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03_イエス
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「まず、ゴールから話してあげる。私は旦那の浮気現場を押さえて離婚する。そして、莫大な慰謝料を手に入れる。それに至るまでのプロセスを佑くんにも手伝ってもらいたい。もちろん、佑くんにも十分な報酬を渡すつもり。どう? 興味ある?」
ば、莫大な慰謝料……僕が思っていたより、大きな話しなのかもしれない。
「う、浮気の慰謝料ってそんなに入るんですか? ちなみに、僕にはどのくらい入るんでしょうか?」
「最低でも億はぶんどるつもり。それくらい出せるし、それだけの地位の人なの。今はまだ下手に動けないから弁護士に相談も出来ないけど、計画が進んだら大きく取れるように動く予定。佑くんの取り分は、貢献度によって変えようと思ってる。最低でも1割は保障するわ」
想像もしていなかった金額に、僕は絶句した。最低の1億円だったとしても、僕には1千万円が入ってくる計算になる。
「ビビっちゃった? 18歳でこんな面白い話しが舞い込むなんて事、そうそう無いと思うよ。あとね、申し訳ないけど今日答えが欲しいの。ノーだった場合、他の子探さないとダメだから」
「……で、ぼ、僕は何をやるんですか? 旦那さんを尾行して、浮気現場の写真を撮るとかでいいんでしょうか?」
「まさか。そんなのは探偵にでも依頼するわよ。他に何か思いつかない? 佑くんだから出来る事」
「も、もしかして、僕が女性になりすまして浮気相手を演じるとか……?」
「うーん、半分正解かな。後の半分、分かる?」
後の半分……? なんだろう、何も思いつかない。
「す、すみません、分かりません」
「旦那ね、私に隠してるけど、男の子が好きなんだよ。私こっそり見てるんだ、彼のパソコン。普段使ってるブラウザの履歴は、普通のページばっかりなのよ。で、全然使ってる様子の無いブラウザの履歴も調べてみたのね。……そしたら、佑くんみたいな可愛い男の子ばっかり載ってるページの履歴で溢れてて。みーんな、裸みたいな格好でやることやってて。どう? 大体想像ついた?」
僕は衝撃を受けた。それは涼香の旦那に対してでなく、涼香にだ。目の前の彼女は、慰謝料をむしり取る事しか考えていない。僕の感覚からすると普通では無かった。
「な、なんとなく想像は付きましたが……そ、それよりも、今日答えないとダメなんですよね……」
「ええ。佑くんがイエスと言ったら詳細に進むし、ノーって事ならここでサヨナラ。どうする?」
「も、もし、ノーと答えても大丈夫なんでしょうか?」
「それは残念だけど、仕方ないわ。その代わり、絶対この事は口外しちゃダメ。約束を破ったら、リバーサイド山田の405に住んでる、佑くんのお父さんが困る事になるかもしれない」
……!?
涼香はたった一日で、僕の実家の住所まで探し出していた……僕の伊藤佑という名前だけでだろうか……
「そんなに怯えないで、佑くん。この話、絶対バラされるわけにはいかないの。調べさせて貰ったのは、断られた時の保険ってだけだから。今の所、この計画を知っているのは私と佑くんだけ。これは本当。だから安心して」
いや……そんな事を言われても、安心なんて出来るわけが無い。
だが、僕はすぐに「ノー」というセリフを言うことが出来なかった。1千万円という金額が、頭から離れないのだ。こんなチャンスが巡ってくる事など、二度と無いだろう。僕はまだ答えを出せなかった。
「……正直なところ、佑くんにやってほしいの。君みたいな人を見つけるまで、本当に時間を掛けたから。このエリアだって、私の家からは随分と遠いんだ。もちろん、自宅の近くは危険だからって理由もあるわよ。あと、考えてもみて。何をするかは大体予想付いてるだろうけど、殺したり、傷を付けたりする訳では無いの。もちろん、心の傷っていう意味では付けてしまうかもしれないけどね」
涼香は今までとは違い、穏やかな口調で語りかけてきた。確かに、殺すわけでも無ければ、暴力を振るうわけではないだろう。せいぜい、涼香の旦那を陥れるって事なんだと思う。
僕は悩んだ。
