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14_ゴーグル越しの白石さん
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「ふう……」
パソコンに向かって調べ物をしていたら、あっという間に時間が過ぎた。
調べ物の一つが『マイナンバー』に関してだ。タクに扮してバイトを始める際、個人情報は全て俺の物を使った。実際中身は俺だったし、当時は就職も考えていなかったので軽く考えていたのだ。もし俺の就職が決まったら、俺は二つの仕事を掛け持ちしている事になる。浅井からの資料には「副業禁止」とは書いていないから、とりあえずはこのままでいいとしよう……なるようになれ、だ。
もう一点は面接に当たっての資料作りだ。俺の現状からして、やる気を見せるだけでは正直厳しいだろう。何かしらアピールが出来ないかと、色々と探していた。これはある程度アイデアも出たので、続きは明日にして夕食でも作ることにする。
夕食は最近のヘビーローテーション、鶏胸肉のサラダ。鶏胸肉はレンジで軽く火を入れてから塩胡椒を振り、両面に焼きを入れる。それを薄くスライスして野菜と混ぜるだけ。ドレッシングは日によって変えるが、最近のお気に入りは和風ドレッシングだ。
以前の俺は、カップ麺やコンビニ弁当をアテに、晩酌をするような毎日を送っていた。運動もしない、食事もこんなものでは、太ってしまって当たり前だ。今は、晩酌を止めただけでなく、カップ麺やスナック菓子なども全く買わなくなった。炭水化物も夜は摂らないなど、ダイエットも本格的になりつつある。
夕食を終え、最近触っていなかったゴーグルを手に取った。
ゴーグル越しでもいい、白石さんを見たかったのだ。実際に白石さんに会ってからというもの、気持ちがどんどん抑えられなくなっている。彼女のストーカーになったようで後ろめたさを感じたが、「少しだけ」と自分に言い聞かせ、ゴーグルのモニターをオンにした。
ヒマな時間帯だったのだろうか、ちょうど店員同士が会話をしているタイミングだった。
——————————
「えー、また来られたんっすか、斉藤さんの従兄弟さん。いつも俺のいない時だなあ」
24歳の山岡だ。そういえば、彼には未だ会っていない。
「そうそう。ノリノリでしたよお兄さん、歌も上手だったし。——斉藤さんも上手そうですよね、歌」
白石さんだ。やっぱりアレを見られてたか……モニター越しでも彼女を見るとドキドキしてしまう。やはり、綺麗だ……
「そういや、最初に従兄弟さんと来た時は、女子もいたらしいじゃないですか。俺のコンパにも一度来てくださいよ。年上の男性呼んで欲しいって需要、結構あるんっすよ」
「コンパは興味無いなあ。夜は飲めないし、俺なんていても面白くないよ」
「今時は飲まない子、結構いるんですって。全然平気っすから。……そういや、白石さんは飲むんすか、お酒?」
「私は少しだけ……かな? すぐ笑い上戸になっちゃって、見てるだけで面白いとは言われますけど」
「泣き上戸より全然いいじゃないっすか。斉藤さん、そろそろ飲み会しましょうよ。ここのメンバーで。あ、ちょうど2人の歓迎会にもなるし!」
「そうだね今日上がる時に、店長に聞いてみようか」
——————————
モニターには「やったー」と小さく喜ぶ白石さんが映っていた。笑い上戸になった白石さん、俺も見て見たいと思った。
***
「ただいま! 今度、バイト先で俺と白石さんの歓迎会やる事になったよ。最近、拓也といい、飲み会続きだね」
タクが屈託の無い笑顔で言う。
「ああ、ごめん……今日モニターで見てたんだ、ちょうどそのシーン。聞いてたよ、白石さんが飲んだら笑い上戸ってところ」
「そうなんだ、それ教えてあげなきゃ、って思ってたから丁度良かった」
「うん、これからも教えて。やっぱりモニターで見てるってのって、なんか後ろめたくって」
俺が笑うと、「そんなの、気にしないでいいのに」とタクも笑った。
