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終戦
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「やっぱり、グドンは私たちの味方なんです!! グドン、聞いて!! 下がって、もう大丈夫だから!! グドン!!」
アトリはそう繰り返したが、グドンは前進をやめなかった。
そして、とうとう——
『ドウンッ!』
巨大な大砲からの二発目は、グドンの腹部をぶち抜いた。グドンは敵に一撃でも加えようと思ったのか、イグルとホウク目がけて長い両腕を振り下ろした。
それと同時に、俺たちもグドンから放り出される。ビルの高さで言うと、何階くらいなんだろう……落ちていきながら、不思議とそんな事が頭を過った。
地面に落ちたら、薬を飲まなくちゃ……
今度は一人でちゃんと飲まなくちゃ……
直後、激しい痛みと共に、地面に叩きつけられた。そんな俺たちのすぐ横を、ヨタカの軍勢が勢いよく城内になだれ込んでいくのが見える。
まだ、勝てる……
俺たちはまだ負けていない……
薬を飲んだら、俺もまた頑張らないと……
***
薄暗い部屋で目が覚めた。
周りには俺と同じ怪我人だろう、数人が横になっている。そして、隣ではゲンが寝ていた。
「ゲン……」
起こす気は無かったが、無事を確かめたくてつい声を掛けてしまった。
「ん……ユ、ユヅルか……大丈夫だったんだな、良かった。本当に良かった……」
ゲンはすぐに目を覚ました。だが、起き上がると身体が痛むのか「うっ」と声を上げた。
「——アトリとクイナは? ヨタカたちはどうなった?」
「俺もいま起きたとこなんだ。何も分からない」
そう言って辺りを見渡していると、一人の男が近づいてきた。
「ゲン様、ユヅル様! 目を覚まされましたか! ご安心ください、イグルとホウクは捕らえ、アトリ様とクイナ様は無事です!」
確かトキと一緒にいた男だ。彼はシャモと名乗った。
「おお、イグルとホウクを捕らえたのか。流石、君たちは優秀だな」
「いえいえ、奴らはグドンの腕の下敷きになったから、簡単に捕らえられたのです。それもこれも、ゲン様たちのお陰です。——ところで、今から城の中庭に移動は出来るでしょうか? イグルとホウクを縛り上げております」
「分かった。今から移動しよう」
「部屋を出て、左に真っ直ぐ進むと中庭に出ます。隣の部屋にはアトリ様たちがいらっしゃるので、よければお声がけしてあげてください。私もトキたちと一緒に、中庭に向かいます!」
シャモはそう言うと、急いで部屋を出て行った。
俺たちも部屋を出て、中庭へと向かう。少しひんやりとした城内は、豪華とは言えないが堅牢な作りである事が見て取れた。
「この部屋だな、アトリたちがいるのは」
ゲンと俺は、その部屋を覗いた。
部屋にはアトリとクイナ、そして彼女たちと同じ髪色をした男性と女性がいた。きっと、彼女たちの父親と姉なのだろう。そして、アトリたちに告白をしたコウとウカリもいる。彼らが、家族と引き合わせてくれたのかもしれない。アトリとクイナはこちらに背を向けていたので、俺たちに気付いていなかった。
「——どうした、ユヅル。声を掛けないのか?」
「うん……何でだろう、声を掛けない方がいいような気がして」
そう答えると、ゲンは「そうか」と言った。
喜びあう彼女たちを見て、何故かその中に入っていけなかったのだ。
当然のことながら、彼女たちには彼女たちの世界がある。ずっと四人でいると、その当たり前が分からなくなっていたのかもしれない。
そういえば、彼女たちを見て久しぶりに俺の両親の事を思い出した。
父さんと、母さん。二人は元気だろうか。
***
中庭に着くと、俺たちは大歓声と共に迎えられた。
中庭の中央には後ろ手に縛られたイグルとホウク、そしてそのすぐ後ろには、同じく縛られたイグルとホウクの兵たちがいた。
「ゲン様、ユヅル様! ご無事で何よりです。見てください、これでイグルもホウクも私たちの思うがままです!」
ヨタカの一言で城内が沸く。島民たちは、イグルたちを取り囲むように中庭に詰めていた。
「ではゲン様……イグルとホウク、そしてその兵たちに刑罰をお与えください……」
ヨタカは恭しく、そう言った。