実はこの街に出てくる頃から、少しずつ思い始めていた。今のままじゃ、僕の人生つまらないまま終わっていくんじゃないだろうかって。
「……涼香さん。教えてください、詳細を」
涼香は満面の笑みを浮かべ、両手で僕の右手を包み込んだ。
ば、莫大な慰謝料……僕が思っていたより、大きな話しなのかもしれない。
「う、浮気の慰謝料ってそんなに入るんですか? ちなみに、僕にはどのくらい入るんでしょうか?」
「最低でも億はぶんどるつもり。それくらい出せるし、それだけの地位の人なの。今はまだ下手に動けないから弁護士に相談も出来ないけど、計画が進んだら大きく取れるように動く予定。佑くんの取り分は、貢献度によって変えようと思ってる。最低でも1割は保障するわ」
想像もしていなかった金額に、僕は絶句した。最低の1億円だったとしても、僕には1千万円が入ってくる計算になる。
「ビビっちゃった? 18歳でこんな面白い話しが舞い込むなんて事、そうそう無いと思うよ。あとね、申し訳ないけど今日答えが欲しいの。ノーだった場合、他の子探さないとダメだから」
「……で、ぼ、僕は何をやるんですか? 旦那さんを尾行して、浮気現場の写真を撮るとかでいいんでしょうか?」
「まさか。そんなのは探偵にでも依頼するわよ。他に何か思いつかない? 佑くんだから出来る事」
「も、もしかして、僕が女性になりすまして浮気相手を演じるとか……?」
「うーん、半分正解かな。後の半分、分かる?」
後の半分……? なんだろう、何も思いつかない。
「す、すみません、分かりません」
「旦那ね、私に隠してるけど、男の子が好きなんだよ。私こっそり見てるんだ、彼のパソコン。普段使ってるブラウザの履歴は、普通のページばっかりなのよ。で、全然使ってる様子の無いブラウザの履歴も調べてみたのね。……そしたら、佑くんみたいな可愛い男の子ばっかり載ってるページの履歴で溢れてて。みーんな、裸みたいな格好でやることやってて。どう? 大体想像ついた?」
僕は衝撃を受けた。それは涼香の旦那に対してでなく、涼香にだ。目の前の彼女は、慰謝料をむしり取る事しか考えていない。僕の感覚からすると普通では無かった。
「な、なんとなく想像は付きましたが……そ、それよりも、今日答えないとダメなんですよね……」
「ええ。佑くんがイエスと言ったら詳細に進むし、ノーって事ならここでサヨナラ。どうする?」
「も、もし、ノーと答えても大丈夫なんでしょうか?」
「それは残念だけど、仕方ないわ。その代わり、絶対この事は口外しちゃダメ。約束を破ったら、リバーサイド山田の405に住んでる、佑くんのお父さんが困る事になるかもしれない」
……!?
涼香はたった一日で、僕の実家の住所まで探し出していた……僕の伊藤佑という名前だけでだろうか……
「そんなに怯えないで、佑くん。この話、絶対バラされるわけにはいかないの。調べさせて貰ったのは、断られた時の保険ってだけだから。今の所、この計画を知っているのは私と佑くんだけ。これは本当。だから安心して」
いや……そんな事を言われても、安心なんて出来るわけが無い。
だが、僕はすぐに「ノー」というセリフを言うことが出来なかった。1千万円という金額が、頭から離れないのだ。こんなチャンスが巡ってくる事など、二度と無いだろう。僕はまだ答えを出せなかった。
「……正直なところ、佑くんにやってほしいの。君みたいな人を見つけるまで、本当に時間を掛けたから。このエリアだって、私の家からは随分と遠いんだ。もちろん、自宅の近くは危険だからって理由もあるわよ。あと、考えてもみて。何をするかは大体予想付いてるだろうけど、殺したり、傷を付けたりする訳では無いの。もちろん、心の傷っていう意味では付けてしまうかもしれないけどね」
涼香は今までとは違い、穏やかな口調で語りかけてきた。確かに、殺すわけでも無ければ、暴力を振るうわけではないだろう。せいぜい、涼香の旦那を陥れるって事なんだと思う。
僕は悩んだ。
実はこの街に出てくる頃から、少しずつ思い始めていた。今のままじゃ、僕の人生つまらないまま終わっていくんじゃないだろうかって。
「……涼香さん。教えてください、詳細を」
涼香は満面の笑みを浮かべ、両手で僕の右手を包み込んだ。
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