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LV-39:バルナバ城

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 俺たちが攻撃を仕掛けないとみると、緑色のガーディアンタイタンは大きな拳を振り上げ、ティシリィに殴りかかった。

「うっ!! 防御してるのにデカイ一撃放ってきやがる!」

 横にいたサーシャが、すぐにティシリィを回復させる。

「きっ、来ます! 皆さん、茶色のガーディアンタイタンに対して防御を!!」

 俺たちは素早く、茶色のガーディアンタイタンの方へ体を向けた。防御姿勢を取っているにも関わらず、岩の塊は大きなダメージを与えてきた。だが回復は後だ、俺たちは緑色のガーディアンタイタンに全員で攻撃を仕掛けた。

「うらあああっ!!」

 ティシリィの一撃は、アンプラッシュ効果の上、ツインイヤリングの効果で2回攻撃となった。これはチャンスだ。

「轟けっ! エクササンドス!!」

 ナイリのエクササンドスに続き、俺はエクサファイラス、サーシャはエクサウィンディスを放った。

 エクサファイラスを放った時点で、緑色のガーディアンタイタンは黒く炭化し、最後のエクサウィンディスが粉々に吹き飛ばした。もしかすると、エクサファイラスの時点で、緑のガーディアンタイタンは息絶えていたかもしれない。

「次は茶色だ! 防御しろ!!」

 素早く振り返ると、茶色のガーディアンタイタンが、まさに岩を投げつけてくる瞬間だった。ぼ、防御は間に合うのか……

「ううっ!!」

 痛みは走ったが、全員が防御に間に合ったようだ。端末が振動しないという事は、誰も死んでいない。

「ごめん! もうブレスリカバリーは全員には使えない! 癒やせ! 聖母の杖!!」

 サーシャが言い終わらない内に、ティシリィは大きくジャンプし、剣を大きく振りかぶっていた。

「くたばれえっ!!」

 光りの剣は今までにない程に発光し、ティシリィの背中側からスタートした剣の軌跡は、茶色のガーディアンタイタンを真っ二つにした。

 アンプラッシュ効果と、ツインイヤリング効果の2回攻撃、その上、SCHスーパークリティカルヒットの表示が出ている。ティシリィが一度に与えたダメージの中では、最大のものだろう。

「いつもながら、見事でしたティシリィ……倒してくれてホッとしました……」

「最後は運が良かったな……なかなかに手強い相手だった……」

 そう言って、ティシリィは額の汗を手の甲で拭った。

 

「お! ドロップ通知が来てるぞ! その先に出現したみたいだ!」

 端末が指示する方へ移動すると、大きな宝箱が2つ現れていた。

「インディ、この大きさ……きっと私たちの防具ですよ、これは……」

「そんな気がするね……じゃ、開けよう!」

 中から出てきたのは、『ブレイブアーマー』と『希望のローブ』だった。ナイリが予想した通り、ナイリと俺の最終防具だ。

 城の外壁に隠されるように、更衣室が二つ備えられていた。これなら外で着替えるのも安心だ。とりあえず俺の着替えが済み、皆の前へ出る。ナイリはまだ着替え中のようだ。

「いいじゃんか、インディ!! そういうの着ると、魔法使い感がグッと出るな!! そういや、なんで鎧ばっか着てたんだよ」

「ローブは防御力イマイチだったし、そもそも、俺には似合わないような気がしてて……」

「全然、そんな事無い! 似合ってる似合ってる!!」

 黒に近い濃紺のローブは、ウエスト部分は絞られているが、袖と裾がゆったりとしたデザインだった。そしてサーシャの防具同様、一部ではあるが金属製のプレートで補強されている。大きなフードが付いていたが、今は後ろに垂らしておいた。

 何より装備をする事で、魔法の効果が2割増しになるとの事だった。ローブにしては防御力が高く、最終決戦にはもってこいの防具だと言える。

「ど、どうでしょうか……?」

 着替えを終えたナイリも出てきた。

「いい……いいよ! ナイリ!」

 ナイリのブレイブアーマーは、高級感溢れる銀色で、ふちや模様は金色で装飾されていた。

「いいじゃないか、ナイリ! これに限っては、本物の金属じゃないのか?」

 ティシリィはそう言って、ナイリの鎧を指先で叩いた。出た音はポコポコとしたもので、これも何かしらの樹脂で出来ているようだ。本当にクオリティが高い。

「——にしても、何でアタシの鎧だけこんな地味なんだよ。真っ黒で洒落っ気の一つも無い」

「そんな事無いよ、ティシリィ。真っ赤な髪によく似合ってる。俺が着られるなら、交換したいくらいだ」

「フフッ、そうか……じゃ、これはこれで満足しておこう。……じゃ、行こうか! 城内へはもうすぐだ!」

 朽ちた外壁を通り過ぎると木々は少なくなり、森がどんどんと開けてきた。歩を進めるにつれ、木々の隙間からバルナバ城がチラリチラリと姿を見せ始める。



「おー、見えてきたぞ。もうすぐだ……」

「ええ、もう目の前ですね」

「よし! 全部見えた!!」

 小走りで先に行ったサーシャが言った。俺たちも後を追うと、ベテルデウスの居るバルナバ城が全貌を現した。燦々さんさんと太陽が輝く中、朽ち果てた黒い城は、この島の異物にしか見えない。

「おどろおどろしい城だな、ホント……アスドレクの時よりも邪悪な雰囲気が漂ってないか?」

「ええ……城の色が全体的に黒っぽいからでしょうね……何より、城の先端を覆っている暗雲が邪悪そのものです」

「それにしても……とうとう、ここが最後のステージなんだね。クリア出来たら、また村に戻れるのかな? 私たち」

「そりゃ、戻れるだろう。神父たちとも話したいし」

「そう? 俺はここで終了だと思ってた。クリア後のプレイヤーなんかが村に居たら、他のプレイヤーやりにくくない?」

「マ、マジかよ……それなら製錬工房のオッサンとか、神父さんとか、挨拶しとくべきだったな……」

「フフフ、ティシリィってそういう所、案外生真面目ですよね。どちらにしろ、どうなるかなんて今は分かりません。——それではティシリィ、城へ入る号令をお願いします」

 ナイリは笑顔でティシリィに促した。城へ入る号令も、これが最後の可能性だってある。いや、これを最後にして、俺たちは一番でクリアするんだ。

「あ、ああ……じゃ、城へ……ベテルデウスの城へ乗り込むぞ! みんな!!」

 俺たちは笑顔で「了解!」と叫び、大きな扉を開いた。
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