リアル無人島でRPG(ロールプレイングゲーム)! 参加費は150万円!? この島で最強の魔法使いに俺はなる! —RPG ISLAND—

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LV-23:ツインスネイクス

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 休憩を終えると、俺たちは再びアスドレクの居場所を探し求めた。

 結界を解除した途端にモンスターが現れ、俺たちは一瞬で戦いの世界に引き戻される。それにしても、アスドレクは一体どこに居るのだろう? 2階も殆ど見て回ったが、それらしき場所はまだ見つかっていない。

「……チッ、こっちも行き止まりかよ。って事は、2階には何も無いって事か?」

「ん? ティシリィ……? 行き止まりの少し手前、あれは扉じゃありませんか?」

「ホントだな……あんな所に隠れてやがったか」

 一度は引き返そうとした通路の、一番奥まで俺たちは進んだ。目の前に現れたのは、大きな白い扉だった。

 ドアの前に立つと、サーシャが胸に手を当て一呼吸ついた。

「どうした、サーシャ」

「私、バーン! とか、ドアが急に閉まったりするのが苦手で……今から心の準備をしておこうかと」

「ハハッ、そんな事か。大丈夫、アタシがサーシャの後ろから入ってやる。安心しろ」

 多分、ティシリィは自然とこんな事が言える人なんだと思う。俺もこういう事をサラッと言えたなら。

 それはさておき、この部屋にいるのはアスドレクなのだろうか? それとも他のモンスターなのだろうか?

「では、私が扉を開けます。心の準備はいいですか?」

 俺たちは無言で頷いた。

 ガチャ……バンッ!

 ドアを開けたと思ったら、次の瞬間にはドアを閉じた。ナイリのその動きは、まるで某格付け番組の司会者のようだった。

「ど、どうした、ナイリ!?」

「この部屋からすごい冷気が……」

「れ、霊気!? ナイリ……とうとう、そんなものまで見えるようになったのか……」

「幽霊の霊じゃ無くて、冷たい気の冷気です。ティシリィ、冗談もほどほどにしてください……でも、入る前に分かって良かった。少し対策を練りましょうか」

 部屋を少し開けただけで、これほどの冷気を感じるという事は、氷属性の敵だろうとナイリは言った。

「なるほど……じゃ、ナイリの炎の剣にアンプラッシュを掛けるのはどうかしら?」

「いいですね、サーシャ。採用です」

 当初はティシリィだけにアンプラッシュを掛ける予定だったが、炎の剣を持っているナイリにも掛ける事にした。先にティシリィ、次にナイリという順だ。

「インディの炎魔法は、まだファイラスが最上位だったよな?」

「そうだね……メテオレインなどは効果が薄そうだし、どうしたものだろう」

「インディ、私の『αの書』を貸しましょう。ダブルドラゴンのように攻撃対象が複数の場合は、ファイラスでも効果はあると思います」

「ありがとう、助かるよ。本当にやばくなった時はデディケートソウルを使おうと思う。その時は、ナイリかサーシャ、宜しく頼む」

「ま、まあ、それを使うのは最後の手段だ。極力使わない方向でいこう」

 デディケートソウルは、自分のHPをエネルギーに変えて放出する魔法だ。放ち終わった後、HPはわずか1しか残らない。回復が一瞬でも遅れると、それは死を意味する。

「では、次こそ入りますよ。心の準備はいいですか……?」

「ナイリ、一言だけいいか。——幽霊の霊気だと思ったのは本当だ。冗談じゃない」

「フフッ。分かりました。では……行きますよ!!」

 ナイリ、俺、サーシャ、ティシリィの順に部屋に入ると、お約束通りドアは大きな音を立てて閉まった。サーシャは……大丈夫、いい顔をしている。

 天井が高いこの部屋の中は、壁という壁が氷で覆われていた。部屋中にもの凄い冷気が漂っている。吐く息が白い。

「おい、モンスター! どこから出てくるんだ! 勿体ぶるんじゃねえ!!」

 ティシリィの台詞が引き金になったのか、バキバキと大きな音を立てながら、巨大な氷柱が出現した。次の瞬間、氷柱は木っ端みじんに粉砕し、中から巨大な蛇が二匹も現れた。表皮が氷の層に覆われたこの巨大な蛇は、ツインスネイクスという名前だった。

「変温動物のクセに凍ってたのかよ! 赤い目の奴から狙うぞ!」

 ティシリィはいつものように、言い終わらない内から斬りかかっていた。『幸運のブレスレット』のお陰だろうか、今日何度目かのCHクリティカルヒットが表示されていた。

 同じように見えた二匹の違いは、赤い目と青い目のようだ。瞬時に判断をし、攻撃を仕掛けるティシリィは凄いとしか言いようが無かった。

 その間にも、サーシャはティシリィにアンプラッシュを掛け、俺はファイラスαを放った。ツインスネイクスを覆っていた氷の層が、少しだけ薄くなったように見える。

「くっ、来るぞ!」

 赤い目のツインスネイクスは鎌首を持ち上げたかと思うと、大口を開けて俺たちに息を吐きかけた。強烈な冷気と共に、いつものダメージが体に走る。HPは大きく削られたが、ナイリが即座に回復させる。サーシャがアンプラッシュを唱え終わるまでは、回復役を担うつもりだろう。

