幽閉された元王妃の平民侍女ですが国王陛下に求婚されています

ルー

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農家の三女

謝罪は唐突に

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「ユリカ姉、今日発つだなんて聞いてないよ。どうして私を置いてくの!?」

次の日の朝、メイは悲しそうに言う。

「メイ、女の嫉妬は醜いって知ってた?」

ユリカはメイに微笑むとメイの一歩後ろでユリカを見つめていたユナに言った。

「ユナ、今までごめんなさい。謝って許してもらえることではないと分かってる。」

「ユリカ姉さん・・・。私はユリカ姉さんのこと嫌いじゃないです。でも好きでもないです。だけどちゃんと謝ってもらえてすごくうれしかったです。」

ユナが言う。

「許してくれる?」

ユリカがおずおずと尋ねる。

「はい。」

ユナは大きくうなずいた。

「本当にごめん。ユナは謝れば許してくれる優しい子だもの。ユナの優しさに付け入ってごめんなさい。」

ユリカはうつむく。

「ユリカ姉!?ちょっとどういうこと!?」

メイはユリカに詰め寄る。

「メイ、ちょっとあっちで話そう。」

ユリカはシュンを振り返る。

「お父さん、いいよね。まだ時間あるでしょ?」

「ああ、お昼前までにでれば閉門までには間に合う。」

親戚には失礼かもしれないが、と言いシュンは許可を出す。

「こっち。」

ユリカはメイを連れてその場を離れていく。

ユリカはユナたちに話の内容が聞こえないところまで来ると足を止めて振り返った。

「お姉ちゃん!ほんとにどうしちゃったの?あのユナに謝るだなんて。」

お姉ちゃんらしくないしありえない、とメイは言う。

「私らしくない?そうだよね、私らしくないよね。」

「ほんとにそうだよ。それに何?あの女の嫉妬は醜いって。私はユナに嫉妬なんかしてないもん!」

メイは叫ぶ。

「・・・でも羨ましかったでしょ?ユナみたいに手塩にかけて育ててもらいたかったよね?」

「そ、それは・・・。」

ユリカの問いにメイは黙り込む。

「メイ、認めてよ。ユナが羨ましかったんだって。ユナに嫉妬してたって。・・・認めてよ!じゃないとあの家にメイの居場所なんてなくなっちゃう!」

ユリカの心からの叫び。

心の底からメイを心配している。

父シュンは母リイカ似のユナを溺愛している。

兄シュウは溺愛とまではいかないけれどユナを可愛がっている。

母リイカはあの日を境にユナへの接し方を変えている。

この状態でユナを敵視するメイがあの家にとどまっていたらどうなるのかは目に見えている話だった。

「ユリカ姉!話してよ!心変わりした理由教えてよ!」

メイが尋ねる。

「それはね・・・。」

ユリカは昨日の父の話をする。

もちろん母リイカの産まれもだ。

誰にも言わないという約束のもとの話だ。

「え・・・。お母さんが私たちの味方をしてくれた理由ってお父さんがユナを溺愛していて、私たちのことは普通に接してたから?え、つまりそれってただの嫉妬じゃ。っていうかもともとの原因お父さんじゃない?お父さんがユナだけを可愛がらなければお母さんは嫉妬しなかったでしょ。そもそも実の娘に嫉妬するお母さんもお母さんだけどさ。」

メイはぶつぶつという。

「ユナが悪くないのはもともと知ってたけど・・・。でもやっぱりなんかいやだな。ユナだけ可愛がられてるの。私も少しは気にしてもらえないかな?こういうの嫉妬っていうの?」

「そう、それが嫉妬だよ。気にしてほしければ、ま・・・素直になることから始めたらどう?」

「素直・・・。」

メイが考え込む。

「自分の気持ちに忠実になったらさ、メイはきっとユナのこと虐めちゃうでしょ。だから素直になってその気持ちを皆に伝えてみたらどう?少なくともお父さんは私たちのこと嫌ってないし、きっと話せば分かってくれるよ。」

ユリカの言葉にメイは小さくうなずいた。

「わかった。そうする。」

「がんばれメイ。メイならやればできるから。」

ユリカの応援の言葉にメイは今度は大きくうなずくのだった。







「ごめんお父さん。お待たせ。」

「ちゃんと話せたか?」

戻ってきたユリカとメイ。

シュンはユリカに尋ねる。

「ん。話せたよ。もうこれで大丈夫だよ。」

きっとだけど、というとユリカは荷物を持って迎えの馬車に近づく。

「親戚が馬車をよこしてくれた。この時間に出ればお昼ごろにつくだろう。」

「お父さん、いろいろありがとう。私のこと大切にしてくれる人見つけるから待っててね!お母さんもこの前は本当にごめんなさい。」

ユリカはシュンにお礼を言った後、ユナの隣に立つリイカに向き直る。

「もういいよユリカ。メイも。私も少し言い過ぎたわ。ちょっと感情的になっていたわね。最近疲れがたまってるから・・・。情緒不安定なのかも。」

リイカが額をおさえ少しよろつく。

「リイカ、大丈夫か?」

血相を変えたシュンが駆け寄り、リイカを支える。

「ありがとう、シュン。」

「立ち眩みか?」

心配そうにシュンが尋ねる。

「少し・・・。でもちょっと静かにしてれば治るのよ。」

「今度病院に行ってみよう。」

「うん。」

リイカがうなずいた。

「さ、リイカは家に戻っていた方がいいね。じゃあ・・・。」

「あ、私ついてくよ。お母さん大丈夫?」

シュンがリイカが家に戻るのに付き添いを誰にしようかと考えていた時、ユナが手をあげた。

「じゃあ、ユナ。頼めるか?」

「うん。」

ユナはリイカを支えながら歩いていく。

途中ユナは振り返った。

「お姉ちゃん、気を付けてね。」

その言葉にユリカは固まった。

そのまま、ユナとリイカは去って行く。

「それでだ、ユリカ。お迎えにお前たちの従兄が来てくれた。」

シュンが言う。

すると馬車から見目麗しい青年が降りてきた。

「初めまして、レディ。サイモン・ノッガーと申します。」











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