リアル無人島でRPG(ロールプレイングゲーム)! 参加費は150万円!? この島で最強の魔法使いに俺はなる! —RPG ISLAND—

靣音:Monet

文字の大きさ
上 下
45 / 49

LV-45:ベテルデウスの部屋

しおりを挟む
 デビラがいなくなった部屋の奥に、長く立派な廊下が出現していた。

 きっとこの先に、ベテルデウスの部屋があるのだろう。窓からは燦々さんさんと日光が降り注ぎ、部屋へと向かう俺たちの靴音だけが廊下に響く。突き当たりにある扉は今までで一番大きく、きらびびやかでありながら、重厚なつくりをしていた。

「なんかさ……この綺麗な廊下が逆に怖さを感じさせない?」

 サーシャが周りを見渡しながら言う。

「ハハハ、ホントに。天国から地獄に突き落とされるように感じちゃうね」

「インディ、縁起でも無いこと言うな。——にしても、とうとう会えるんだな。アタシたちが探し求めていた敵に。入る前に言っておくことは無いか……?」

「ええ……今まで通り全力で戦うだけです。後は、命の石の使い方。打合せしていた通りで大丈夫ですね?」

「ああ、大丈夫じゃ……完璧な作戦じゃと思う」

「とうとうだね……私はエクラウスさんと回復が被らないように気をつけなきゃ」

「俺は……皆と、この場所にいることに感謝してるよ」

「ハハ、そういうセリフはまだ早いんじゃないか。——それじゃやるか! アタシたちのラストバトル!!」

 ティシリィは大きな扉を両手で押し開けた。



 扉の先はとても大きな部屋だった。今まで入った中でも、最大ではないだろうか。また、この部屋には窓があり、眩しい光りが差し込んでいた。

「なんじゃろう……モンスターの部屋にしては神々しい感じまでするのう。流石ラスボスじゃ……」

「……正面の椅子……あれじゃない? ベテルデウスは」

 サーシャが言うと、背を向けていたその椅子はゆっくりと回転してこちらを向いた。座っていたのは、俺たちと同じ背丈くらいのモンスターだ。

「な、なんだ小せえな……いいのか、最後のモンスターがこんなので……」

 そのモンスターは椅子から立ち上がると、こちらへ歩み寄ってきた。細かい宝石をちりばめた法衣のようなものを着ており、右手には黒塗りの杖を持っている。

「とうとう、ここまで来たか……私がベテルデウスだ。……よくも、私の仲間を沢山殺してくれたな。ここできっちり、お返ししようと思う。
——それにしても、人間どもはどうして私たちの邪魔ばかりする? この島の歴史は学んでいないのか?」

「た、……確かに、ガルーラ王はお前たちに悪いことをした……だが、今のお前たちが、クロトワ族まで攻める理由にはならない!」

 ティシリィが言うと、ベテルデウスはフッと鼻で笑った。

「滅ぼされた父たちは甘すぎたのだ。自分たちの場所を守ることしか考えていなかった。——だが、私は違う。この島全てを手に入れたら、次は他の国にも攻め入るつもりだ」

「な、なんですって!! この島では飽き足らず、他の国もだなんて!!」

「ん……? 最初に攻めてきたのは、お前たち人間の方だろう。次は私たちの番。それだけの事だ。……違うか?」

「で、でもそれじゃ、同じ事の繰り返しじゃないか!!」

「何を言ってる……そのセリフは、そのままそっくり返してやる。——話にならん、まずはお前たちから処分してやる!!」

 そう言うと、ベテルデウスは目の前でグングンと巨大化した。俺たちの倍、いや……それ以上だろうか、俺たちはベテルデウスを見上げる形になった。それと同時に光りは閉ざされ、暗黒の部屋へと様変わりした。

