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◆in the days before
第8話「どうにもならない無理難題」【挿絵】
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”リィルの印象ですか?
最初はあまり良くありませんでしたね。戦死した人たちを侮辱されて、いい気持ちはしませんでした。
今の私たちからしたら想像もできませんね”
早瀬沙織のインタビューより
Starring:早瀬沙織
「案内をさせて頂く菅野直大尉です。こちらは南部隼人中尉と早瀬沙織少尉。早瀬には皆さんの世話係を申し付けています」
菅野直の紹介に、早瀬沙織はぺこりと頭を下げる。
多分敬礼よりこちらのほうが良いだろうと考えてのことだ。
「どうぞお座りになってください。直立不動で話されても落ち着きません」
「はっ、では失礼させて頂きます」
菅野がリィルと話す間、師匠が素早く使者たちに視線を走らせる。訪問者たちを観察しているようだ。この辺りの連携はさすが師匠だと思う。
彼に倣って招かれざる客を見やる。
リィル・ガミノは小柄な少女。魔法の才能を持つ古代種の証として、銀髪と赤い瞳を持っている。
調べたところ年齢は14歳。物言いから腹芸が得意だとは思えない。
3人のメイドに視線を移す。
後ろの2人は緊張した面持ちだから、こういった交渉ごとに同席するのは慣れていないのかもしれない。
一方リィルの傍らに控えている金髪のメイドは、微笑のまま表情ひとつ変えていない。ただ静かにたたずんでいる。こちらが一番厄介そうだと、直感的に感じた。
「危険を冒してここに来られた理由を伺がっても宜しいでしょうか?」
菅野の言葉に、いささかむっとした様子で言った。
「先ほど申し上げたはずですが?」
そう言われてもあんな言葉を信じられるなら、戦争なんてやっていない。
聖女は強く訴えるように強調した。
「勿論、ダバート国王トリスタン陛下と会談し、戦争の即時停止をお願いするのです」
ああ、やっぱり本気で言ってるのですねと。沙織は固唾をのむ。
そんな要求が通らないことは彼女でも分かった。
「昨今の甲蟲の大量発生に異常気象、人間同士で争っている場合ではありません。このような無意味な戦争はすぐに終わらせて、人類は団結して原因究明に当たるべきです!」
3人の顔が苦笑に変わる。
士官である彼らは、それなりに政治も理解している。確かに甲蟲の出現は人類にとって懸案事項ではある。あの正体不明の怪物は、人を食らうからだ。
彼らをここへ誘った、先の怪奇現象も詳細な調査が必要だろう。
だが今回の戦争は、経済格差に宗教問題が絡んだ厄介なものだ。国王一人が止めると言えば止められるものではない。
トリスタン・ダバートⅢ世は穏健派だ。陛下にしてみても、止められるものならすぐに止めたいと言うのが本音ではなかろうか。
「そのような重大な案件は私では答えかねます。本土からしかるべき人間が送られてくると思いますので、そちらと交渉願います」
菅野らしくない、お役所的な回答だと思う。
だが実際そうとしか答えられないのだろう。
「では、あなたの所感を聞きましょう。戦争を止めるべきとは思いませんか?」
苛立ちを隠さず、リィルが視線を向けてくる。
菅野だって戦争は大嫌いなのは指揮下で戦っていれば分かる。だがここで、「英雄」が迂闊な発言をするわけにはいかない。
それを察したのか、師匠が割って入った。
「……答えても怒りません?」
こちらも軍人らしくない、と言うよりいい大人が口にするにはいささか情けない言い草だった。リィル嬢は僅かに眉を吊り上げ「ええ」と首肯した。
「止めるべきだと思いますが、無理だと考えます」
リィルの口角がぐっと下がる。
師匠は「やっぱり怒るじゃないか」と言いたげだが、それでも彼は嘘やごまかしを並べるつもりは無いだろう。
ちらりと師匠に目線で問われた見た菅野は、即座に頷いて見せる。彼は責任は取ってやるから好きにやれとばかり。
師匠の考えは分かる。相手が子供だからこそ、甘い蜜だけを差し出すわけにはいかない。それは優しさではない。
本気で和平を望む者ほど、「そんなことは分かっている」以上の感想を持たない。平和の尊さを説こうが前線の悲惨さを訴えようが。
国家元首の鶴の一声で戦争を止めることなど、少なくとも現代のライズでは不可能だ。
だから皆どうするべきかを必死になって考えているのだ。
だが、問題はそれを師匠がやる必要があるのかだった。
彼女への諫言は、2人が危ない橋を渡ることを意味しているのだ。
「無理、とはどういう意味でしょうか?」
問い返すリィルは大変怖い顔をしていた。だからと言って前言を翻すわけにもいかず。
「この戦争を支持しているのは、両陣営の国民です。彼らがもう戦争はこりごりだと痛感しない限り、停戦は難しいかと……」
「国民が戦いを望んでいると言うのですか!」
言葉を荒げるリィルに、師匠は無慈悲に答えた。
「残念ながら」
報道を見るに、彼の言う事は間違ってはいない。
今次大戦の根底には、経済問題がある。
現状で異世界貿易に強い利権を持つ条約国に、後発の連盟国が何とかそれに食い込もうと譲歩を迫る。要は、異世界貿易と言うパイの奪い合いである。
は地球列強と、その支援を受けたライズの大国。それらの思惑が絡み合った蟲毒のような戦場がこのラナダ共和国だ。
譲歩を迫っているだけならば良かったが、主張に宗教問題が絡みだし、武器をばらまく国が出始める。こうなっては双方引けない。冷たい争いは赤熱を始め、やがて弾けた。
この手の戦争は、お互いが譲歩より継戦の方が不利益と判断するまで止まらない。
あるいは片方が破滅するまで。
そんなことをやんわりと解説してゆく師匠に、彼女の表情はどんどん険しくなっていく。
「あなたはっ、軍人なのに『しょうがない』で済ませるんですか!? 今この瞬間にも、何百何千の命が失われているのですよ!?」
続けようとした言葉を飲み込む師匠から、菅野が話を引き継ぐ。
「お言葉はもっともです。私も国元に残してきた家族が戦禍の犠牲になると思うと、この身が張り裂ける思いです」
「ではっ!」
「我々も軍人として、一刻も早い戦争終結の為に戦っています。どうか猶予を」
「それではまだ人が死に続けると言う事ではありませんか! このままでは、また……」
菅野に怒りをぶつけるリィルに、何らかの覚悟を持ってやってきたのだと読み取った。どうやら危険を冒したのは道楽の類ではないらしい。
御付きは黙っているだけなのかと彼女を見やる。が、にっこりと笑い返された。なんだろうこの人は。
「あなたたち軍人は、戦争だけしていれば良いから、そんな事が言えるのです! 巻き込まれて死んでゆく子供たちは、何の罪もないのに家を焼きだされて凍え死んでいるのです!」
それをやっているのは、主に攻め手であるガミノ軍である。
連盟軍の兵士たちは概ねモラルの高い軍隊だ。ソ連からの義勇兵やニーズホッグ部隊など、悪名高い例外も存在するが。
ガミノ兵も例外に当てはまる。自分たちが報われないのはラナダや条約国が富を独占しているからと信じているし、そう教えられてもいるのだ。
そう言う人間は、他者に幾らでも残酷になれる。
「猛省いたします」
お役所的な師匠の言葉と共に、頭を下げる2人。
沙織も慌てて後に続く。
ここが限界だろう。
本音を言えば不機嫌になり、ごまかせば見透かされて不機嫌になる。
もし、彼女が興奮のあまり言ってはいけない言葉を口走らなれば、運命が動き出すこともなかっただろう。
「軍人なんて武器屋さんの言いなりになって戦いを始めて、後の事なんか何も考えていない! 命を犠牲にして民間人を救うと英雄。でも、彼らが戦争に反対すれば誰も死ななくて済んだんです! ”戦争で死んだ軍人はどんな偉業を果たそうと犬死に”です!」
菅野の事務的な笑顔が崩れた。いくら何でもあんまりな言い草だった。
戦歴の浅い自分ですら、何人もの戦友を見送ってきた。ましてや、激戦の中で生きてきた菅野や師匠は今の言葉をどう思うだろう。
今の言葉は命がけで戦う敵味方の将兵に対する明確な侮辱だ。
「おい、クソガ……」
青筋を立てた菅野がドスのきいた声で啖呵を切ろうとする。
まずい、このままだと決定的な発言をしてしまう!
突然ドン! と音がした。
驚いて傍らを見やると、拳を机に叩きつけている南部隼人が見えた。
「黙れ!」
驚愕よりも戸惑いを感じた。
沙織は師が激昂するところなど見たことがない。教えを乞う自分に声を荒げたこともほとんどない。
彼が怒りを露わにするのは、沙織が誰かを顧みない時だ。そしてその誰かには、沙織自身も含まれている。
(……師匠?)
後ろにひかえていたメイドが身を乗り出すが、リィルの傍らのメイドがそれを手で制す。
戸惑う沙織を一顧だにせず、師匠は情念を押し殺したように低い声で言った。
「ご批判は甘んじてお受けする。だが死んでいった者たちへの侮辱は止めて頂きたい!」
そう言うと、席を立って再び直立不動になる。
「大変失礼いたしました! この件での苦情は、菅野大尉かゲオルギー少佐までお願いいたします。私は相応の罰を受け、代わりの者が担当することになるでしょう」
早口でまくしたてた師匠は士官学校仕込みの綺麗な所作で一礼し、相手が何か言う前に退出してしまう。
ここで逃げ出すような師匠は”らしくない”。意図してではないだろうが、結果そうなったのは変わらない。
実のところ、よく言ってくれたと言う思いが無いではないが。
菅野は愉快そうににやにやしていたが、すぐ我に返り、場を仕切り直した。
「部下の無礼をお詫びします」
沙織もあわてて菅野に続いて謝罪する。
頭を上げた時、ふくれっ面の聖女が視界に入ってきた。
最初はあまり良くありませんでしたね。戦死した人たちを侮辱されて、いい気持ちはしませんでした。
今の私たちからしたら想像もできませんね”
早瀬沙織のインタビューより
Starring:早瀬沙織
「案内をさせて頂く菅野直大尉です。こちらは南部隼人中尉と早瀬沙織少尉。早瀬には皆さんの世話係を申し付けています」
菅野直の紹介に、早瀬沙織はぺこりと頭を下げる。
多分敬礼よりこちらのほうが良いだろうと考えてのことだ。
「どうぞお座りになってください。直立不動で話されても落ち着きません」
「はっ、では失礼させて頂きます」
菅野がリィルと話す間、師匠が素早く使者たちに視線を走らせる。訪問者たちを観察しているようだ。この辺りの連携はさすが師匠だと思う。
彼に倣って招かれざる客を見やる。
リィル・ガミノは小柄な少女。魔法の才能を持つ古代種の証として、銀髪と赤い瞳を持っている。
調べたところ年齢は14歳。物言いから腹芸が得意だとは思えない。
3人のメイドに視線を移す。
後ろの2人は緊張した面持ちだから、こういった交渉ごとに同席するのは慣れていないのかもしれない。
一方リィルの傍らに控えている金髪のメイドは、微笑のまま表情ひとつ変えていない。ただ静かにたたずんでいる。こちらが一番厄介そうだと、直感的に感じた。
「危険を冒してここに来られた理由を伺がっても宜しいでしょうか?」
菅野の言葉に、いささかむっとした様子で言った。
「先ほど申し上げたはずですが?」
そう言われてもあんな言葉を信じられるなら、戦争なんてやっていない。
聖女は強く訴えるように強調した。
「勿論、ダバート国王トリスタン陛下と会談し、戦争の即時停止をお願いするのです」
ああ、やっぱり本気で言ってるのですねと。沙織は固唾をのむ。
そんな要求が通らないことは彼女でも分かった。
「昨今の甲蟲の大量発生に異常気象、人間同士で争っている場合ではありません。このような無意味な戦争はすぐに終わらせて、人類は団結して原因究明に当たるべきです!」
3人の顔が苦笑に変わる。
士官である彼らは、それなりに政治も理解している。確かに甲蟲の出現は人類にとって懸案事項ではある。あの正体不明の怪物は、人を食らうからだ。
彼らをここへ誘った、先の怪奇現象も詳細な調査が必要だろう。
だが今回の戦争は、経済格差に宗教問題が絡んだ厄介なものだ。国王一人が止めると言えば止められるものではない。
トリスタン・ダバートⅢ世は穏健派だ。陛下にしてみても、止められるものならすぐに止めたいと言うのが本音ではなかろうか。
「そのような重大な案件は私では答えかねます。本土からしかるべき人間が送られてくると思いますので、そちらと交渉願います」
菅野らしくない、お役所的な回答だと思う。
だが実際そうとしか答えられないのだろう。
「では、あなたの所感を聞きましょう。戦争を止めるべきとは思いませんか?」
苛立ちを隠さず、リィルが視線を向けてくる。
菅野だって戦争は大嫌いなのは指揮下で戦っていれば分かる。だがここで、「英雄」が迂闊な発言をするわけにはいかない。
それを察したのか、師匠が割って入った。
「……答えても怒りません?」
こちらも軍人らしくない、と言うよりいい大人が口にするにはいささか情けない言い草だった。リィル嬢は僅かに眉を吊り上げ「ええ」と首肯した。
「止めるべきだと思いますが、無理だと考えます」
リィルの口角がぐっと下がる。
師匠は「やっぱり怒るじゃないか」と言いたげだが、それでも彼は嘘やごまかしを並べるつもりは無いだろう。
ちらりと師匠に目線で問われた見た菅野は、即座に頷いて見せる。彼は責任は取ってやるから好きにやれとばかり。
師匠の考えは分かる。相手が子供だからこそ、甘い蜜だけを差し出すわけにはいかない。それは優しさではない。
本気で和平を望む者ほど、「そんなことは分かっている」以上の感想を持たない。平和の尊さを説こうが前線の悲惨さを訴えようが。
国家元首の鶴の一声で戦争を止めることなど、少なくとも現代のライズでは不可能だ。
だから皆どうするべきかを必死になって考えているのだ。
だが、問題はそれを師匠がやる必要があるのかだった。
彼女への諫言は、2人が危ない橋を渡ることを意味しているのだ。
「無理、とはどういう意味でしょうか?」
問い返すリィルは大変怖い顔をしていた。だからと言って前言を翻すわけにもいかず。
「この戦争を支持しているのは、両陣営の国民です。彼らがもう戦争はこりごりだと痛感しない限り、停戦は難しいかと……」
「国民が戦いを望んでいると言うのですか!」
言葉を荒げるリィルに、師匠は無慈悲に答えた。
「残念ながら」
報道を見るに、彼の言う事は間違ってはいない。
今次大戦の根底には、経済問題がある。
現状で異世界貿易に強い利権を持つ条約国に、後発の連盟国が何とかそれに食い込もうと譲歩を迫る。要は、異世界貿易と言うパイの奪い合いである。
は地球列強と、その支援を受けたライズの大国。それらの思惑が絡み合った蟲毒のような戦場がこのラナダ共和国だ。
譲歩を迫っているだけならば良かったが、主張に宗教問題が絡みだし、武器をばらまく国が出始める。こうなっては双方引けない。冷たい争いは赤熱を始め、やがて弾けた。
この手の戦争は、お互いが譲歩より継戦の方が不利益と判断するまで止まらない。
あるいは片方が破滅するまで。
そんなことをやんわりと解説してゆく師匠に、彼女の表情はどんどん険しくなっていく。
「あなたはっ、軍人なのに『しょうがない』で済ませるんですか!? 今この瞬間にも、何百何千の命が失われているのですよ!?」
続けようとした言葉を飲み込む師匠から、菅野が話を引き継ぐ。
「お言葉はもっともです。私も国元に残してきた家族が戦禍の犠牲になると思うと、この身が張り裂ける思いです」
「ではっ!」
「我々も軍人として、一刻も早い戦争終結の為に戦っています。どうか猶予を」
「それではまだ人が死に続けると言う事ではありませんか! このままでは、また……」
菅野に怒りをぶつけるリィルに、何らかの覚悟を持ってやってきたのだと読み取った。どうやら危険を冒したのは道楽の類ではないらしい。
御付きは黙っているだけなのかと彼女を見やる。が、にっこりと笑い返された。なんだろうこの人は。
「あなたたち軍人は、戦争だけしていれば良いから、そんな事が言えるのです! 巻き込まれて死んでゆく子供たちは、何の罪もないのに家を焼きだされて凍え死んでいるのです!」
それをやっているのは、主に攻め手であるガミノ軍である。
連盟軍の兵士たちは概ねモラルの高い軍隊だ。ソ連からの義勇兵やニーズホッグ部隊など、悪名高い例外も存在するが。
ガミノ兵も例外に当てはまる。自分たちが報われないのはラナダや条約国が富を独占しているからと信じているし、そう教えられてもいるのだ。
そう言う人間は、他者に幾らでも残酷になれる。
「猛省いたします」
お役所的な師匠の言葉と共に、頭を下げる2人。
沙織も慌てて後に続く。
ここが限界だろう。
本音を言えば不機嫌になり、ごまかせば見透かされて不機嫌になる。
もし、彼女が興奮のあまり言ってはいけない言葉を口走らなれば、運命が動き出すこともなかっただろう。
「軍人なんて武器屋さんの言いなりになって戦いを始めて、後の事なんか何も考えていない! 命を犠牲にして民間人を救うと英雄。でも、彼らが戦争に反対すれば誰も死ななくて済んだんです! ”戦争で死んだ軍人はどんな偉業を果たそうと犬死に”です!」
菅野の事務的な笑顔が崩れた。いくら何でもあんまりな言い草だった。
戦歴の浅い自分ですら、何人もの戦友を見送ってきた。ましてや、激戦の中で生きてきた菅野や師匠は今の言葉をどう思うだろう。
今の言葉は命がけで戦う敵味方の将兵に対する明確な侮辱だ。
「おい、クソガ……」
青筋を立てた菅野がドスのきいた声で啖呵を切ろうとする。
まずい、このままだと決定的な発言をしてしまう!
突然ドン! と音がした。
驚いて傍らを見やると、拳を机に叩きつけている南部隼人が見えた。
「黙れ!」
驚愕よりも戸惑いを感じた。
沙織は師が激昂するところなど見たことがない。教えを乞う自分に声を荒げたこともほとんどない。
彼が怒りを露わにするのは、沙織が誰かを顧みない時だ。そしてその誰かには、沙織自身も含まれている。
(……師匠?)
後ろにひかえていたメイドが身を乗り出すが、リィルの傍らのメイドがそれを手で制す。
戸惑う沙織を一顧だにせず、師匠は情念を押し殺したように低い声で言った。
「ご批判は甘んじてお受けする。だが死んでいった者たちへの侮辱は止めて頂きたい!」
そう言うと、席を立って再び直立不動になる。
「大変失礼いたしました! この件での苦情は、菅野大尉かゲオルギー少佐までお願いいたします。私は相応の罰を受け、代わりの者が担当することになるでしょう」
早口でまくしたてた師匠は士官学校仕込みの綺麗な所作で一礼し、相手が何か言う前に退出してしまう。
ここで逃げ出すような師匠は”らしくない”。意図してではないだろうが、結果そうなったのは変わらない。
実のところ、よく言ってくれたと言う思いが無いではないが。
菅野は愉快そうににやにやしていたが、すぐ我に返り、場を仕切り直した。
「部下の無礼をお詫びします」
沙織もあわてて菅野に続いて謝罪する。
頭を上げた時、ふくれっ面の聖女が視界に入ってきた。
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本作の設定などはwebサイトで公開しております。ライズ世界の歴史やテクノロジーについても触れているので、興味を持っていただけたら、是非遊びに来てください(`・ω・´)b王立銃士隊https://jyushitai.com/
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