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LV-09:エクラウスの友人
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俺たちはガッテラーレに戻り、レストランで夕食を取っていた。
「いやー、長い一日だったの。今日だけでかなりレベルが上がったわ。明日はナイリが『雨の恵』を着ければいい。時々渡し合って、均等にレベルが上がるようにしようじゃないか」
「い、いんですか、エクラウスさん! ありがとうございます、私本当にこのパーティーに入る事が出来てよかったです……あっ! まだ確定じゃなかったですね、このパーティー……」
ナイリは気まずいことを言ったと思ったのか、カチャカチャと忙しなくナイフとフォークを走らせた。
「いや……正式にこの四人でやっていかないか? テセラの塔も攻略して、ベテルデウスを皆で倒そうじゃないか。ちょうど今日、インディともそんな話をしてたんだ。ただ、アタシたちのパーティーに入るなら、目指すは一番だぞ。なあ、インディ」
「そうそう。やろうよ、この四人で」
エクラウスさんとナイリは顔を合わせると、手を取り合って喜んでくれた。どうしてだろう、俺は少し目頭が熱くなった。
「よし、今日はワシに一杯奢らせてくれ! 皆、ビールは飲めるかの? 乾杯しようじゃないか!」
エクラウスさんは店員を呼んで、全員分のビールを注文した。
その時、レストランに四人組のパーティーが入ってきた。ロクサスたちだ。もう、追いついたのか……思っていたより早かった。
「ロクサスとグラウ、そしてサーシャですね。あと一人は……誰でしょうか……」
サーシャはロクサスたちのトロールミッションには参加していなかったが、ヴァランナでは何度か見かけた顔だった。
「おおっ! 山岡じゃないか! 俺だよ、俺。なんで参加してる事教えてくれなかったんだよ!」
ナイリも知らないと言っていた男性が、エクラウスさんの元までやってきた。歳はエクラウスさんと同じくらいだろうか。
「ここじゃ、その名前で呼ぶのはやめろ。俺はエクラウスだ。お前は何て名前なんだ」
「固いこと言うなよ、俺の名前はヴァントスだよ、ヴァントス。それより、レベルは幾つになった? 職業は?」
明らかに迷惑そうな表情のエクラウスさんにも構わず、ヴァントスという老人はエクラウスさんの隣の席に腰を掛けた。
「ちょっと、ヴァントスさん……? 皆この世界では、ここの住人として生きてるんだ。エクラウスも困ってるだろ? アタシたちは今から乾杯するんだよ、ちょっと遠慮してくれないかな?」
孫の歳くらいのティシリィに啖呵を切られたからか、ヴァントスさんの顔が引きつった。
「な、なんだよいきなり。……分かったよ、じゃ、エ……エス……」
「エクラウスだ」
「エクラウス、後でバーで飲もうじゃないか。じゃあな」
ヴァントスさんはそう言い残して、ロクサスたちの元へと戻っていった。
「すまないな……悪い奴じゃ無いんだけど、あんな風に空気が読めない奴なんだよ。だから、奴が参加するのを知っておきながら、俺が参加する事は黙ってたんだ。申し訳ない……」
そう言ってエクラウスさんは頭を下げた。
「何言ってんだよ。エクラウスは何も悪くない。ほら、乾杯の音頭取ってくれ、いつものジジイ語で!」
「そ、そうじゃの。みな、乾杯じゃ!」
俺たちは笑顔でジョッキをぶつけ合った。
ヴァントスさんは、昨日の第3便で入ってきたようだ。エクラウスさんとは社長同士が集まる会合で知り合い、20年以上の付き合いがあるという。趣味には惜しみなくお金をつぎ込むタイプという事だ。
それにしても、2日目にしてガッテラーレに来られるなんて、よっぽど金を使った事だろう。4人組のパーティーを組んでいるのは、ヴァランナでロクサスに声を掛けられたに違いない。
「ロクサスもインディと同じように虹色のスライムを倒してるから、レベルはそこそこ高いはずだ。グラウとサーシャはたいしたことないと思うけど、ヴァントスって金づるは厄介だな」
「ま、まあワシも金を武器にやってきたから、そう言われるのは辛いがの。ただ、ワシの自慢は一度も死んでないことじゃ。確か、ナイリもそうだったの?」
ナイリはジョッキ片手に、コクコクと頷いている。俺とティシリィも含め、全員が死亡知らずか。どうかこのまま死なずにクリアしたいものだ。
「まあ、ロクサスたちの事もプラスに捉えようよ。一番を目指すからには、ライバルの登場も必要だよ。どっちが先にクリア出来るか勝負だね」
「おお、インディは良いことを言うのう。お主は人の良さが顔に出ておる。だから初めて会った時に声を掛けたんじゃ」
その時、ドンッという大きな音を立てて、ビールジョッキがテーブルに叩きつけられた。
「甘っちょろい事言ってるんじゃないよ。ライバル!? 私たちにライバルなんていない。テセラの塔を攻略して、ベテルデウスを成敗出来るのは……勇者がいるイロエスだけなんだから!」
そう言うと、ナイリは叩きつけたジョッキのビールを飲み干した。
「……エ、エクラウスさん、ナイリはビール何杯目ですか?」
俺の質問に、エクラウスさんは指を一本立ててくれた。ナイリは酒に弱い上に、酒癖が悪いらしい。
って言うか、勇者がいるイロエス?