ヨタカは、イグルとホウクに極刑を求めているのだろうか。聖人に見えたヨタカだったが、長年の恨みというものは、そう簡単に消えるものではないらしい。
ゲンは中庭の中央、イグルとホウクの前に立った。
ゲンはイグルたちに、どんな刑罰を科すのだろうか……
「——その前に、ひとついいだろうか」
口を開いたのはホウクだった。そのホウクの言葉に、ヨタカの軍勢から非難の声が飛ぶ。
「お前に発言権などない!」
「死にたくないからといって、時間稼ぎをするな!」
「それでも城を構えていた男か!」
その言葉は様々だった。ホウクは表情を変えず、ゲンの返事を待っている。
「皆、静かにしてくれ。——続けろ、ホウク」
「さっきの戦闘で、城のあちこちに火が回っている。まずは消火活動をした方がいい。火薬庫に引火すると、ここにいる人間は全て吹っ飛ぶ」
ホウクのその言葉で、島民たちは怒りを露わにした。「いい加減にしろ!」という怒号が飛ぶだけでなく、城の瓦礫を投げつける者もいた。
だが、ホウクの言うように、中庭でも煙が燻っている箇所がある。危ないのは本当かもしれない。そんな怒号が収まらない中、一人の男がゲンの横に来て声を上げた。
「砲兵のコウだ! 正直、いま火薬庫は良い状態じゃない。俺も管理をしている一人だからよく分かる。火薬庫の近くだけでも、先に消火活動をした方がいい!」
コウの一言で、やっと城内が静かになった。
「ゲン……? 雨を降らせるのは、どうだろう?」
「ああ、そうだなユヅル……」
俺が言わずとも、ゲンも気付いていただろう。ゲンは右手を高々と上げた。
「知らない者もいるだろうから、改めて言っておこう。俺とユヅルは神の使いでこの島へとやってきた。少しだけだが、力を見せたいと思う。
——恵の雨よ!! この地を燃やす、災いの火を沈めよ!!」
ゲンが言うと、瞬く間に暗雲が広がり、太陽の光を遮った。そして城を震わせるほどの雷鳴が轟いたかと思うと、大粒の雨が大地を打ち付ける。ホウクの城は、みるみるうちに黒く染まっていった。
島民たちはその光景を見て、慌ててゲンにひれ伏した。
ひれ伏していないのは、イグルとホウク、そして俺たち三人だけだった。
しばらくして雨は上がり、鮮やかな虹と共に中庭に日が差し込んでくる。
城の中庭から見上げるその光景は、とても神々しいものだった。
アトリはそう繰り返したが、グドンは前進をやめなかった。
そして、とうとう——
『ドウンッ!』
巨大な大砲からの二発目は、グドンの腹部をぶち抜いた。グドンは敵に一撃でも加えようと思ったのか、イグルとホウク目がけて長い両腕を振り下ろした。
それと同時に、俺たちもグドンから放り出される。ビルの高さで言うと、何階くらいなんだろう……落ちていきながら、不思議とそんな事が頭を過った。
地面に落ちたら、薬を飲まなくちゃ……
今度は一人でちゃんと飲まなくちゃ……
直後、激しい痛みと共に、地面に叩きつけられた。そんな俺たちのすぐ横を、ヨタカの軍勢が勢いよく城内になだれ込んでいくのが見える。
まだ、勝てる……
俺たちはまだ負けていない……
薬を飲んだら、俺もまた頑張らないと……
***
薄暗い部屋で目が覚めた。
周りには俺と同じ怪我人だろう、数人が横になっている。そして、隣ではゲンが寝ていた。
「ゲン……」
起こす気は無かったが、無事を確かめたくてつい声を掛けてしまった。
「ん……ユ、ユヅルか……大丈夫だったんだな、良かった。本当に良かった……」
ゲンはすぐに目を覚ました。だが、起き上がると身体が痛むのか「うっ」と声を上げた。
「——アトリとクイナは? ヨタカたちはどうなった?」
「俺もいま起きたとこなんだ。何も分からない」
そう言って辺りを見渡していると、一人の男が近づいてきた。
「ゲン様、ユヅル様! 目を覚まされましたか! ご安心ください、イグルとホウクは捕らえ、アトリ様とクイナ様は無事です!」
確かトキと一緒にいた男だ。彼はシャモと名乗った。
「おお、イグルとホウクを捕らえたのか。流石、君たちは優秀だな」
「いえいえ、奴らはグドンの腕の下敷きになったから、簡単に捕らえられたのです。それもこれも、ゲン様たちのお陰です。——ところで、今から城の中庭に移動は出来るでしょうか? イグルとホウクを縛り上げております」
「分かった。今から移動しよう」
