リアル無人島でRPG(ロールプレイングゲーム)! 参加費は150万円!? この島で最強の魔法使いに俺はなる! —RPG ISLAND—

靣音:Monet

文字の大きさ
上 下
28 / 49

LV-28:カイとティナ

しおりを挟む
 俺たちはしばし休憩を取った後、レストランに集まっていた。

 ヘルド・ガルーラの話を聞いたからだろう、全員が一様に暗い顔をしている。

「一旦、ヘルド・ガルーラの話は忘れて、私たちの事を整理しましょう。まず、ダブルドラゴンからのドロップアイテムが『ツイン・イヤリング』。攻撃でも魔法でも、時々ですが2回発動するようです。回復なんかは運に頼らない方がいいので、これはティシリィに着けてもらいましょう。あと、アスドレクからのドロップアイテムが『黒騎士の鎧』と『エクサウィンディスの書』ですね。鎧は……これもティシリィ、魔法の書はサーシャですね。かなり強くなりましたよ、私たち」

「エ、エクサウィンディス!! 私もとうとう、最強魔法を手に入れたのね!!」

「ツイン・イヤリングはなかなか面白いアクセサリーだな。あとは、神父がアップデートしてくれた地図か」

 新しい地図には、とうとう最後の城、バルナバ城が表示された。島全体が表示されていることから、これが最後の地図になると思われる。

 プラス、モルドーリアという村が追加されていた。カタルリーアから航路が延びているので、また船での移動になるのだろう。この新しい地図が、モルドーリアへのチケット代わりになるはずだ。

「また、この村から船が出るのね。明日には出発する?」

「そうだな、明日一番に出して貰えるよう、村の奴に言ってみよう。……じゃ、乾杯するか! 暗い顔していても仕方ないし!」

「そうですね! 私の奢りです、どんどん飲んでください!!」

 そう言ってナイリが店員を呼ぼうとした時、ヴァントスさんたちのパーティーがレストランに入ってきた。

「アスドレクに勝ったそうじゃないか。正直言って、ノーヒントでアイツに勝てたなんて凄いよアンタたち。アスドレクの秘密に気付いたのは誰だ? メガネのお嬢さんか?」

「……ヴァントスさん。私にはナイリという、立派な名前があります。以後、お見知りおきを。謎を解き明かしたのは、ここにいるインディ、魔法のスペシャリストです」

「ハハハ、そうか。俺たちも明日、朝イチで再戦してくる。今日の内に『希望の剣』も取ってきたしな。すぐに追いつくから、そのつもりで。とりあえず、おめでとう」

 そう言うと、ヴァントスさんたちは他のテーブルへと移動した。エクラウスさんも、俺たちに「おめでとう」と一言残していった。

「——なんだよ。急に良い奴アピールし出したな、ヴァントスの奴。エクラウスと一緒にパーティー入れてくれとか言うんじゃないだろうな」

「いや、今日のは素直に受け止めていいんじゃない?」

「そうそう、ティシリィは好戦的過ぎるの」

 サーシャはそう言って笑った。



 ビールが運ばれてきて、俺たちは乾杯をした。

「とりあえず、今日はアスドレク戦勝利、お疲れ様!! ……とうとう、ベテルデウスの尻尾が見えてきたな。ベテルデウスと対戦出来るのは、早くて明後日あさってくらいか。先頭にいるアタシたちでも2週間はかかるって計算だな。まあ、タイムリミットには充分間に合いそうだ」

「タイムリミットって、ちょうど一カ月だったよね。私、20日間しか有給取れ無かったから、このパーティー以外だと途中でリタイヤしてたかもしれないな」

「サーシャ、そういう現実的な話をすると、『エンディングが終わってからにしろ』ってティシリィが怒るよ」

「それはそうと……皆さん、そろそろ『イロエス』を定着させませんか……? すぐに、『このパーティー』だとか言い出すんだから……せっかく、イロエスという立派なパーティー名があるのに……」

 ナイリの目は少し据わっていた。ビールはまだ半分ほどしか減っていないにも関わらずだ。前回のように、口調が変わる寸前なのかもしれない。

「そっ、その通りだ、ナイリ! アタシたちのパーティーはイロエスだ。間違い無いぞ!」

 そう言ってティシリィはナイリをなだめた。酒を飲んでいる時は、ナイリが一番面倒なのは言うまでもないだろう。

「……そうそう、サポートセンターには文句を言っておいたぞ。全体攻撃の時も酷いことになってるから、調べ直せって」

「サポートセンターは何て?」

「『物語も後半なので多少はキツいかもしれません』とか言い出しやがった。開き直りやがったんだよ、アイツら。まあ……正直言うと慣れてきちゃってるとこあるんだよな、アタシ……」

