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28_未読メッセージ
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明朝、タクがひょっこり帰ってきてはいないかと、二間しか無い部屋を見渡す。残念ながらタクの姿は見えない。
時間は6時30分。昨日までの起床時間より15分ほど早い。今日からは、毎日この時間に起きることになる。
まずは、ジョギング前のおにぎりやフルーツ、ドリンクの用意だ。フルーツも今日の帰りには買っておかないと無くなりそうだ。ついでに補充が必要なものは無いかと、冷蔵庫の中も確認しておく。昨日までは全てタクがやってくれていた事だ。
7月も半ば。梅雨も上がり晴天が続いている。最近は走り慣れてきたからか、少しペースが上がり気味に感じる。意図的にペースを落とした方がいいのか? 距離を少し伸ばしてもいいのか? 気付けば、こんな事を真剣に考えている。今までの自分では考えられない事だ。
白石さんに会える日まで、あと40日程しか無い。このペースのままだと、タクの体形にまで絞り込むのは正直厳しいだろう。今日からは食事制限と、筋トレのメニューを見直してみようと思う。
ジョギングを終え、出社の準備をしているとスマホに着信が入った。俺のスマホでは無く、タクの方だ。タクのスマホに、いくつか着信が入っていたのは気付いていたが、この状況だと見ておいた方がいいだろう。指紋認証は、俺の指ですんなりと解除された。
発信元は、山内さんだった。
——————————
タクちゃん、大丈夫?
——————————
山内さんからの未読メッセージがいくつか溜まっていた。俺が開いてしまった事によって、既読に変わってしまっただろう。
念のため、他のメッセージも見てみる。タクへのメッセージとアドレス帳には、俺と山内さん、そして山岡の3人しか入っていなかった。狭い世界で生きていたタクをとても不憫に思った。
「おはようございます、斉藤です」
一階の山内さんのドアをノックした。タクが居なくなった事、早めに報告しておいた方がいい。出社前に立ち寄る事にした。
「おはよう! あ、斉藤さんか……」
「ごめん、タクかと思っちゃったよね。さっき、タクのスマホにメッセージが届いてたの気付いたから、山内さんに言っておかなきゃなって……実はタク、昨晩出て行っちゃったんだ。スマホも置いたままで……」
「……え? 斉藤さんにも言わず?」
「……ああ。一応、置き手紙はあったから、多少は安心してるんだけど。スマホ置いていったのは、俺名義で契約してたから、気を使って置いていったのかなって」
「で、何て書いてあったの、手紙には?」
「あ、えーと……俺もそろそろ独り立ちしなきゃいけないから、とかそんな感じ。あと、バイト先にはちゃんと説明してるから安心して、だとか」
「……そっか。……せめてサヨナラくらい言ってくれても良かったのにね。わざわざありがとう」
「いや、身内として申し訳ない……タクと連絡取れたら、謝るように言っておくから」
「ううん、もういいよ。お仕事頑張ってね」
そう言うと、山内さんは静かにドアを閉めた。
タクが来て手に入れたことも沢山あったが、これから失ってしまうものも出てくるのかもしれない。
時間は6時30分。昨日までの起床時間より15分ほど早い。今日からは、毎日この時間に起きることになる。
まずは、ジョギング前のおにぎりやフルーツ、ドリンクの用意だ。フルーツも今日の帰りには買っておかないと無くなりそうだ。ついでに補充が必要なものは無いかと、冷蔵庫の中も確認しておく。昨日までは全てタクがやってくれていた事だ。
7月も半ば。梅雨も上がり晴天が続いている。最近は走り慣れてきたからか、少しペースが上がり気味に感じる。意図的にペースを落とした方がいいのか? 距離を少し伸ばしてもいいのか? 気付けば、こんな事を真剣に考えている。今までの自分では考えられない事だ。
白石さんに会える日まで、あと40日程しか無い。このペースのままだと、タクの体形にまで絞り込むのは正直厳しいだろう。今日からは食事制限と、筋トレのメニューを見直してみようと思う。
ジョギングを終え、出社の準備をしているとスマホに着信が入った。俺のスマホでは無く、タクの方だ。タクのスマホに、いくつか着信が入っていたのは気付いていたが、この状況だと見ておいた方がいいだろう。指紋認証は、俺の指ですんなりと解除された。
発信元は、山内さんだった。
——————————
タクちゃん、大丈夫?
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山内さんからの未読メッセージがいくつか溜まっていた。俺が開いてしまった事によって、既読に変わってしまっただろう。
念のため、他のメッセージも見てみる。タクへのメッセージとアドレス帳には、俺と山内さん、そして山岡の3人しか入っていなかった。狭い世界で生きていたタクをとても不憫に思った。
「おはようございます、斉藤です」
一階の山内さんのドアをノックした。タクが居なくなった事、早めに報告しておいた方がいい。出社前に立ち寄る事にした。
「おはよう! あ、斉藤さんか……」
「ごめん、タクかと思っちゃったよね。さっき、タクのスマホにメッセージが届いてたの気付いたから、山内さんに言っておかなきゃなって……実はタク、昨晩出て行っちゃったんだ。スマホも置いたままで……」
「……え? 斉藤さんにも言わず?」
「……ああ。一応、置き手紙はあったから、多少は安心してるんだけど。スマホ置いていったのは、俺名義で契約してたから、気を使って置いていったのかなって」
「で、何て書いてあったの、手紙には?」
「あ、えーと……俺もそろそろ独り立ちしなきゃいけないから、とかそんな感じ。あと、バイト先にはちゃんと説明してるから安心して、だとか」
「……そっか。……せめてサヨナラくらい言ってくれても良かったのにね。わざわざありがとう」
「いや、身内として申し訳ない……タクと連絡取れたら、謝るように言っておくから」
「ううん、もういいよ。お仕事頑張ってね」
そう言うと、山内さんは静かにドアを閉めた。
タクが来て手に入れたことも沢山あったが、これから失ってしまうものも出てくるのかもしれない。
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