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27_シャワー
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僕は返事をする事が出来なかった。ホテルの狭い部屋の中で、沈黙が続く。
しびれを切らしたのか、秀利が口を開いた。
「俺の事、それなりに好意を持ってくれていると思ったんだけど、違ったのかな……前の人とは、どんな感じで付き合ってたの?」
今までの声と少しトーンが違う。怒っているのかもしれない。
「前の人とは……一緒に食事に行ったりとか……です」
「でも、その彼のリクエストに応えて、服装も変えてたよね? 本当に、一緒に食事をしただけ? ……ちなみに、その人はお小遣いとかくれる人だったの?」
秀利が更に質問を重ねてくる。このままでは香奈との関係がバレるような気がして、一刻も早くその場から離れたくなった。
「……い、いえ、お小遣いだなんて。……シャワー浴びてきていいですか? 実は足の毛の処理を忘れていて、見られたくなかったんです」
そう言った途端、秀利の顔から渋面が消えた。
「……な、なんだ、そんな事、全然気にしないのに。大丈夫、俺待ってるから浴びてきて。……そんなの、全然気にしないから」
僕はベッドから離れ、バスルームへ入った。大きくも無く、綺麗でも無い、普通のバスルームだった。
足の毛を処理していないというのは本当だった。初めて秀利と会った日に、除毛して以来そのままだったからだ。これを見れば、さっきの言い訳も疑われないだろう。
僕は時間を稼ぐため、体だけでなく、髪も洗った。ただ、時間を掛けたところで、秀利の前に出て行くことに変わりは無い。秀利の会社から、緊急の用事なんかが入らないだろうか? そんな事を考えていると、秀利が声を掛けてきた。
「佑くん? 出てくるときは、バスタオルだけで出てきてくれる?」
機嫌が直ったと思っていたが、再び声のトーンが低くなっていた。出てくるのが遅いと、怒っているのかもしれない。
「わ、わかりました。しばらくで出ます」
僕は髪と体を拭き、腰にバスタオルを巻いて、秀利の前へと出た。
「こっち、こっち。もう少し、こっちへ来て。そう……」
ベッドに座ったままの秀利は、僕を目の前に立たせ、舐めるように僕を見た。少し不機嫌なようにも見えたが、僕を見ている内、その顔はどんどんと柔らかくなっていった。普段飲まない酒を飲み過ぎたのだろうか、頬は紅潮し、目は赤く潤んでいた。
「……そろそろ、取ってもらっていい? バスタオル」
シャワーを浴びている時から、全てを見られる事は覚悟していた。僕は腰で止めていたタオルを外し、足下へと落とした。
「はぁ……」
秀利は吐息を漏らした。今僕は、秀利に全てを見られている。小学生以来、父親にだって見られたことも無い姿を。
「佑くん……手だけ握ってもいいかな? それ以上は触らないから。手だけ」
僕は目を合わさず、頷いた。秀利は僕の右手に、秀利の左手を絡ませてきた。秀利の呼吸が荒くなるのが伝わってくる。
「……ごめんね、見てくれてもいいし、見てくれなくてもいい。佑くんの前で、おかしくなっちゃうけど。……すぐ終わるから」
そう言うと、秀利は空いた右手で自分のベルトを外し、下半身を露わにした。そして、秀利の呼吸が更に激しくなったと思うと、僕の前で果てた。
秀利はすぐにシャワーを浴びに行った。
多分、今日はこれ以上の事はしてこないだろう。僕も服を着て、秀利が出てくるのを待った。
「佑くん、怒ってない……? 大丈夫……?」
秀利はシャワーから出てくると、別人のようにしおらしくなっていた。今になって、自分のやったことに羞恥心を覚えたのかもしれない。
「大丈夫です……体を触られるのは、まだ慣れてないので、あれくらいなら……」
あと一回は、ホテルに行かなくてはならない。こう言っておけば、次に繋げられるだろう。
「良かった……嫌われたかと思って、心配したよ。——俺ね、もう少ししたらここを出なきゃいけないんだよ。先に佑くん、出て貰っていい?」
「わ、わかりました。じゃ、またメッセージ送ります。……今日も、素敵なランチありがとうございました、ご馳走様でした」
僕が会釈すると、秀利は疲れた表情を見せながらも、満足げに頷いた。
しびれを切らしたのか、秀利が口を開いた。
「俺の事、それなりに好意を持ってくれていると思ったんだけど、違ったのかな……前の人とは、どんな感じで付き合ってたの?」
今までの声と少しトーンが違う。怒っているのかもしれない。
「前の人とは……一緒に食事に行ったりとか……です」
「でも、その彼のリクエストに応えて、服装も変えてたよね? 本当に、一緒に食事をしただけ? ……ちなみに、その人はお小遣いとかくれる人だったの?」
秀利が更に質問を重ねてくる。このままでは香奈との関係がバレるような気がして、一刻も早くその場から離れたくなった。
「……い、いえ、お小遣いだなんて。……シャワー浴びてきていいですか? 実は足の毛の処理を忘れていて、見られたくなかったんです」
そう言った途端、秀利の顔から渋面が消えた。
「……な、なんだ、そんな事、全然気にしないのに。大丈夫、俺待ってるから浴びてきて。……そんなの、全然気にしないから」
僕はベッドから離れ、バスルームへ入った。大きくも無く、綺麗でも無い、普通のバスルームだった。
足の毛を処理していないというのは本当だった。初めて秀利と会った日に、除毛して以来そのままだったからだ。これを見れば、さっきの言い訳も疑われないだろう。
僕は時間を稼ぐため、体だけでなく、髪も洗った。ただ、時間を掛けたところで、秀利の前に出て行くことに変わりは無い。秀利の会社から、緊急の用事なんかが入らないだろうか? そんな事を考えていると、秀利が声を掛けてきた。
「佑くん? 出てくるときは、バスタオルだけで出てきてくれる?」
機嫌が直ったと思っていたが、再び声のトーンが低くなっていた。出てくるのが遅いと、怒っているのかもしれない。
「わ、わかりました。しばらくで出ます」
僕は髪と体を拭き、腰にバスタオルを巻いて、秀利の前へと出た。
「こっち、こっち。もう少し、こっちへ来て。そう……」
ベッドに座ったままの秀利は、僕を目の前に立たせ、舐めるように僕を見た。少し不機嫌なようにも見えたが、僕を見ている内、その顔はどんどんと柔らかくなっていった。普段飲まない酒を飲み過ぎたのだろうか、頬は紅潮し、目は赤く潤んでいた。
「……そろそろ、取ってもらっていい? バスタオル」
シャワーを浴びている時から、全てを見られる事は覚悟していた。僕は腰で止めていたタオルを外し、足下へと落とした。
「はぁ……」
秀利は吐息を漏らした。今僕は、秀利に全てを見られている。小学生以来、父親にだって見られたことも無い姿を。
「佑くん……手だけ握ってもいいかな? それ以上は触らないから。手だけ」
僕は目を合わさず、頷いた。秀利は僕の右手に、秀利の左手を絡ませてきた。秀利の呼吸が荒くなるのが伝わってくる。
「……ごめんね、見てくれてもいいし、見てくれなくてもいい。佑くんの前で、おかしくなっちゃうけど。……すぐ終わるから」
そう言うと、秀利は空いた右手で自分のベルトを外し、下半身を露わにした。そして、秀利の呼吸が更に激しくなったと思うと、僕の前で果てた。
秀利はすぐにシャワーを浴びに行った。
多分、今日はこれ以上の事はしてこないだろう。僕も服を着て、秀利が出てくるのを待った。
「佑くん、怒ってない……? 大丈夫……?」
秀利はシャワーから出てくると、別人のようにしおらしくなっていた。今になって、自分のやったことに羞恥心を覚えたのかもしれない。
「大丈夫です……体を触られるのは、まだ慣れてないので、あれくらいなら……」
あと一回は、ホテルに行かなくてはならない。こう言っておけば、次に繋げられるだろう。
「良かった……嫌われたかと思って、心配したよ。——俺ね、もう少ししたらここを出なきゃいけないんだよ。先に佑くん、出て貰っていい?」
「わ、わかりました。じゃ、またメッセージ送ります。……今日も、素敵なランチありがとうございました、ご馳走様でした」
僕が会釈すると、秀利は疲れた表情を見せながらも、満足げに頷いた。
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