一体何のことだ……
「いやー、長い一日だったの。今日だけでかなりレベルが上がったわ。明日はナイリが『雨の恵』を着ければいい。時々渡し合って、均等にレベルが上がるようにしようじゃないか」
「い、いんですか、エクラウスさん! ありがとうございます、私本当にこのパーティーに入る事が出来てよかったです……あっ! まだ確定じゃなかったですね、このパーティー……」
ナイリは気まずいことを言ったと思ったのか、カチャカチャと忙しなくナイフとフォークを走らせた。
「いや……正式にこの四人でやっていかないか? テセラの塔も攻略して、ベテルデウスを皆で倒そうじゃないか。ちょうど今日、インディともそんな話をしてたんだ。ただ、アタシたちのパーティーに入るなら、目指すは一番だぞ。なあ、インディ」
「そうそう。やろうよ、この四人で」
エクラウスさんとナイリは顔を合わせると、手を取り合って喜んでくれた。どうしてだろう、俺は少し目頭が熱くなった。
「よし、今日はワシに一杯奢らせてくれ! 皆、ビールは飲めるかの? 乾杯しようじゃないか!」
エクラウスさんは店員を呼んで、全員分のビールを注文した。
その時、レストランに四人組のパーティーが入ってきた。ロクサスたちだ。もう、追いついたのか……思っていたより早かった。
「ロクサスとグラウ、そしてサーシャですね。あと一人は……誰でしょうか……」
サーシャはロクサスたちのトロールミッションには参加していなかったが、ヴァランナでは何度か見かけた顔だった。
「おおっ! 山岡じゃないか! 俺だよ、俺。なんで参加してる事教えてくれなかったんだよ!」
ナイリも知らないと言っていた男性が、エクラウスさんの元までやってきた。歳はエクラウスさんと同じくらいだろうか。
「ここじゃ、その名前で呼ぶのはやめろ。俺はエクラウスだ。お前は何て名前なんだ」
「固いこと言うなよ、俺の名前はヴァントスだよ、ヴァントス。それより、レベルは幾つになった? 職業は?」
明らかに迷惑そうな表情のエクラウスさんにも構わず、ヴァントスという老人はエクラウスさんの隣の席に腰を掛けた。
「ちょっと、ヴァントスさん……? 皆この世界では、ここの住人として生きてるんだ。エクラウスも困ってるだろ? アタシたちは今から乾杯するんだよ、ちょっと遠慮してくれないかな?」
孫の歳くらいのティシリィに啖呵を切られたからか、ヴァントスさんの顔が引きつった。
「な、なんだよいきなり。……分かったよ、じゃ、エ……エス……」
「エクラウスだ」
「エクラウス、後でバーで飲もうじゃないか。じゃあな」
ヴァントスさんはそう言い残して、ロクサスたちの元へと戻っていった。
「すまないな……悪い奴じゃ無いんだけど、あんな風に空気が読めない奴なんだよ。だから、奴が参加するのを知っておきながら、俺が参加する事は黙ってたんだ。申し訳ない……」
そう言ってエクラウスさんは頭を下げた。
「何言ってんだよ。エクラウスは何も悪くない。ほら、乾杯の音頭取ってくれ、いつものジジイ語で!」
「そ、そうじゃの。みな、乾杯じゃ!」
俺たちは笑顔でジョッキをぶつけ合った。
ヴァントスさんは、昨日の第3便で入ってきたようだ。エクラウスさんとは社長同士が集まる会合で知り合い、20年以上の付き合いがあるという。趣味には惜しみなくお金をつぎ込むタイプという事だ。
それにしても、2日目にしてガッテラーレに来られるなんて、よっぽど金を使った事だろう。4人組のパーティーを組んでいるのは、ヴァランナでロクサスに声を掛けられたに違いない。
「ロクサスもインディと同じように虹色のスライムを倒してるから、レベルはそこそこ高いはずだ。グラウとサーシャはたいしたことないと思うけど、ヴァントスって金づるは厄介だな」
「ま、まあワシも金を武器にやってきたから、そう言われるのは辛いがの。ただ、ワシの自慢は一度も死んでないことじゃ。確か、ナイリもそうだったの?」
ナイリはジョッキ片手に、コクコクと頷いている。俺とティシリィも含め、全員が死亡知らずか。どうかこのまま死なずにクリアしたいものだ。
「まあ、ロクサスたちの事もプラスに捉えようよ。一番を目指すからには、ライバルの登場も必要だよ。どっちが先にクリア出来るか勝負だね」
「おお、インディは良いことを言うのう。お主は人の良さが顔に出ておる。だから初めて会った時に声を掛けたんじゃ」
その時、ドンッという大きな音を立てて、ビールジョッキがテーブルに叩きつけられた。
「甘っちょろい事言ってるんじゃないよ。ライバル!? 私たちにライバルなんていない。テセラの塔を攻略して、ベテルデウスを成敗出来るのは……勇者がいるイロエスだけなんだから!」
そう言うと、ナイリは叩きつけたジョッキのビールを飲み干した。
「……エ、エクラウスさん、ナイリはビール何杯目ですか?」
俺の質問に、エクラウスさんは指を一本立ててくれた。ナイリは酒に弱い上に、酒癖が悪いらしい。
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