては家族であるアレクシスを守るものだから渡すことは出来ない。
「かわりに、このあいだよんだ、さいこうにおもしろいロマンスしょうせつをかしてあげましょう」
「ろまんすしょうせつ…」
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
旦那様に離縁をつきつけたら
cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。
仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。
突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。
我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。
※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。
※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる