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13_響
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忙しい週末を乗り越え、日曜日がやってきた。大島さんは、あの日以降も店に顔を出している。今の所、一日一杯という約束は守ってくれていた。
鏡の前で髪型と服装をもう一度チェックし、家を出る。今日は響とフレンチレストランへ行く日だ。待ち合わせ場所は、居酒屋こだまの前。響は少し遅れて現れた。
「ごめんごめん、待った? 久しぶりに化粧頑張ったから、時間掛かっちゃった」
僕はすぐに返事が出来なかった。
いつもはシルエットの出ない仕事着姿の響だが、今日は体のラインが強調された、タイトなファッションだった。服装と化粧だけで、女性はこんなにも変わってしまうのか……響の大きな目は、とても化粧映えしていた。
「なによ、変な顔して。って言うか、佑、髪切ったんだ! 凄い似合ってるじゃん! そのシャツも良いよ。こんなファッションのが似合うんじゃない?」
響はスラスラと、僕を褒めてくれた。
「い、いや、それより響さんのがビックリです。凄い似合ってます、素敵です今日の感じ」
「ハハハ、私が褒めたからって、無理しなくていいのに。……とりあえず、駅向かおうか」
僕たちは二人並んで、最寄り駅まで歩いた。その道中も響は僕の事を褒め続けた。
「そっか、眉がちゃんと見えるようになったから、凄く雰囲気変わったんだね。これじゃ、女の子に間違えられる事無いと思うよ。うん、佑の眉、すごく綺麗だ」
響はそう言って、僕の顔を覗き込んだ。
「やだなあ、もうやめてください。そんなジロジロ見られたら照れます」
僕が言うと、響は笑いながら顔を何度も近づけてきた。
響は楽しくて、しっかりしていて、そして……とても綺麗だ。
僕たちは『新都駅』に向かっている。初めて秀利と会うときに降りたのもこの駅だ。映画館やデパート、この駅には殆どの施設が揃っている。僕たちの最寄り駅からは、鈍行で6駅。車内はちらほらと空席があったが、僕たちは2人並んで立っていた。
「佑は新都には行った事あるの? もしかして初めて?」
「今日、初めて新都駅行きました。ヘアカットと、このシャツを買いに」
「え!? そうなの? だったら、新都で待ち合わせでも良かったのに」
「いえいえ、午前中に行ったので、戻ってこないと時間持て余してたと思います」
「何言ってんの、若いのに。新都なんて幾らでも時間潰すとこあるじゃん」
響は今、21歳。3つしか違わないが、凄くお姉さんに感じる。
そんな会話をしてるうち、新都駅に着いた。
***
「こんばんは、予約していた宮崎です」
店に入り、響が店員に声を掛ける。席に案内され少し待っていると、白髪が綺麗な男性シェフがテーブルにやってきた。
「響ちゃん、お久しぶり。お母さんの体調はどう?」
「ご無沙汰しています、久田さん。母、かなり良くなりましたよ。ただ、久田さんのお料理は万全の状態で食べたいからって。早くワインをがぶがぶ飲みたいって言ってました」
「ハハハ、お母さんらしいね。大将も元気かな?」
そう言えば、大将の妻であり、響の母にはまだ会ったことが無い。話だけ聞いていると、とても明るい人のようだ。
「ええ、父は相変わらずです。ただ、母が体調崩してからは、たまに弱気な事言うようになりましたね」
「ほう、例えば?」
「元気なのが当たり前って思ってたとこあるけど、俺もいつ体調崩すか分からないなあ、なんて。仕入れとか仕込みも、響が一人で出来るようにしておかないと、とか」
「あらら、大将らしくない。でも響ちゃんが作った料理も興味あるなあ。また近々お邪魔するから、その時は何か作ってよ」
久田シェフに言われた響は大げさに手を振って「私なんてまだまだです!」と言った。響もカウンターに入る事はあるが、現状サポート止まりだ。
仕入れや、仕込みか……
いつか僕にも教えてくれるのだろうか。
鏡の前で髪型と服装をもう一度チェックし、家を出る。今日は響とフレンチレストランへ行く日だ。待ち合わせ場所は、居酒屋こだまの前。響は少し遅れて現れた。
「ごめんごめん、待った? 久しぶりに化粧頑張ったから、時間掛かっちゃった」
僕はすぐに返事が出来なかった。
いつもはシルエットの出ない仕事着姿の響だが、今日は体のラインが強調された、タイトなファッションだった。服装と化粧だけで、女性はこんなにも変わってしまうのか……響の大きな目は、とても化粧映えしていた。
「なによ、変な顔して。って言うか、佑、髪切ったんだ! 凄い似合ってるじゃん! そのシャツも良いよ。こんなファッションのが似合うんじゃない?」
響はスラスラと、僕を褒めてくれた。
「い、いや、それより響さんのがビックリです。凄い似合ってます、素敵です今日の感じ」
「ハハハ、私が褒めたからって、無理しなくていいのに。……とりあえず、駅向かおうか」
僕たちは二人並んで、最寄り駅まで歩いた。その道中も響は僕の事を褒め続けた。
「そっか、眉がちゃんと見えるようになったから、凄く雰囲気変わったんだね。これじゃ、女の子に間違えられる事無いと思うよ。うん、佑の眉、すごく綺麗だ」
響はそう言って、僕の顔を覗き込んだ。
「やだなあ、もうやめてください。そんなジロジロ見られたら照れます」
僕が言うと、響は笑いながら顔を何度も近づけてきた。
響は楽しくて、しっかりしていて、そして……とても綺麗だ。
僕たちは『新都駅』に向かっている。初めて秀利と会うときに降りたのもこの駅だ。映画館やデパート、この駅には殆どの施設が揃っている。僕たちの最寄り駅からは、鈍行で6駅。車内はちらほらと空席があったが、僕たちは2人並んで立っていた。
「佑は新都には行った事あるの? もしかして初めて?」
「今日、初めて新都駅行きました。ヘアカットと、このシャツを買いに」
「え!? そうなの? だったら、新都で待ち合わせでも良かったのに」
「いえいえ、午前中に行ったので、戻ってこないと時間持て余してたと思います」
「何言ってんの、若いのに。新都なんて幾らでも時間潰すとこあるじゃん」
響は今、21歳。3つしか違わないが、凄くお姉さんに感じる。
そんな会話をしてるうち、新都駅に着いた。
***
「こんばんは、予約していた宮崎です」
店に入り、響が店員に声を掛ける。席に案内され少し待っていると、白髪が綺麗な男性シェフがテーブルにやってきた。
「響ちゃん、お久しぶり。お母さんの体調はどう?」
「ご無沙汰しています、久田さん。母、かなり良くなりましたよ。ただ、久田さんのお料理は万全の状態で食べたいからって。早くワインをがぶがぶ飲みたいって言ってました」
「ハハハ、お母さんらしいね。大将も元気かな?」
そう言えば、大将の妻であり、響の母にはまだ会ったことが無い。話だけ聞いていると、とても明るい人のようだ。
「ええ、父は相変わらずです。ただ、母が体調崩してからは、たまに弱気な事言うようになりましたね」
「ほう、例えば?」
「元気なのが当たり前って思ってたとこあるけど、俺もいつ体調崩すか分からないなあ、なんて。仕入れとか仕込みも、響が一人で出来るようにしておかないと、とか」
「あらら、大将らしくない。でも響ちゃんが作った料理も興味あるなあ。また近々お邪魔するから、その時は何か作ってよ」
久田シェフに言われた響は大げさに手を振って「私なんてまだまだです!」と言った。響もカウンターに入る事はあるが、現状サポート止まりだ。
仕入れや、仕込みか……
いつか僕にも教えてくれるのだろうか。
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