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LV-42:命の書

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「おい! バトル終わったんだろ! 早く出てくれ!!」

 ティシリィは我慢しきれず、勢いよくドアを開けた。

「ティ、ティシリィ……? やはり俺たちの方が先を行ってたんだな。……って言うか、どうしてお前たちが、先にその装備を付けてるんだ」

 そう言ったロクサスは俺と同じ希望のローブ、賢者のヴァントスさんはナイリと同じブレイブアーマーを装着していた。どちらもガーディアンタイタンを倒してドロップしたアイテムだ。

「アタシたちは、ガーディアンタイタンって奴と戦って、ドロップさせたたんだが?」

「なるほど、そういう事か……この部屋に出てくるのは、2度目のガーディアンタイタンだ。俺たちは今手に入れて、着替えたところだ。……って事は、お前たちには俺たちが最初にドロップさせたアイテムが出てくるんだろうよ」

 希望のローブ、ブレイブアーマーと同レベルのアイテムがドロップするって事か。何が出てくるのか、今から楽しみだ。

「ロクサス! それより、一度廊下に出て話の続きだ。やはり一度村に戻ろう、エクラウスが抜けるとやはり厳しい」

 ヴァントスさんは他のメンバーを引き連れ、廊下へと出てきた。と言うか、エクラウスさんが抜ける……? 一体、どういう事だ。

「いや、構わんよヴァントス。お前たちだけで戦ってこい。負けることがあれば、また一緒に行けばいい。誰だってこんな長い道のり、何度もやりたくないさ」

「エ、エクラウスさん……でも、俺たちがベテルデウスに勝ってしまったら……」

「気にするなカイ。そろそろ、モルドーリアの村にも新しいプレイヤーが辿り着く頃だろう。俺なら平気だ」

 どうやらエクラウスさんは、ガーディアンタイタンとの戦いで命を落としたようだ。ロクサスとグラウ辺りが、エクラウスさん抜きでも先に進みたいように見える。

「そうだ……ティシリィだったか。良かったらウチのエクラウスを、そっちのパーティーに入れてくれんか? ガーディアンタイタンのドロップアイテムの順番が入れ替わっているなら、次にお前たちが手に入れるのは『命の書』だ。戦闘中に限るが、MPを全て使うことで蘇生が出来る。こっちは恥ずかしながら、グラウとエクラウスが死んでしまってな。一人しか生き返らせないんだよ」

 グラウは戦士だ。敵のタイプによっては、戦士がいないと詰んでしまう。逆に、エクラウスさんがいなくても、向こうにはもう一人の僧侶、カイがいる。

「いやいや、無茶を言うな、ヴァントス……インディたちは四人で力を合わせてここまで来たんだ。しかも貴重な『命の書』を、俺なんかに使っちゃいけない」

 俺たちは顔を見合わせた。誰もが、エクラウスさんを誘ってあげよう、そんな表情をしている。ティシリィはそれを読み取ったのか、こう言った。

「もし……エクラウスがアタシたちのパーティーに戻ってきたいのなら、アタシは構わない。ただし、一つだけ条件がある」

「じょ、条件……? なんだそれは?」

 ヴァントスさんが聞いた。 

「昔のように、ジジイ語で話す事だ。それが出来るなら一緒に行こう」

 それを聞いたエクラウスさんは、みるみる涙目になった。

「そ、そんなの朝飯前じゃ……インディ、ナイリ、サーシャ。——本当にいいのか?」

 俺たち三人は笑顔で頷いた。

「良かった良かった……これで俺たちも心置きなく前に進める。イロエスたち、エクラウスをよろしく頼む」

 そう言って、ヴァントスさんたちは次の通路へと移動していった。最後尾にいたカイとティナは、振り返ると俺たちに小さく頭を下げた。


***


「すまんな、みんな……大事な『命の書』を使うことになるが、構わんのか」

「問題無い。エクラウスたちは知らないだろうけど、アタシたちには『命の石』ってのもある。これは一度きりだが、一人だけ蘇生させる事が出来る」

「おおお……そんなのもあるのか……ティシリィの着けている鎧もそうだが、お主たちは色々と恵まれておるのう」

「ハハハ、これはここの2階で変化したんだ。そういやグラウがジロジロと見てやがったな」

「とりあえずは、エクラウスさんをどのタイミングで蘇生させるか皆で考えましょう」

 俺たちは輪になってその場に座った。まさか、こんなタイミングでエクラウスさんが帰ってくるとは……俺は嬉しくてたまらなかった。

「エクラウスをすぐ使うなら、『命の石』なんだが、『命の書』はMPを全消費ってのがネックだな」

 命の石は戦闘中でなくても使用出来る。その上、HPやMPも消費することは無い。

「そうですね……今から戦うガーディアンタイタンの次が何か分かればいいのですが……もしベテルデウス戦になるのなら、ベテルデウスとの戦闘中にエクラウスさんを生き返らせなくてはいけません」

「そうよね……命の書が手に入るのは、ガーディアンタイタン戦の後だから……」

「そうだ、どこかの雑魚と戦って、生き返らせるのはどうだ!」

「それは無理ですティシリィ。辿ってきた扉の鍵は全て閉まっています。開くとしたら、私たちが村に戻ると決めた時でしょう」

 俺たちは考え込んだ。何かもっと、いい方法は無いだろうかと。

「それよりエクラウス……なんでガーディアンタイタンに二人もやられたんだ? 外のガーディアンタイタンより強いのか?」

「いや……強さは一緒のはずじゃ。ワシたちは茶色のガーディアンタイタンの攻撃を防御してから、緑色のガーディアンタイタンに攻撃を加える算段を立てておった」

「エクラウスさん、俺たちも同じでした」

「じゃが、茶色のガーディアンタイタンに気を取られすぎて、緑色のガーディアンタイタンから痛恨の一撃を食らったんじゃ。背を向けていたグラウがの……そこに、岩を投げつけられてアウトじゃ。初手からグラウを失ったワシらは、ちょっとしたパニックになっての。ワシまで死んで、なんとかギリギリで勝てたというワケじゃ」

「なるほど……私たちも一度勝てたからと言って、気を抜かず戦いましょう。現時点では最強のモンスターと言っても、過言ではありません」

「って言うか、グラウは痛恨の一撃食らいすぎじゃ無いか?」

 ティシリィの一言に、俺たちは苦笑いをした。確か、トロール戦でもそれで命を落としているはずだ。

「そうじゃ、こうしないか……お主らとワシらでは、ドロップアイテムの順番が入れ替わったのは確かだと思う。じゃが、既に『命の石』というアイテムを持っているお主らには、『命の書』が出てこない可能性もあると思うんじゃ。とりあえず、ガーディアンタイタンと戦ってこい。決めるのはそれからにしよう」

「分かった……じゃ、エクラウスは廊下で待っていてくれ。必ず勝利して帰ってくる」

 ティシリィが言うと、エクラウスさんは満足そうに何度も頷いてくれた。
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