週明けには面接がある。明日にはある程度資料を仕上げてしまおう。紹介してくれた浅井のためにも、つまらない奴が面接に来た、とは思われたくない。
パソコンに向かって調べ物をしていたら、あっという間に時間が過ぎた。
調べ物の一つが『マイナンバー』に関してだ。タクに扮してバイトを始める際、個人情報は全て俺の物を使った。実際中身は俺だったし、当時は就職も考えていなかったので軽く考えていたのだ。もし俺の就職が決まったら、俺は二つの仕事を掛け持ちしている事になる。浅井からの資料には「副業禁止」とは書いていないから、とりあえずはこのままでいいとしよう……なるようになれ、だ。
もう一点は面接に当たっての資料作りだ。俺の現状からして、やる気を見せるだけでは正直厳しいだろう。何かしらアピールが出来ないかと、色々と探していた。これはある程度アイデアも出たので、続きは明日にして夕食でも作ることにする。
夕食は最近のヘビーローテーション、鶏胸肉のサラダ。鶏胸肉はレンジで軽く火を入れてから塩胡椒を振り、両面に焼きを入れる。それを薄くスライスして野菜と混ぜるだけ。ドレッシングは日によって変えるが、最近のお気に入りは和風ドレッシングだ。
以前の俺は、カップ麺やコンビニ弁当をアテに、晩酌をするような毎日を送っていた。運動もしない、食事もこんなものでは、太ってしまって当たり前だ。今は、晩酌を止めただけでなく、カップ麺やスナック菓子なども全く買わなくなった。炭水化物も夜は摂らないなど、ダイエットも本格的になりつつある。
夕食を終え、最近触っていなかったゴーグルを手に取った。
ゴーグル越しでもいい、白石さんを見たかったのだ。実際に白石さんに会ってからというもの、気持ちがどんどん抑えられなくなっている。彼女のストーカーになったようで後ろめたさを感じたが、「少しだけ」と自分に言い聞かせ、ゴーグルのモニターをオンにした。
ヒマな時間帯だったのだろうか、ちょうど店員同士が会話をしているタイミングだった。
——————————
「えー、また来られたんっすか、斉藤さんの従兄弟さん。いつも俺のいない時だなあ」
24歳の山岡だ。そういえば、彼には未だ会っていない。
「そうそう。ノリノリでしたよお兄さん、歌も上手だったし。——斉藤さんも上手そうですよね、歌」
白石さんだ。やっぱりアレを見られてたか……モニター越しでも彼女を見るとドキドキしてしまう。やはり、綺麗だ……
「そういや、最初に従兄弟さんと来た時は、女子もいたらしいじゃないですか。俺のコンパにも一度来てくださいよ。年上の男性呼んで欲しいって需要、結構あるんっすよ」
「コンパは興味無いなあ。夜は飲めないし、俺なんていても面白くないよ」
「今時は飲まない子、結構いるんですって。全然平気っすから。……そういや、白石さんは飲むんすか、お酒?」
「私は少しだけ……かな? すぐ笑い上戸になっちゃって、見てるだけで面白いとは言われますけど」
「泣き上戸より全然いいじゃないっすか。斉藤さん、そろそろ飲み会しましょうよ。ここのメンバーで。あ、ちょうど2人の歓迎会にもなるし!」
「そうだね今日上がる時に、店長に聞いてみようか」
——————————
モニターには「やったー」と小さく喜ぶ白石さんが映っていた。笑い上戸になった白石さん、俺も見て見たいと思った。
***
「ただいま! 今度、バイト先で俺と白石さんの歓迎会やる事になったよ。最近、拓也といい、飲み会続きだね」
タクが屈託の無い笑顔で言う。
「ああ、ごめん……今日モニターで見てたんだ、ちょうどそのシーン。聞いてたよ、白石さんが飲んだら笑い上戸ってところ」
「そうなんだ、それ教えてあげなきゃ、って思ってたから丁度良かった」
「うん、これからも教えて。やっぱりモニターで見てるってのって、なんか後ろめたくって」
俺が笑うと、「そんなの、気にしないでいいのに」とタクも笑った。
週明けには面接がある。明日にはある程度資料を仕上げてしまおう。紹介してくれた浅井のためにも、つまらない奴が面接に来た、とは思われたくない。
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