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▼3人で寝ようか

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攻略本というのは、なかなかだ。なかなかに外れないし外させてくれないようだとしみじみと感じる。私は前世でRPGをやる時にも攻略本は見なかった口だから、強制力というものを本当には理解しきれていなかったのかもしれない。

先日の誕生日パーティーで、攻略本の通り私アリシア・ローランと、そこで私が作った紫陽花のアイシングクッキーを至福の表情で食べているエイベル・ディオンは婚約を発表した。

パーティーではもはや知らない人はいない情報であったので、衝撃もなく、和やかに祝福され、あれ?披露宴だったかな?という形で恙無く終了した。

あれから、親交を深めるため週一回程度どちらかの家で勉強や遊びをすることになっているが、いつも、お願いされる手作りのお菓子を延々パリパリと幸せそうに食べ続けるので、王子様が子豚になってしまうのでは?と心配になり食欲減退を目的に寒色系の見た目にしてみているが、あまり効果はなく怖々と見つめている。


婚約者と言っても私もエイベル様も6つの幼子。慣れるのが目的だ。2人きりという事はなく、だいたい一緒にアレクシスがいる。

3人ともやらなければならないならやるが、積極的に体を動かすタイプでもないので、大抵が、一緒にいても三者三葉好きな事を同じ空間でしているだけであるが。


「アリシアちゃん、なによんでるの?」

「んー、このせかいのしんりがかいてあるほん。」

「なんだいアリシア嬢。哲学書かい?見慣れない文字が書いてあるね…」


凄いな、と呟きながら攻略本を覗きこまれたが、全く慌てない。なぜなら、この世界の住人に攻略本の内容は読めないようになっているらしいのだ。

以前うっかりアレクシスの前で広げたままにしてしまったが、絵が載っているところまで全く問題なかった。ご都合主義ありがとうございます。というか、読める私が本当にこの世界にとって異物なんだなと少し悲しくなる。


「アリシア嬢は本当に優秀なんだなぁ!」


にっこにこと王子様スマイルを浮かべてオーラを放っているが、この場にそれが通じるものはいない。ざんねん!


本の通りに世界は回る。

だが、言い換えれば、本に書いてあるとおりに世界を回せば、ルートによっては私の断罪イベント回避も出来るのではないだろうか。

今の所そんなルートはみつからないけれど、例えば、これは全て主人公目線で描かれているから、アリシアが絡まないルートを進めるように画策、いやお手伝いをすれば。しなくとも、影に隠れて日向に出ない生活を送ればワンチャン!


静かに闘志を燃やしていた所、アレクシスが傍によって「アリシアちゃん」とだけ呼び上目遣いをしてきた。なにかある。


「どうした、アレクシス。何かあったか?」

「おひるねしよう。アリシアちゃん。」

「そうか、眠くなっちゃったんだねアレクシスは。」

「エイベルも帰るし。」

「まだ帰らないよ。それなら3人で寝ようか。」


…なぜだろう、会話が片思い過ぎる気がする。


「そろそろエイベルさまもおかえりになるじかんだから、そうしたらおひるねしましょう。」

「わかった!」

「僕も一緒に寝たかったけど、確かにそう言われれば時間だね。残念だけどまたの機会にお楽しみは取っておくよ。」


一方通行にめげることなく、エイベルは自己回復するとサッと使用人に馬車の用意をさせ挨拶も爽やかに帰って行った。


「アレクシス、おひるねするのではないの?」

「しないよ?」


帰った途端、ピッタリと張り付いて読めもしない攻略本を一緒に眺めている。攻略本に姉に虐げられているとか書かれていなくてよかった、と思いつつ、実際虐げられていたルシウスとはあそこで袂を分かったんだなと攻略本を捲りめくり確認する。

私からルシウスに出来ることは無いし、関わって主人公がルシウスルートでエンディングを迎えた時断罪されるのは御免なのでなにかする気は毛頭ない。

ルシウスルートはまだ6歳だが、アリシア目線としては片付いたものと思っていいだろう。立派な騎士となってこの世界を守って欲しいものである。


「アリシアちゃん、ぼくもこのほんよめるようになりたいからかしてくれる?」

「それはできないの。」


これは優しい世界を守る、ひいては家族であるアレクシスを守るものだから渡すことは出来ない。


「かわりに、このあいだよんだ、さいこうにおもしろいロマンスしょうせつをかしてあげましょう」

「ろまんすしょうせつ…」

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