「そ、そうこなくっちゃ……みんな、即死だけには気をつけろよ……」

 ティシリィは言ったが、剣を持ったまま動かなかった。作戦通り、サーシャがアンプラッシュを掛けるのを待っているのだろうか。いや、動けなかっただけなのかもしれない。



「初手は俺だっ!! エクサブリザード!!」

 ベテルデウスに向けた希望の剣が、凄まじい冷気を放つ。周りの空気を凍らせて一直線に伸びる氷のやいばは芸術的でもあった。

 パシーン……

 だが、その氷の刃は、ベテルデウスの法衣に粉砕された。俺たちの前に、粉雪のようなものが舞う。

「ま、また、何も効かないって奴か!! ワンパターンな奴らめ!!」

 そう言いながらも、ティシリィはベテルデウスに飛びかかっていく。剣は大きな音を立てて、ベテルデウスの法衣を捉えたが、ダメージは全く通っていない。

「こっ、こんなの、アンプラッシュ効果も何も無いじゃない! どうすればいいのよ!!」

「落ち着け、サーシャ! きっと何かある、みんなでその何かを考えるんじゃ!!」

 そんな俺たちを見て、ベテルデウスは笑みを浮かべていた。そして、その顔から笑みが消えると、右手の杖をこちらに向けた。

ちろ、愚かな人間ども!!」

 そのセリフの直後、俺たちの頭上に激しいいかづちが落ちた。

「きゃあああっっ!!」

「大丈夫か、サーシャ!!」

 俺たちは何とか耐えたが、サーシャだけは床に片膝を付いていた。

「へ、平気!! ここは私が回復する!!」

 よろめきながらもサーシャは全員を回復させた。

「こうなると、属性も何もあったもんじゃ無さそうじゃの。——き、効かぬじゃろうが、ブレスリカバリー!!」

 エクラウスさんは回復系の魔法を放ったが、ベテルデウスには何の効果も無かった。

「ハハハ、苦しむがいい……そしてお前たちも、一度は滅ぼされた者の気持ちを知るがよい!」

 ベテルデウスの杖は、幾多もの隕石を呼び寄せた。俺たちは連続して大きなダメージを受ける。

「ここはワシが回復する! な、何か方法は無いのか!!」



 合間を見てティシリィは斬りかかり、俺も様々な魔法を試してみたが、ベテルデウスには全くダメージを与える事が出来なかった。対するベテルデウスは、俺たちの息の根を止めるがごとく、連続して全体攻撃を放ってきた。サーシャとエクラウスさんはもちろん、ナイリも回復役にならざるを得なかった。

「頑張っているところ悪いが、お前たちに勝ち目は無い。どうして私の父が前回の戦いで敗れたか、お前たちは分かっていないようだ」

「そっ、それは、どういう意味ですか……!?」

「父は、パウロ・アルジャンテという男に倒された。ただ、それだけの話だ。そいつは我らの法衣を砕いた上、結界の石まで作り出した。他の国を攻める理由の一つは、そいつの子孫を根絶やしにする事だ。他の者では、この法衣に傷ひとつ付ける事は出来ん」

「そ、そうですか……あなたにとって、アルジャンテの子孫がいるという事は、とても不都合な事なのですね……」

 その時、暗い部屋を何かの光りがともしだした。

 光りの根源はナイリだった。力強く握ったブレイブソードが、緑色の光りを発している。

「な、なんだ、その光りは……!?」

 一歩後ずさったベテルデウスに、ナイリは雄叫びを上げて飛びかかった。ナイリのブレイブソードは戦士のように緑色の軌跡を描き、ベテルデウスの法衣を斬り付ける。

 カシャーン……

 ガラスが割れたような音が、部屋中に響き渡った。ベテルデウスの法衣から数多あまたの宝石がバラバラと落ちていく。その法衣は、色をなくした漆黒の法衣となった。

「だっ、誰なんだ、お前は……!?」

「……私の名前は、ナイリ……ナイリ・アルジャンテ!!」

 俺たちの視線は、緑色の光りに包まれたナイリに釘付けになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...