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LV-20:3つの城
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カタルリーアへは、ヘルゴーレムのような強敵に会う事も無く、無事帰り着く事が出来た。そこそこ強い敵を倒してきた事と、『雨の恵』のおかげもあり、サーシャも良い感じにレベルが上がってきたようだ。
「夕食の前に、神父に3つの城の事でも聞いてみるか。早く行かないと、教会閉まっちゃうだろ」
「いや、話し聞く前にティシリィの蘇生しなくっちゃ。死んでたの忘れてるんじゃ無い?」
カタルリーアへ帰る途中も、モンスターが現れる度にティシリィは剣を抜いた。その都度、端末からは『ティシリィ戦闘不可』のアラートが鳴り、俺たちは笑ってバトルにならなかったくらいだ。
「ほんと、剣を抜かなかったのって、最後のバトルだけだよね!? ティシリィったら、好戦的で笑いが止まらなかったんだから!!」
笑いがおさまらないサーシャを置いて、ティシリィはズンズンと教会の方へ歩いて行った。
「ようこそいらっしゃいました、旅の者。ご用は……ああ、ティシリィさんとやら、命を落とされましたか」
「そうだ……指を向けられたと思ったら死んでた。あんなの防ぎようないっての」
「その手の魔法を使う魔物は限られています。あなたたちなら、いつか回避できる日が来ることでしょう。それでは、蘇生されますか? その場合、ティシリィさんからのお布施で宜しいですか? それとも、全員分から均等に致しましょうか?」
「もちろん、均等割でお願い致します、神父様」
「分かりました、ナイリさん。それではティシリィさん、こちらへ」
神父が指示した場所にティシリィが立つと、神父はティシリィの頭上に手をかざした。教会の天井から光りが降り注ぎ、全員の端末にティシリィが蘇生した通知が届いた。
「用件は以上になりますか?」
「神父様、この武器とアクセサリーを見て貰えますか。明らかに呪われていると思うのですが、呪いを解いて貰う事は出来るのでしょうか」
「どれどれ……ああ、もちろん可能ですよ。お布施が必要ですが、構いませんか?」
俺の質問に神父はそう答えた。「チッ、何でも金かよ」と言うティシリィに、ナイリは「静かになさい!」と珍しく怒った。
神父はまず、アクセサリーを手に取った。ブレスレットと指輪が一つずつ。それぞれ、『幸運のブレスレット』と『祝福の指輪』というアイテムに浄化された。
「次は剣ですね……ほう。元々は大層、立派な剣だったことでしょう。今は『怨霊の剣』ですか……多くの死者の悲しみが、この剣から聞こえてくるようです。それでは……」
神父が剣の上を手のひらで滑らせていくと、黒ずんでいた剣にみるみる光りが帯び始めた。ティシリィが持っている、光りの剣と同じくらいか……? いやそれ以上の光りを帯びているようにも見える。
「さて……無事浄化できたようです。この剣の怨霊は全て取り拭う事が出来ました。残ったのは、生き延びたいと願った人々の想いです。これには、『希望の剣』と名付けましょう。インディさん、魔法使いのあなたが使うといいでしょう」
「お、俺がですか!? あ、ありがとうございます!!」
俺は一歩前に出て、その剣を受け取った。他の剣同様、重量は軽いが、質感、光沢、デザイン、どれもが持つ者を満足させる剣だった。羨ましいという気持ちを隠さない、ティシリィとサーシャの視線が痛かった。
「……これで、神父様にお願いする事は以上ですね?」
ナイリは俺たちを見回し、確認した後、続けた。
「今日、私たちはビトルノの村へ行って参りました。そこでまた、謎にぶつかりました。この島には、ランベルト城、エドアルド城、バルナバ城があるという事ですよね? ランベルト城は私たちが一度訪れたお城。アスドレクが居る城は、エドアルド城。この認識で合っていますか?」
「ああ……そこまであなたたちは調べてきましたか。確かに、この村から遠くに見える城は、エドアルド城。今はアスドレクがいる城です」
「やはり……では、バルナバ城っていうのは、ベテルデウスがいる城で合っていますか?」
「あなたたちは、賢い……それも、その通りです」
「じゃ、じゃあ、もう教えてくれるのか!? その城には誰が住んでいたとか、他の事も!?」
「いえ、それはまだ教えられません……朝方も言いましたが、アスドレクを倒せないようでは、ベテルデウスに敵うわけはありませんから。——私たちも、数少なくなった教会を、今無くしてしまう訳にはいかないのです」
「分かりました。もう一点だけ。ビトルノの村には結界の石がありませんでした。結界を破壊出来るモンスターがいると考えていいのでしょうか?」
「申し訳ありませんが、それも今は。……私が今言えないことは、全て一つに繋がります。今はアスドレクを……アスドレクを倒すことだけに専念してください」
俺たちは一度宿に戻り、着替えなどを済ませた後レストランに集合していた。
「対アスドレクに強化出来たのって、インディの『希望の剣』だけか」
「いや、『幸運のブレスレット』もかなり良いアイテムだよ。クリティカルヒットの出る確率が上がるらしい。これはティシリィに持って貰おう。一度しか見てない、SCHがまた見られるかもしれない」
俺がそう言うと、ティシリィは慌てて俺の手からブレスレットを取り上げた。どういう効力があるのか、今知ったようだ。ブレスレットを嬉しそうに眺めるティシリィは、時々見せる子供のような笑顔をしていた。
「では、『祝福の指輪』はサーシャに持って頂きましょうか。これは回復魔法の回復率が上がるアクセサリーのようです」
「い、いいの、ナイリ? ナイリだけ今回は何も無いけど」
サーシャが言うと、ナイリは「もちろん」と笑顔で答えた。ナイリは日を追う毎に、聖人に近づいているようだ。
「明日はアスドレク戦でいいよな? サーシャもアタシたちの戦い方にすっかり馴染んだし、全く問題無さそうだ」
「ありがとう、ティシリィ。とうとう中ボス戦って事だね……今までの強敵って、ヴァントスさんが攻略法を知ってたから、あまり緊張感無かったの。今朝のヘルゴーレムとか、ビトルノのデスアグリゲイトとの戦いはホント必死だった……そして、興奮した。明日の敵は、今までで一番手強いんだろうな……」
サーシャは心底、このパーティーに入る事が出来たのを喜んでくれているようだ。そう言ってもらえて俺たちも嬉しい。ただ、出来ればエクラウスさんも一緒に旅をしたかったと、俺は今も思っている。
「早ければ明朝にはヴァントスたち、追いついてくるかな? アタシは勝ちたい。絶対に一番でクリアしたい」
「ヴァントスさんの事だから、ビトルノの村経由で、直接アスドレクが居る城まで行くことも考えられるわね……」
サーシャは腕を組んでそう言った。
「でも、『希望の剣』を使うには、一度カタルリーアに戻って呪いを解いて貰わないといけない。それならビトルノに寄る必要は無いよね?」
「インディの言う通りだな。アスドレクを倒すのに、『希望の剣』が必要なければ、ビトルノの村に寄らなくても問題ないだろう。——そうなると、ヴァントスとアタシたちは同じタイミングでエドアルド城に向かうことになる」
「みなさん、考えすぎですよ。ヴァントスさんたちが明朝到着するかどうか、ビトルノの村をスルーするかどうかなんて分かりませんもの。私たちは、私たちのベストを尽くしましょう」
ナイリが言うと、ティシリィは「その通りだな」と笑った。
振り返れば、今日はサーシャがパーティーに入った初日だった。不思議と、もう何日も一緒に戦った仲間のような気がする。
それより、明日はアスドレク戦だ。
今までで、一番厳しい戦いになる事は間違い無い。どんな姿をしていて、どんな攻撃をしてくるのだろう? 何一つ思い浮かばない内に、俺は眠りに落ちていた。
「夕食の前に、神父に3つの城の事でも聞いてみるか。早く行かないと、教会閉まっちゃうだろ」
「いや、話し聞く前にティシリィの蘇生しなくっちゃ。死んでたの忘れてるんじゃ無い?」
カタルリーアへ帰る途中も、モンスターが現れる度にティシリィは剣を抜いた。その都度、端末からは『ティシリィ戦闘不可』のアラートが鳴り、俺たちは笑ってバトルにならなかったくらいだ。
「ほんと、剣を抜かなかったのって、最後のバトルだけだよね!? ティシリィったら、好戦的で笑いが止まらなかったんだから!!」
笑いがおさまらないサーシャを置いて、ティシリィはズンズンと教会の方へ歩いて行った。
「ようこそいらっしゃいました、旅の者。ご用は……ああ、ティシリィさんとやら、命を落とされましたか」
「そうだ……指を向けられたと思ったら死んでた。あんなの防ぎようないっての」
「その手の魔法を使う魔物は限られています。あなたたちなら、いつか回避できる日が来ることでしょう。それでは、蘇生されますか? その場合、ティシリィさんからのお布施で宜しいですか? それとも、全員分から均等に致しましょうか?」
「もちろん、均等割でお願い致します、神父様」
「分かりました、ナイリさん。それではティシリィさん、こちらへ」
神父が指示した場所にティシリィが立つと、神父はティシリィの頭上に手をかざした。教会の天井から光りが降り注ぎ、全員の端末にティシリィが蘇生した通知が届いた。
「用件は以上になりますか?」
「神父様、この武器とアクセサリーを見て貰えますか。明らかに呪われていると思うのですが、呪いを解いて貰う事は出来るのでしょうか」
「どれどれ……ああ、もちろん可能ですよ。お布施が必要ですが、構いませんか?」
俺の質問に神父はそう答えた。「チッ、何でも金かよ」と言うティシリィに、ナイリは「静かになさい!」と珍しく怒った。
神父はまず、アクセサリーを手に取った。ブレスレットと指輪が一つずつ。それぞれ、『幸運のブレスレット』と『祝福の指輪』というアイテムに浄化された。
「次は剣ですね……ほう。元々は大層、立派な剣だったことでしょう。今は『怨霊の剣』ですか……多くの死者の悲しみが、この剣から聞こえてくるようです。それでは……」
神父が剣の上を手のひらで滑らせていくと、黒ずんでいた剣にみるみる光りが帯び始めた。ティシリィが持っている、光りの剣と同じくらいか……? いやそれ以上の光りを帯びているようにも見える。
「さて……無事浄化できたようです。この剣の怨霊は全て取り拭う事が出来ました。残ったのは、生き延びたいと願った人々の想いです。これには、『希望の剣』と名付けましょう。インディさん、魔法使いのあなたが使うといいでしょう」
「お、俺がですか!? あ、ありがとうございます!!」
俺は一歩前に出て、その剣を受け取った。他の剣同様、重量は軽いが、質感、光沢、デザイン、どれもが持つ者を満足させる剣だった。羨ましいという気持ちを隠さない、ティシリィとサーシャの視線が痛かった。
「……これで、神父様にお願いする事は以上ですね?」
ナイリは俺たちを見回し、確認した後、続けた。
「今日、私たちはビトルノの村へ行って参りました。そこでまた、謎にぶつかりました。この島には、ランベルト城、エドアルド城、バルナバ城があるという事ですよね? ランベルト城は私たちが一度訪れたお城。アスドレクが居る城は、エドアルド城。この認識で合っていますか?」
「ああ……そこまであなたたちは調べてきましたか。確かに、この村から遠くに見える城は、エドアルド城。今はアスドレクがいる城です」
「やはり……では、バルナバ城っていうのは、ベテルデウスがいる城で合っていますか?」
