古代の生け贄少女を救って、一緒に魔物討伐に出る物語!

靣音:Monet

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対峙

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「さっきドラゴンに放った大砲と、城に配備されている大砲は同じ物なんだろうか?」

 ゲンが一団の兵に聞いた。

「ええ、そうです。イグル様の軍と同じ物を使っているのは、カナリー村だけだと聞いています。私たちはそれを誇りに思っています」

「そ、そうか。ありがとう」

「——ゲン、大砲の事を聞いたのは何で?」

 俺が聞くと、三人にしか聞こえないほどの小声でゲンは話し始めた。

「さっきの大砲だが、思ったより攻撃力が高くなかったか?」

「はい、私も感じました。大砲が撃ち込まれたとき、ドラゴンは硬化していたように思います。しかし、大砲はドラゴンの腕を吹き飛ばしました。ゲン様と私の攻撃は、硬化していたドラゴンには効かなかったのに……」

「ああ、確かに……」

 アトリの推察に、クイナも相づちを打つ。

「だけどさ、俺たちがドラゴンと戦った時は、武器がレベルアップする前だった。今だったら、どうなるかは分からない」

「ああ、それに関してはユヅルの言う通りだ。ただ、俺たちの武器がさっきの大砲レベルまで上がっていたとしても、グドンには効かないという事だ。もしかしたら…… 俺たちはグドンと戦うにはまだ早いのかもしれないな……」

 ゲンは腕組みをしながら歩いている。今から仕切り直しなんて事はあるのだろうか。

「だけどさ……放っておけばイグルの城にいる奴はやられちゃうって事だろ? イグルはいいとして、ヨタカの兄貴なんかも城にいるんだよな。とりあえず……とりあえず、一度戦ってみよう」

「私もクイナに同感です。ダメだったら、一度逃げるっていう選択肢もあります。出来れば、その時にグドンを城から引き離すとか……」

「ああ、クイナとアトリの言うとおりだな……弱気な事を言ってすまん。強さを確かめる意味でも、一度やりあってみよう」

 黙っていたが、実は俺もゲンと同じ考えだった。

 まだ、グドンと戦うには早すぎるのではないかと。


***


 カナリー村からイグルの城までは約4時間。到着する頃には、日が傾き掛けている事だろう。

 俺たちは小規模なバトルを繰り返しながら、城を目指している。出来るだけ大砲は使わせず、俺たちだけで魔物を蹴散らした。

「ミ、ミスターゲン……しばらくでイグル様の城に着く。我々は正面に大砲を設置し、グドンを迎え撃とうと思っている。そのような布陣で問題ないだろうか……?」

 ダックは道中の戦いを見て、俺たちへの態度をガラリと変えていた。

「ああ、構わない。当然だが、俺たちには絶対に当たらないように気をつけてくれ。あと、場合によっては撤退もありうる。それは兵にも周知させておいて欲しい」

 ダックは「ハッ!」と答えて、自分の居場所へと戻っていった。

 しばらくでイグルの城が見えてくるという。初めて見るグドン。噂通りの奴なのだろうか。


***


 城が見えた瞬間、皆が足を止めた。

「——し、城が半壊してるじゃないか!」

 カナリー村の兵たちが悲鳴を上げる。俺たちは元の形を知らなかったが、確かに城の左側が大きく削られていた。

 それよりも、グドンの大きさだ……

 グドンは城ほどの大きさと聞いていたものの、あくまでそれは例え話だと思っていた。だが、それは少しも大げさでなく、本当に城の大きさと変わらない図体を持っていた。

「ゲ、ゲン……これは想像以上だな……」

 流石のクイナもグドンの大きさには恐れをなしたようだ。

「ミスターゲン、それでは作戦通り兵を配備させる。最初は城に弾を当てないようにと思っていたが、ここまで破壊されていては意味が無い……奴へのダメージを優先させよう」

 ダックはいまや、ゲンの部下のようになっていた。怖くて逃げ出すかと思っていたが、やるべき事はちゃんとやるようだ。

「——ダック、お前はグドンの大きさを知っていたのか?」

「ああ、それはもちろん。ただ、本物を見るのは初めてで驚いてはいる。それにしても、とうとう内部まで侵入したか……イグル様が心配だ……」

 そう言ったダックの顔を見る。本当に心配しているように見える。カナリー村の人間は、本当にイグルを崇拝しているのかもしれない。


***


 俺たちは歩を進め、グドンとの距離を詰めていく。時々、グドンの身体に煙が上がるのが見える。きっと、イグルの城兵からの砲撃を受けているだろう。だが、その砲撃のせいで城を破壊されているのだと思う。

「さっきは『やってみましょう』なんて言ったけど、正直、今震えています……臆病者ですね、私は……」

「アタシだって同じだよ、アトリ。特にアタシなんて、どんな風に攻撃をしたらいいのかさえ、浮かんでいない」

 確かに、クイナの戦闘スタイルは、大型の敵には不向きだと言える。特にここまで大型だと、為す術が無いと言ってもいいのかもしれない。

「クイナは無理をするな。俺たちも出来るだけ、遠距離から攻撃をするよう心がけよう。あと、万一のため黄色い錠剤は手元に置いておけ」

 俺たち四人が先頭に立ち、グドンに近づいていく。カナリー村の兵は、大砲以外は役に立たないだろう。いや、この状況を見る限り、大砲だって役に立ちそうにない。俺たちの攻撃は少しくらいは通るのだろうか。そしてそれが通るとして、倒す事は可能なのだろうか……

 とうとう、ゲンとアトリがグドンへの射程圏内に入った。今はまだ、城兵からの砲撃に気を取られているグドンだが、俺たちが攻撃を仕掛けると奴の意識はこちらに向く事だろう。

「——ではアトリ、最初から全力で攻めるぞ。道に転がっている、大きな石が見えるな? あそこに到達したら攻撃開始だ」

「はい、ゲン様……」

 カナリー村の大砲も配備は完了したようだ。

 あと数歩……

 3歩、2歩、1歩……

 アトリは周りを照らす程の炎魔法を、ゲンは腹に響くほどの特大の砲弾を射出した。
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