ある日、もう一人の俺(イケメンだけど寿命は3年)がこの世に誕生した話

靣音:Monet

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22_新製品

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「山内さん、タクが会ってくれないって言ってたよ。山内さんから誘われたりしてたの?」

「ああ……2回あったかな。どっちも拓也が出かけている昼時だった。2度目に来てくれた時に、連絡先の交換をしたって感じ」

「山内さんの仕事も夜からだからか。——何て断ったの?」

「今から不動産屋さんに行く、とか適当に。嘘ついてちょっと心苦しかったけど」

「俺が、山内さんと仲良くなったらその後どうするの? って言ったのを気にして?」

「そうかもね……いつかは消えてしまう身だから……俺はともかく、もし本気なら彼女が可哀想だと思って」

 タクにとって、生きている楽しみって何なのだろうか……

 俺への奉仕だけで生きているような気がして、最近のタクを見ていると辛くなる時があった。


***


「おはよう、斉藤くん。今、時間ええか?」

 社長の幸田が、2階の商品開発部にまで足を運んできた。幸田は3階にある社長室に呼び出すことは殆ど無く、用事があれば自分から出向くことが多かった。

「そろそろ、ウチのオリジナル商品出そうかと思ってな。藤田さんと一緒やったら、面白そうなん出来ると思ってな。営業から価格帯とかその辺のリクエストはさせるから、何か考えてみてくれるか」

「社長は何かアイデア無いの?」

 横にいた藤田さんが聞いた。

「ないない。俺にアイデア有ったら、既製品ばっかり扱ってる訳ないやん。俺は皆が気持ち良く働いてもらうように頑張るだけや、ハハハ。斉藤くん、任せてええか?」

「もちろんです! 有り難うございます!」

「おお、頼もしいなあ。面接の時に持ってきてくれたデザイン、あれ見たときから、やってくれる人やと思ってたから。期待してるで!」

 幸田はそう言うと、俺の肩をポンと叩いて社長室へと戻っていった。

「光良くんの、ああいう所良いでしょ? 気付けば、やる気にさせられてるのよ」

「ええ、本当に。多分、藤田さんが思ってるより、俺、やる気に溢れてますよ」

 藤田さんは「若いっていいねえ」と笑った。


 俺は早速、新製品に対するリクエストがあるか営業に聞いてみた。

「リクエストねえ……とにかく面白いものか、役に立つものの二択かな? 価格はとびっきり良い物で980円まで、それ以外は300円以下に抑えてくれると嬉しいかな? もちろん、どちらも上代でね」

「ありがとうございます」と答えたものの、想定内の回答だった。

 早速社内の売上げデータと、他社の売れ筋商品などを今一度調べ直す。やはり売上げで目につくのは季節物だ。梅雨時なら、折りたたみ傘のカバーであったりポンチョと言った、雨に関するもの、夏は汗ふきシートや瞬間冷却剤などが売れる。最近の流行だと、ハンディ扇風機などもそうだ。

「なかなか難しいですね、新製品……」

「そりゃそうよ、そんなすぐ簡単に良いアイデアなんて出ないから。……話変わるけど、昨日見せてくれたリングノートの表紙デザイン、あのデータ開いてみてくれる?」

「あ、はい。えーと、これですね。開きました」

「今、タイトルと社名のロゴ、ワンポイントのバッヂ、全部をセンター揃えにしてるけど、バッジを右肩において、他は左揃えにしてみて。そうそう、そんな感じ」

「ああっ! すごく良くなった!でも、こうするとバッジは正方形じゃない方がいいような感じがしますね」

「そうね、私なら円形にするかな?」

「ですよね! 早速修正します、ありがとうございます!」

 新商品を任された喜びを白石さんに伝えたかったが、今は出来ない事がとてももどかしかった。
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