リアル無人島でRPG(ロールプレイングゲーム)! 参加費は150万円!? この島で最強の魔法使いに俺はなる! —RPG ISLAND—

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LV-07:いざ、ガッテラーレへ

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 昨日とは打って変わって、快晴となった。

 草原に残っている雫のせいだろうか、フィールドもキラキラして見える。確か、第3便のプレイヤーは今日到着のはずだ。

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◆インディ(魔法使い)LV-23
右手・レイピア
左手・なし
防具・聖なる騎士の鎧
アクセ・守りの指輪
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◆ティシリィ(戦士)LV-17
右手・なし
左手・プラチナソード
防具・聖なる騎士の鎧
アクセ・守りのブレスレット
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◆ナイリ(賢者)LV-5
右手・プラチナソード
左手・なし
防具・聖なる騎士の鎧
アクセ・守りのブレスレット/雨の恵
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◆エクラウス(旅人)LV-4
右手・プラチナソード
左手・聖なる騎士の盾
防具・聖なる騎士の鎧
アクセ・守りのブレスレット/雨の恵
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「エクラウスも『雨の恵』ゲットしてたのか! エスカルゴから?」

 ティシリィが聞いた。エクラウスさんに対して敬語だったのは最初の挨拶だけだった。

「そうそう、ヴァランナに着く直前だったかな。運が良かったよ」

 『雨の恵』とは、昨日俺たちがエスカルゴからドロップしたレアアイテムだ。これを装備しているだけで、手に入る経験値が2倍になる。雨の日に狩りに出ていたプレイヤーは余り見かけなかったので、手に入れたのは俺たちだけかもしれない。ティシリィが言っていたように、今後を左右する大事なアイテムになるだろう。

「しかしまあ、レベル4の旅人なんかで、よくヴァランナに辿り着けたな。オークとか出会わなかったのか?」

「旅人専用の魔法の書『シールド』ってのがあるからな。良い防具と、この魔法でなんとか耐えて、後は逃げるだけじゃ。見て見ろ、ワシの逃走回数。52回じゃぞ」

 エクラウスさんのステイタスを見て、俺たちは笑った。シールドの魔法はそこそこMPを使うらしく、MP回復カプセルも大量に消費したらしい。金持ちにしか、なせない技と言えるだろう。

「逃げてばかりだから、レベルも上がらない訳ですね。良いやら悪いやらですね……」

「しかも、旅人から転職してしまうと使えなくなる魔法だしのう。若い内に楽をすると、後が大変なんじゃ……」

 ティシリィは、「ハハッ、金持ちも大変だな」と、エクラウスさんの肩を叩いた。




 俺たちは、ガッテラーレへ向かう途中だけ、四人組の臨時パーティーを組んでいた。

 俺とティシリィだけではトロールのミッションに参加出来ないが、ミッション未達成者がパーティー内の半分を占めれば、ミッションに挑戦出来るらしい。ただし、クリア済みの俺とティシリィには経験値等は手に入らない。

「すみません、ティシリィ達には何のメリットも無いのに。しかも、『雨の恵』まで貸して頂いて……」

「気にするな。これでナイリに借りを返せるってもんだ」

 ティシリィはどこまでも男前だった。

 ほこら近くに来ると、トロールが現れた。二度目とは言え、その迫力は変わらない。先日ティシリィが受けたダメージの件、改善されているのだろうか。そう言えば、トロールに瞬殺されたグラウは、通常の微電流しか流れなかったと言っていた。

