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プロローグ

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パンッと頬を打たれて、そこで私はやっと気づいた。

見上げれば、そこにいるのは私の夫、皇太子のシオンとその愛人の男爵令嬢の姿。

貴方はもう私なんていらないんですね。

「・・・そんなに私のことが憎いのですね。」

三年前に皇太子シオンと結婚して、初夜さえすっぽかされて、次の日には離宮にうつされた。

そして、すぐに愛人であるシャトレッタ男爵令嬢を城に呼び、やりたい放題。

そして、半年後には皇子を一人産んだ。

一方私はお飾りの皇太子妃として離宮に閉じ込められ、侍女から暴力を受ける毎日。

いいかげん嫌になった。

そんなある日だった。

城に呼ばれ、着替えて行ってみればそこにいたのは三年間一度も顔をあわせなかった夫とその愛人の姿だった。

会ってそうそうに頬を叩かれて、意味が分からなかった。

でも、あなたの顔を見てようやくわかった。

「誰が憎いと言った?リーシャが、シャトレッタ男爵令嬢ではなく、ルトルバード侯爵家に養女として入ることになったからお前は用済みだから出て行けと言ったんだ。」

殿下、それはあんまりでしょう。

三年間も放置した挙句の果てに出て行け、離婚ですか?

さすがに堪忍袋の緒が切れます。

さぁ、笑っていられるのもここまでですよ。

「分かりました、殿下。ですが殿下、あんまりだとは思いませんか?もう、私、笑って許すことなんてできません。」

私の言葉を殿下は不快そうな表情で聞き流す。

そうですか。

殿下はそういう選択をするのですね。

それなら私は、殿下のその選択を後悔させてあげますわ。

「一生後悔してください、殿下。」

私は近くに立っていた殿下直属の護衛騎士の剣を抜くと、自分の胸に突き刺した。

「ハル!?」

ぎょっとする殿下を見てしてやったりと思った。

倒れた私はもう目も開けられない。

それでもほんの一瞬後悔してしまった。

息ができない。

胸が、痛い・・・。

ああ、神様。もし神様が私をあわれに思ってくださるのなら、どうか一つだけ願いを聞いてください。

苦しくて、それでも、私は最後の力を振り絞ってうっすらと目をあけた。

「ハル!なんで?どうして!!」

血相を変えて私の名を呼ぶ殿下、そしてどうすればいいのか分からずただただオロオロしているリーシャさん。

ねぇ、殿下。

どうしてそんな顔をしているのですか?

私はリーシャさんと結婚するには邪魔な存在。

死んでくれてラッキーと思ってくれていいのですよ?

そういえばルトルバード侯爵家だなんて聞いたことがありませんね。

ルトルバーグ侯爵家ならあるのですけど・・・。

言い間違えたのかしら?

ああ、もう駄目ね。

もう、駄目みたい。

『その願いとやらを言いなさい。』

ありがとうございます。

私は、私は。








もう一度やり直したいのです。他人ではなく、自分のために生きてみたいのです。











『その願い、聞き届けよう。』
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