「部屋を出て、左に真っ直ぐ進むと中庭に出ます。隣の部屋にはアトリ様たちがいらっしゃるので、よければお声がけしてあげてください。私もトキたちと一緒に、中庭に向かいます!」
シャモはそう言うと、急いで部屋を出て行った。
俺たちも部屋を出て、中庭へと向かう。少しひんやりとした城内は、豪華とは言えないが堅牢な作りである事が見て取れた。
「この部屋だな、アトリたちがいるのは」
ゲンと俺は、その部屋を覗いた。
部屋にはアトリとクイナ、そして彼女たちと同じ髪色をした男性と女性がいた。きっと、彼女たちの父親と姉なのだろう。そして、アトリたちに告白をしたコウとウカリもいる。彼らが、家族と引き合わせてくれたのかもしれない。アトリとクイナはこちらに背を向けていたので、俺たちに気付いていなかった。
「——どうした、ユヅル。声を掛けないのか?」
「うん……何でだろう、声を掛けない方がいいような気がして」
そう答えると、ゲンは「そうか」と言った。
喜びあう彼女たちを見て、何故かその中に入っていけなかったのだ。
当然のことながら、彼女たちには彼女たちの世界がある。ずっと四人でいると、その当たり前が分からなくなっていたのかもしれない。
そういえば、彼女たちを見て久しぶりに俺の両親の事を思い出した。
父さんと、母さん。二人は元気だろうか。
***
中庭に着くと、俺たちは大歓声と共に迎えられた。
中庭の中央には後ろ手に縛られたイグルとホウク、そしてそのすぐ後ろには、同じく縛られたイグルとホウクの兵たちがいた。
「ゲン様、ユヅル様! ご無事で何よりです。見てください、これでイグルもホウクも私たちの思うがままです!」
ヨタカの一言で城内が沸く。島民たちは、イグルたちを取り囲むように中庭に詰めていた。
「ではゲン様……イグルとホウク、そしてその兵たちに刑罰をお与えください……」
ヨタカは恭しく、そう言った。
ヨタカは、イグルとホウクに極刑を求めているのだろうか。聖人に見えたヨタカだったが、長年の恨みというものは、そう簡単に消えるものではないらしい。
ゲンは中庭の中央、イグルとホウクの前に立った。
ゲンはイグルたちに、どんな刑罰を科すのだろうか……
「——その前に、ひとついいだろうか」
口を開いたのはホウクだった。そのホウクの言葉に、ヨタカの軍勢から非難の声が飛ぶ。
「お前に発言権などない!」
「死にたくないからといって、時間稼ぎをするな!」
「それでも城を構えていた男か!」
その言葉は様々だった。ホウクは表情を変えず、ゲンの返事を待っている。
「皆、静かにしてくれ。——続けろ、ホウク」
「さっきの戦闘で、城のあちこちに火が回っている。まずは消火活動をした方がいい。火薬庫に引火すると、ここにいる人間は全て吹っ飛ぶ」
ホウクのその言葉で、島民たちは怒りを露わにした。「いい加減にしろ!」という怒号が飛ぶだけでなく、城の瓦礫を投げつける者もいた。
だが、ホウクの言うように、中庭でも煙が燻っている箇所がある。危ないのは本当かもしれない。そんな怒号が収まらない中、一人の男がゲンの横に来て声を上げた。
「砲兵のコウだ! 正直、いま火薬庫は良い状態じゃない。俺も管理をしている一人だからよく分かる。火薬庫の近くだけでも、先に消火活動をした方がいい!」
コウの一言で、やっと城内が静かになった。
「ゲン……? 雨を降らせるのは、どうだろう?」
「ああ、そうだなユヅル……」
俺が言わずとも、ゲンも気付いていただろう。ゲンは右手を高々と上げた。
「知らない者もいるだろうから、改めて言っておこう。俺とユヅルは神の使いでこの島へとやってきた。少しだけだが、力を見せたいと思う。
——恵の雨よ!! この地を燃やす、災いの火を沈めよ!!」
ゲンが言うと、瞬く間に暗雲が広がり、太陽の光を遮った。そして城を震わせるほどの雷鳴が轟いたかと思うと、大粒の雨が大地を打ち付ける。ホウクの城は、みるみるうちに黒く染まっていった。
島民たちはその光景を見て、慌ててゲンにひれ伏した。
ひれ伏していないのは、イグルとホウク、そして俺たち三人だけだった。
しばらくして雨は上がり、鮮やかな虹と共に中庭に日が差し込んでくる。
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