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48_花帆の言葉
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「その際、カメラとかこの部屋に設置とかしてないですか? もし、していたなら帰るまでに回収してくださいよ」
「そ、そのような事は決してございません。その節に関しては誠に申し訳ございませんでした。……それでは、私どもから申し上げる事は以上となりますが、他に質問はございませんでしょうか」
「……いえ、大丈夫です。タクは……連れて帰るんですか?」
「は、はい。そちらに関しては、引き取りをしないことには、私どもも会社に戻れな——」
女性が話してる途中で俺はタクを差し出した。ごねた所でこの連中はどうやってでもタクを持ち帰るだろう。どちらにしても、その方がタクの為だ。もしかすると新しい命を吹き込んで貰えるのかもしれない。
「大丈夫です。その代わり、優しく扱ってあげてください。……ごめんなさい、あと一つだけ。タクは自分から元の姿に戻ったけど、これはどのRC-AVATARにも付いている機能なんですか?」
「はい、どのRC-AVATARにも機能としては付いております。ただ……これはオフレコですが、マスター様に黙って家を出たり、ましてや自分を停止させたのは、タク様が初めてです。正直、私どもも今回の行動には驚いています」
女性が言い終えると、白人男性は紙袋を取り出して女性に手渡した。
「こちら、諸々のお詫びとお礼を込めたもので、お納め頂けますと幸いに存じます」
「わかりました、お預かりします」
俺が受け取らないと思ったのか、横から吉田さんがさっと紙袋を引き取った。その後、メガネの女性と白人男性は深々と頭を下げ、ハイツを後にした。
袋の中には、「斉藤様」「吉田様」「白石様」と書かれた三つの封筒が入っている。また、それに被さるように一枚の紙切れが入っていた。
「んーと……『一連の事に関して、SNS等での発信はお控えください』だって。『そのような画像・発言を見かけた場合は発信元を辿ってご注意に上がります』だってさ。丁寧にかいてあるけど脅しだね、これ。……吉田って書かれてるのは持って帰っちゃっていい?」
「もちろん。三人の名前書いてるって、俺たちの事、覗いてましたって自白してるようなものだけどね」
「ほんとだ」
花帆は赤く腫らした目で、少しだけ笑った。
「じゃ、長いことお邪魔しました。すごい一日だった……またみんなでお好み焼き食べようよ。今度は白石さんも一緒に。……それじゃ」
吉田さんはそう言うと隣の部屋へと帰っていった。
「もう12時になるね、花帆の両親も心配してるんじゃない?」
「あ……パパから何件もメッセージ来てる……駅まで車で迎えに行くって。やだな、もう27歳になったっていうのに」
俺は駅まで花帆を送ることにした。
一緒に歩く二人の距離はいつもより空いている。俺の革靴の、コツコツという音だけが夜道に響く。
殆ど会話も無いまま、駅近くまでやってきた。
「一応、拓也とお付き合いしてる事は言ってあるけど、パパからは見えないとこまででいいから」
「ああ……そうする。大丈夫」
俺との事、話してくれていたんだ。
父親には会わないようにか……そりゃそうだ、別れたも同然の男と一緒にいるのを見られたら、話がややこしくなるだけだろう。
「こんな時間まで親を心配させる彼氏なんか別れろ! とか言い出しそうだからね。送ってくれてありがとう。ここで大丈夫」
そう言って花帆は小さく手を振り、駅の方へ掛けていった。
「なあ、タク。最後の花帆の言葉、少しは期待してもいいと思う?」
タクがいたら、なんて答えてくれただろう。
「そ、そのような事は決してございません。その節に関しては誠に申し訳ございませんでした。……それでは、私どもから申し上げる事は以上となりますが、他に質問はございませんでしょうか」
「……いえ、大丈夫です。タクは……連れて帰るんですか?」
「は、はい。そちらに関しては、引き取りをしないことには、私どもも会社に戻れな——」
女性が話してる途中で俺はタクを差し出した。ごねた所でこの連中はどうやってでもタクを持ち帰るだろう。どちらにしても、その方がタクの為だ。もしかすると新しい命を吹き込んで貰えるのかもしれない。
「大丈夫です。その代わり、優しく扱ってあげてください。……ごめんなさい、あと一つだけ。タクは自分から元の姿に戻ったけど、これはどのRC-AVATARにも付いている機能なんですか?」
「はい、どのRC-AVATARにも機能としては付いております。ただ……これはオフレコですが、マスター様に黙って家を出たり、ましてや自分を停止させたのは、タク様が初めてです。正直、私どもも今回の行動には驚いています」
女性が言い終えると、白人男性は紙袋を取り出して女性に手渡した。
「こちら、諸々のお詫びとお礼を込めたもので、お納め頂けますと幸いに存じます」
「わかりました、お預かりします」
俺が受け取らないと思ったのか、横から吉田さんがさっと紙袋を引き取った。その後、メガネの女性と白人男性は深々と頭を下げ、ハイツを後にした。
袋の中には、「斉藤様」「吉田様」「白石様」と書かれた三つの封筒が入っている。また、それに被さるように一枚の紙切れが入っていた。
「んーと……『一連の事に関して、SNS等での発信はお控えください』だって。『そのような画像・発言を見かけた場合は発信元を辿ってご注意に上がります』だってさ。丁寧にかいてあるけど脅しだね、これ。……吉田って書かれてるのは持って帰っちゃっていい?」
「もちろん。三人の名前書いてるって、俺たちの事、覗いてましたって自白してるようなものだけどね」
「ほんとだ」
花帆は赤く腫らした目で、少しだけ笑った。
「じゃ、長いことお邪魔しました。すごい一日だった……またみんなでお好み焼き食べようよ。今度は白石さんも一緒に。……それじゃ」
吉田さんはそう言うと隣の部屋へと帰っていった。
「もう12時になるね、花帆の両親も心配してるんじゃない?」
「あ……パパから何件もメッセージ来てる……駅まで車で迎えに行くって。やだな、もう27歳になったっていうのに」
俺は駅まで花帆を送ることにした。
一緒に歩く二人の距離はいつもより空いている。俺の革靴の、コツコツという音だけが夜道に響く。
殆ど会話も無いまま、駅近くまでやってきた。
「一応、拓也とお付き合いしてる事は言ってあるけど、パパからは見えないとこまででいいから」
「ああ……そうする。大丈夫」
俺との事、話してくれていたんだ。
父親には会わないようにか……そりゃそうだ、別れたも同然の男と一緒にいるのを見られたら、話がややこしくなるだけだろう。
「こんな時間まで親を心配させる彼氏なんか別れろ! とか言い出しそうだからね。送ってくれてありがとう。ここで大丈夫」
そう言って花帆は小さく手を振り、駅の方へ掛けていった。
「なあ、タク。最後の花帆の言葉、少しは期待してもいいと思う?」
タクがいたら、なんて答えてくれただろう。
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