「えっ、そうなの!? 私は絶対イヤなんだけど」

「確かに、多少の緊張感出るし、悪くないかなって俺も思い始めてる……」

「ええっ!? 本気で言ってるの、あなたたち!? 信じられない!!」

 本気で嫌がっているサーシャを見て、ティシリィは笑った。

「それはそうとさ、アスドレク戦のインディ、ナイスプレイだったけど……一歩間違えてたら死んでたぞ、アレ」

「そうそう! 私も思ったの! 他に試し方無かったの? って!」

「ハハハ……今思うと、正直焦ってたと思う。もっと落ち着かないとね」

 本当にその通りだった。少しでもHPが残ってくれていたのはラッキーだったと言わざるを得ない。ちなみに、残っていたHPは僅か2だったそうだ。

「まあ、勝てたのはナイリのお陰だよね。俺とティシリィの剣と、エクササンドスの二択に持っていったのは凄いと思ったよ。アスドレクも、剣の方を防御すれば即死は無かったと思うけど。ねえ、ナイリ。——ナイリ?」

 ナイリはジョッキ片手に、器用な姿勢で寝息を立てていた。


***


 レストランで解散後、俺はバーに来ていた。レストランを出る際、エクラウスさんに後で飲もうと誘われていたからだ。

「インディ待たせたな、すまんすまん」

「いえいえ、全然大丈夫ですよ。良かったです、またこうやってお話が出来て」

「俺もだよ。……すまなかったな、パーティーに出たり入ったり、ややこしいことをして」

 エクラウスさんはそう言うと、俺が聞いた事も無いお酒のロックを注文した。

「どうして、あのパーティーに入ったんです? エクラウスさんは」

「うーん……そのつもりは無かったんだよ。最初は全く新しいパーティーを組もうと思ってガッテラーレに行ったんだ。だが、ガッテラーレでは既に、殆どのパーティーが固定されていてな。余っていた……って言い方は悪いが、カイとティナっていう男女2人のパーティーがいたんだ。ほら、インディも今日会っただろう」

 カイとティナは、今朝初めて見た男女の事だ。今は、エクラウスさんと共に、ヴァントスさんのパーティーに入っている。

 エクラウスさんは最初、カイとティナの三人でパーティーを組んだという。カイとティナは新婚さんで、新婚旅行代わりにこのアトラクションに参加したそうだ。運が良いことに、彼らも虹色のスライムに出会ったことで、スムーズにここまで進めたらしい。

「でも、この三人じゃ厳しいだろうから、新しいメンバーがガッテラーレに来るのを待っていたんだよ。僧侶二人に魔法使い一人っていう、いびつなパーティーだったしな。そこに戻ってきたのがヴァントスたちだったんだ」

 ヴァントスさんは、カイとティナの二人に声を掛けたという。彼らに好条件を出し、エクラウスさんを含めた三人で入ってくれないか? と。

「彼らは新婚で金も無かったしな。ヴァントスが出した条件は魅力的だったんだろう。そこで彼らに頼まれて、ヴァントスのパーティーに入る事になったんだ。
——まあ、これを逃すと次にパーティーを組むのは難しいかも、っていうのも正直あったんだが」

「——じゃあ、エクラウスさんが俺たちのパーティーに戻ってくるのは、難しいって事ですよね……」

「インディがよくても、ティシリィがダメと言うだろう」

「いえ……実はティシリィも、エクラウスさんと一緒に旅を続けたかったようなんです。エクラウスさんを追いかけようとしたナイリを引き留めた事を、後悔しているようでした」

 エクラウスさんは驚いた顔で俺を見た。

「そうか……だが、今となってはカイとティナに頼りにされているしな……彼らもいい子たちなんだ。……誘ってくれた事は、本当に嬉しいよ。インディ、ありがとう」

 今のヴァントスさんのパーティーなら、俺が思っていたほどエクラウスさんは居心地が悪くないのかもしれない。俺はそれだけで、心が少し軽くなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

そして俺は召喚士に

ふぃる
ファンタジー
新生活で待ち受けていたものは、ファンタジーだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...