 だが、回復した途端、青い目のツインスネイクスも同様の攻撃を仕掛けてきた。若干だが、青い目のツインスネイクスの方が攻撃力が高いようだ。回復はナイリたちに任せ、俺は2度目のファイラスαを放った。氷の層を溶かすには、あと何発のファイラスを叩き込めばいいのだろう。

「ナイリ、アンプラッシュ終わった! 回復は私に任せて攻撃に回って!!」

「分かりました、サーシャ!」

 そう言うと、「おおおーーー!」と雄叫びを上げて、ナイリは赤い目のツインスネイクスに斬りかかった。剣のエフェクトが無い分、ティシリィほどの派手さは無いが、その姿はとても美しかった。

「ティシリィ!! 氷の層の一部が欠けました! そこを狙って!!」

「ああ、気付いてたよ! 任せておけ!!」

 アンプラッシュで攻撃力が上がっているティシリィの一撃は、氷の層を大きく粉砕した。赤い目のツインスネイクスは、大きくふらつきながらも二度目の冷気を放ってきた。続けて、青い目のツインスネイクスも冷気を放つ。

 殆ど同時に二体の全体攻撃を受けた俺たちは、大きくHPを減らした。特に、前に立っていたナイリは二桁にまでHPが落ち込んだ。

「ブレスリカバリー!」

 即座にサーシャがナイリにブレスリカバリーを放ち、ナイリは全回復する。そして、俺が三度目のファイラスαを放った時、ナイリは赤い目のツインスネイクスに飛びかかっていた。

 炎の剣は氷の層が無くなった箇所にピンポイントで吸い込まれていき、ツインスネイクスの体を激しく切り裂いた。

グエエエエッ……!!

 赤い目のツインスネイクスは、斬られた箇所からおびただしい量の血を吹き出し、大きな振動と共に倒れ込んだ。

「あ……あと一体っ!!」

 ティシリィのその声に反応したかのように、青い目のツインスネイクスが大きな雄叫びを上げた。仲間がやられた怒りと悲しみを吐き出しているのだろうか。青い目のツインスネイクスが閉じていた瞳を開けたとき、その瞳は黄金こがね色に変わっていた。

「なんかやばそうだなコイツ……もしかして倒す順番があったりしたのか……?」

「そんな事は後です! 行きますよ、ティシリィ!」

 二人は同時に、ツインスネイクスに飛びかかっていく。俺は単体向けに変えたファイラスを放ち、サーシャは全員をくまなく回復させていた。

 ツインスネイクスのHPも、少しずつは減らしている。だが、さっきのように氷の層に傷を付ける事は出来なくなっていた。そうしている間にも強烈な冷気を吐き出され、サーシャだけでなくナイリも回復役に回った。

「ナイリ! ファイラスで確実に氷の層は薄くなってる! 多分、あと2、3回ほど放てば氷の層は水になる! そのタイミングで……」

「分かった、エクササンドスですね!!」

「そうだ! それまでは回復を頼む! ファイラス!!」

 雷系の魔法は水属性に対して強いのが常識だ。しかも、俺たちのパーティーで一番攻撃力のあるエクササンドスなら、大ダメージを与える事が出来るに違いない。ティシリィもエクササンドスに賭けたのか、冷気を吐き出すタイミングで、HPが低い者の前に立って自ら盾代わりとなった。

「インディ! まだ溶けないっ!? そろそろMPが底をつく!!」

 サーシャの回復魔法が使えなくなると、回復量が著しく少ない回復薬を使わなくてはいけない。残念ながら、戦闘中にMP回復カプセルは使えないのだ。ナイリもMP消費量が激しいエクササンドスの分は残しておかなくてはならない。

「わ、分かってる!! 頼む、溶けてくれっ!! ファイラスっ!!」

 希望の剣から放たれたファイラスは、いつものファイラスとは違った。俺が初めて放つ、魔法クリティカルだった。

 放たれた炎はいつもより大きく、強烈な勢いで剣から放たれた。ツインスネイクスの頭部に直撃した炎は、そのまま尻尾までグルグルと炎の弧を描き、表皮の氷を全て溶かした。

「今だ、ナイリっ!!」

「はいっ! くたばれっ、エクササンドスっ!!」

 氷一面だったこの部屋に暗雲が立ちこめ、その暗雲を見上げたツインスネイクスに強烈な雷撃が落ちた。そして、ツインスネイクスは見上げたままの姿勢で、激しい音を立て、床に崩れ落ちた。

「か、勝ったね……インディ、ナイリ、凄かったよ、どっちも」

「確かに……インディのあんな大きな声聞いたの初めてだ。ちょっと感動したぞ」

 ティシリィは、俺の鎧を拳でコンコンと小突いた。

「い、いや……今回はナイリのお陰だよ。剣に、回復魔法に、攻撃魔法。まさに賢者だった……」

 炎の剣を鞘に収めたナイリは、満面の笑みを浮かべていた。
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