「あなたたちは、賢い……それも、その通りです」
「じゃ、じゃあ、もう教えてくれるのか!? その城には誰が住んでいたとか、他の事も!?」
「いえ、それはまだ教えられません……朝方も言いましたが、アスドレクを倒せないようでは、ベテルデウスに敵うわけはありませんから。——私たちも、数少なくなった教会を、今無くしてしまう訳にはいかないのです」
「分かりました。もう一点だけ。ビトルノの村には結界の石がありませんでした。結界を破壊出来るモンスターがいると考えていいのでしょうか?」
「申し訳ありませんが、それも今は。……私が今言えないことは、全て一つに繋がります。今はアスドレクを……アスドレクを倒すことだけに専念してください」
俺たちは一度宿に戻り、着替えなどを済ませた後レストランに集合していた。
「対アスドレクに強化出来たのって、インディの『希望の剣』だけか」
「いや、『幸運のブレスレット』もかなり良いアイテムだよ。クリティカルヒットの出る確率が上がるらしい。これはティシリィに持って貰おう。一度しか見てない、SCHがまた見られるかもしれない」
俺がそう言うと、ティシリィは慌てて俺の手からブレスレットを取り上げた。どういう効力があるのか、今知ったようだ。ブレスレットを嬉しそうに眺めるティシリィは、時々見せる子供のような笑顔をしていた。
「では、『祝福の指輪』はサーシャに持って頂きましょうか。これは回復魔法の回復率が上がるアクセサリーのようです」
「い、いいの、ナイリ? ナイリだけ今回は何も無いけど」
サーシャが言うと、ナイリは「もちろん」と笑顔で答えた。ナイリは日を追う毎に、聖人に近づいているようだ。
「明日はアスドレク戦でいいよな? サーシャもアタシたちの戦い方にすっかり馴染んだし、全く問題無さそうだ」
「ありがとう、ティシリィ。とうとう中ボス戦って事だね……今までの強敵って、ヴァントスさんが攻略法を知ってたから、あまり緊張感無かったの。今朝のヘルゴーレムとか、ビトルノのデスアグリゲイトとの戦いはホント必死だった……そして、興奮した。明日の敵は、今までで一番手強いんだろうな……」
サーシャは心底、このパーティーに入る事が出来たのを喜んでくれているようだ。そう言ってもらえて俺たちも嬉しい。ただ、出来ればエクラウスさんも一緒に旅をしたかったと、俺は今も思っている。
「早ければ明朝にはヴァントスたち、追いついてくるかな? アタシは勝ちたい。絶対に一番でクリアしたい」
「ヴァントスさんの事だから、ビトルノの村経由で、直接アスドレクが居る城まで行くことも考えられるわね……」
サーシャは腕を組んでそう言った。
「でも、『希望の剣』を使うには、一度カタルリーアに戻って呪いを解いて貰わないといけない。それならビトルノに寄る必要は無いよね?」
「インディの言う通りだな。アスドレクを倒すのに、『希望の剣』が必要なければ、ビトルノの村に寄らなくても問題ないだろう。——そうなると、ヴァントスとアタシたちは同じタイミングでエドアルド城に向かうことになる」
「みなさん、考えすぎですよ。ヴァントスさんたちが明朝到着するかどうか、ビトルノの村をスルーするかどうかなんて分かりませんもの。私たちは、私たちのベストを尽くしましょう」
ナイリが言うと、ティシリィは「その通りだな」と笑った。
振り返れば、今日はサーシャがパーティーに入った初日だった。不思議と、もう何日も一緒に戦った仲間のような気がする。
それより、明日はアスドレク戦だ。
今までで、一番厳しい戦いになる事は間違い無い。どんな姿をしていて、どんな攻撃をしてくるのだろう? 何一つ思い浮かばない内に、俺は眠りに落ちていた。
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