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「山岡、さっき渡した封筒で支払い頼むな。あと、領収書忘れずに。……じゃ、俺仕事戻るから。山岡は飲み過ぎないようにな」

 飲み会開始から二時間ほど。飯山はそう言って、8時少し前に席を立った。俺たちは礼を言い、飯山をその場で見送った。

「まあ、気さくな店長で助かってますねぇ、俺たち。前やってたバイト先の店長とか、ほーんと、最悪だったし。……って言うか、白石さん結構飲むじゃないですか」

「え!? そんな飲んでないですよ。確か、まだ3杯目だったんじゃないかな……」

「いや、もっと飲んでるっしょ。結構なペースっすよ。殆ど飲めないのかと思ってたし。まあ、経費だしどんどん飲んじゃいましょ。あ、斉藤さんは飲めないんっすね、すみません、アハハ」

 確かに。俺も同じことを思っていた。梅酒のソーダ割りを4杯。既に白石さんの頬は赤みを帯び、目は少しばかり潤を帯びていた。まあ、そういう山岡の顔は既に真っ赤で、ジョッキをテーブルに置く度にドンッという大きな音を立てている。
 
「そんな飲んじゃってますか。気をつけなきゃ……しっかり、私!」

 白石さんは両手で、自分の頬を二度ほどピシャピシャと叩いた。 

「ちなみに、斉藤さんは酔ったらどんな感じなんすか? あんまり変わらないイメージだけど。あ、すみませんっ、生ビールお代わりっ!」

「そうだね、あんまり変わらないって言われるかな。ただ、昔は飲んでも全然起きていられたのに、最近はすぐ眠くなるんだよね。年のせいなのかな」

「へー、そんなもんなんすね……話変わりますけど、白石さんの後輩で、キリッとキツい感じの、ほそーい女の子とかいません? 俺好みの子ってなかなか現れないんですよねぇ」

 俺への返事は適当に、山岡は自分のタイプの子の話を始めた。すぐに山内さんの顔が浮かんだが、残念ながら山岡は年下好きだ。

「うーん、居ないかなあ……って言うか、斉藤さんすぐ寝ちゃうんですか。私なんて今でもすぐ寝ちゃいますよ。もっと年取ったらどうなっちゃうんだろう」

「白石さん! 俺への回答適当すぎっしょ! アハハハ!」

 俺からすれば、どっちもどっちだ。2人とも明るい酔い方なので、見ているだけで楽しいが。欲を言えば、俺も一緒に飲みたかったってところか。

 その時、テーブルの角に置いてあった山岡のスマホが鳴った。

「あ。ごめんなさい、電話出ちゃっていいすか。……はい、オレオレ。うん、うん。……え? マジで!? 分かった。店出たらすぐ連絡入れるわ」

「友達? もし急ぎなら俺は全然構わないよ。タイプの子にでも会えそうなの?」

「斉藤さん、エスパーっすか! 当たりっすよ! 俺が狙ってる子も一緒に今から飲むらしいんっす。……じゃ、お言葉に甘えて!」

 山岡はそう言うと、ボールペンで『3万円』と書かれた封筒を取り出した。そして、大きな音を立てて封筒をテーブルに叩きつけると、残っていたジョッキのビールを飲み干した。

「じゃ、領収書とお釣りだけ店長に渡しておいてください! 俺が注文したつくねチーズも食っちゃって大丈夫なんで! 斉藤さん、白石さんお先っす!」

 そう言うと、山岡はバタバタと店を出て行ってしまった。
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