「アタシとインディが前に出る! 二人は後ろからフォローよろしく!」

 ティシリィが飛び出して、初太刀をたたき込んだ。通常の攻撃にも関わらず、HPの1/3を削る。前回より明らかに強くなっている。

 俺のファイラスもレベルが上がったせいか、前回よりはダメージを与えたようだ。ナイリとエクラウスさんは防御に徹していた。

 次は俺の攻撃だと言わんばかりに、トロールがドスドスと突っ込んでくる。

 ティシリィばかりに任せていられない、俺はティシリィを庇うように前に出た。

「インディ! 無茶するな!」

 その直後、トロールの棍棒が俺の脳天に振り下ろされた。激烈な痛みが俺を襲う。

「うわあああっ!」

 叫び声と共に、その場に倒れ込んでしまった。その上、HPはごくわずかしか残っていない。グラウ同様、クリティカルヒットを食らってしまったようだ。

「こっ、こいつ! なめるなああっ!!」

 ティシリィの二太刀目は黄金のラインを描き、トロールを頭上から真っ二つにした。トロールの残骸には、CHクリティカルヒットが表示されていた。

 トロールの倒され方にもバリエーションがあるのか……ボーッとした頭でそんな事を考えていた。

「だっ、大丈夫か、インディ!」

 三人が俺の周りに駆け寄ってきた。ティシリィは倒れる事なんて無かったのに、なんて情けないんだ。

「だ、大丈夫。ティシリィはよく耐えたね、こんな痛みに。やっぱりおかしいよ、これは……」

「た、体調は良くならないでしょうけど、一応回復魔法でHPは全回復しておいたから……」

「あ、ありがとうナイリ。もう歩けるよ、大丈夫だ……」

「な、なんじゃ、これは……こんな事があるのか……」

 ナイリは話では聞いていたが、エクラウスさんは全く知らなかったようだ。以前、ティシリィも大きなダメージを受けたことを、エクラウスさんに話しておいた。



 トロールを倒した後は、これといった強い敵も現れず、ティシリィの剣と俺の魔法でほぼほぼ倒すことが出来た。これならガッテラーレどころか、その次の村、リーヴォルを拠点にしてもいいかもしれない。

 ところが、ガッテラーレの村が見えてきたところで、ちょっとした異変が起きた。コンドラという鳥タイプのモンスターが現れた時だ。

「チッ、アタシの剣じゃ届かない。インディ頼む!」

 俺はファイラスをコンドラに放った。瀕死の状態にまで持っていったものの、一撃では倒せなかった。今までのモンスターに比べると、格段にHPが高い。次に攻撃を仕掛けてきたのはコンドラだった。翼を大きく羽ばたかせると、無数の羽が全員を襲った。

「痛いっ!」

 ナイリが声を上げた。トロールの時のダメージとは比べるまでもないほど、弱いものだったが、四人とも明らかに「痛み」というものを覚えた。

「サッ、サンドス!」

 ナイリが雷系の魔法を唱えた。さっき覚えたばかりの新しい魔法だ。ファイラスの威力には及ばないが、無事コンドラを葬り去った。

「なんだ今のは。ワシにも痛みが走ったぞ。インディ、トロールの時もあんな感じだったのか?」

「いや……俺のはもっと強烈でした。だよね、ティシリィ」

「ああ。だけど、トロール以外で痛いと思ったのは初めてだな。この先、どうなるんだコレ……」

 このコンドラ戦を最後に、俺たちは無事ガッテラーレに辿り着いた。




 ガッテラーレには現地の村人以外、プレイヤーは一人もいなかった。レストランやバーは俺達を歓迎してくれているようだ。

「ルッカなんかと比べて、一回り……いや、二回りほど村が小さくなった気がするな。辿り着けるプレイヤーの数を考えての事なんだろうけど」

 ティシリィは村を見渡してそう言った。

 確かに北上するにつれ、村の規模は小さくなっていた。ティシリィが言うように、ここまで辿り着けずにリタイヤするプレイヤーは多いのだろう。

 だが、ガッテラーレは今までの村とは違い、建物全てがレンガ造りになっていた。ルッカと同じように花壇もあり、小川も走っている。拘りを持って作られているこの世界を、心底素晴らしいと思った。

「とりあえず宿を取ろうか。ワシとインディ、ティシリィとナイリで泊まるってのはどうだ?」

 全員、異論は無かった。宿泊費もどんどんと高額になっているからだ。後ほどレストランで集合する事を決めると、身体を癒やすためそれぞれの部屋へと入っていった。



「ティシリィ、『雨の恵み』返します。これとトロールミッションのおかげで、かなりレベルを上げる事が出来ました。本当にありがとう」

「いやいや、ナイリの役に立ったなら良かった。——さあ、それより飯食おう!」

「にしても、宿代も食事代もどんどん高くなるね。この辺りのモンスターが落とすゴールドがそこそこあるからいいけど、高い装備品を買ったら一気にジリ貧になりそうだ」

「虹色のスライムを倒したとは言え、インディとティシリィはまだリアルマネーを使ってないんですよね? 私とエクラウスさんなんて幾ら使ったことか……」

「本当にそうじゃな。流石のワシも意地になってきたよ。……そういや、バーの告知は見たかい? 四人以上のパーティーなら、王様に謁見出来るってやつ」

 職業やレベルは問わず、四人以上のパーティーであれば王様に謁見出来るらしい。その場でミッションを言い渡されるという。

「そういえば、ガッテラーレから戻ってきたグラウが、四人組のパーティーに拘ってました。これが理由だったのでしょうね……」

「じゃ、一度この四人で王様に会いに行ってみようか! パーティーを継続するか、解散するかは、その後に決めればいい」

「おお、ティシリィちゃん、そのセリフを待っていたぞ!」

「ちゃん付けは止めろ、エクラウス。インディもそれでいいな?」

「ああ、もちろん!」

 俺は笑いながら、そう答えた。
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