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農家の三女
ユリカの誕生日
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「ユナ、お米研いでおいてくれた?」
ユナは辺境の農家の三女。
母に似て可愛らしい容姿をしている。
将来お貴族様にでも見初められるのではないかと淡い期待を抱いた両親は農家としての仕事をさせなかったし覚えさせなかった。
貴族でなくても裕福な家に嫁げるようにと両親はユナを手塩にかけて育てた。
ユナには2人の姉と1人の兄がいた。
3人とも父に似ていて可愛いと言われるような容姿ではなかった。
兄は父に似てよかったと言っていた。
でも、姉2人は父親に似たことを後悔し、ユナを羨んだ。
羨まれた方はたまったものじゃない。
ユナの仕事は洋服をたたむ、お米を研ぐ、玄関前の掃除など体力がなくてもできるものばかりだ。
今日は母リイカは近所のおばさまたちとの交流会に行く。
週に2日あり、交流会がない日は家事など家の仕事をする。
リイカが家にいる日はユナは暇になる。
その時は、ユナは兄の手伝いをする。
姉ユリカとメイが刈った稲を兄シュウが束ねて一つにする。
父シュンはシュウがまとめた稲をいくつかまとめてかついで家までもっていくのだ。
ユナがシュウの手伝いに来るたびにユリカとメイは舌打ちをした。
姉妹なのにユナだけがはじかれている気がしてユナはいつも落ち込んでいた。
「どうしたの、ユナ?」
リイカが不思議そうにユナを見る。
「ううん。何でもないよ。ちょっと考え事してたの。お米研いでおいたよ。」
ユナは台所にある釜を指さす。
「いつもありがとね。」
リイカが言うとユナは少し寂しそうに首を振った。
「お礼なんて言われる筋合ないよ、お母さん。だって私お家のお仕事の手伝いほとんどできてないじゃん。」
「そんなこと気にしなくていいのよ。ユリカとメイも少し嫉妬しているだけだから。」
そのうちおさまるわよ、とリイカが言う。
(あの様子だとおさまるわけがないと思うんだけど。お母さんって私を可愛がるわりにはいつもお姉ちゃんたちの味方するよね。)
ユナは内心不満に思いながらもうなずいた。
「そうかな。」
「たっだいまー!」
姉のユリカとメイが帰ってきた。
「もーちょー疲れたんですけど。誰かさんが仕事しないせいで。」
ユリカとメイはユナの方を見ながら言う。
「おかえり。夕食できてるよ。・・・あれ、シュウとシュンは?」
お玉を片手に出迎えたリイカは二人の後ろにシュウがシュンがいないことに気づいて首を傾げる。
「なんか、誰かさんがいないせいで終わんないんだって。」
ユリカはユナを見てクスクスと笑う。
「ふーん、そうなの。ユナ、明日からは家のことが終わったら手伝いに行ってちょうだい。」
リイカは振り返ると言う。
「うん、わかった。」
ユナがうなずくとリイカの後ろでユリアとメイがひそひそと話している。
「あら、おかえりシュン、シュウ。お疲れ様。」
リイカは二人の帰りに気づき、嬉しそうに言う。
「「ただいま。」」
二人は出迎えたリイカに言う。
「今日はユリカの誕生日だから豪勢にしたのよ。」
テーブルの上にはいつもよりもたくさんのお皿がのっている。
豚の丸焼きは近所で牧場を営んでいる夫婦からもらったもの。
牛肉のソテーの牛肉は国産のブランド牛を使っている。
このブランド牛はユナの幼馴染ミーネの実家である商家から誕生日だからということで安く売ってもらえたのだ。
野菜は近くの直売所で売られている新鮮な野菜を使った野菜炒め。
お米は家で作ったお米を。
デザートはリイカの手作りのアイスクリームだ。
「んー。おいしい!」
主役であるユリカは取り分けた料理を一番最初に食べる。
「この牛肉最高!毎日食べれたらいいのになあ。」
ユリカはちらっとユナを見る。
「ユナはいいよね。将来お金持ちのところに嫁ぐんでしょう?おいしいもの食べたい放題じゃん。」
羨ましいな、とユリカが言う。
「そうだね。私たちの分もいっぱい食べてきてくれなきゃね。」
(そうだね。私たちの分もいっぱい食べてふとって捨てられればいいのに。)
メイがクスクスと笑う。
「それはおいといて、お前もう16歳だぞ。早く結婚相手見つけて結婚しないとな。誰か相手はいるのか?」
シュンがナイフとフォークを置き、尋ねる。
「お父さんも知ってるでしょ?村の若い男たちはみーんなユナにぞっこんよ。相手なんかいるわけないでしょ。」
ユリカは憎々し気に言う。
「・・・そうか。それなら近くに大きな町があるだろう。そこに行ってみないか?俺の親戚がそこに住んでいるんだ。婚活ぐらいさせてもらえるだろう。どうする?連絡しておこうか?」
「そうね、お願いしてもいい?」
ユリカは少し考えた後うなずいた。
「わかった。」
「えーお姉ちゃんばっかずるい。私も婚活したい。」
不満そうな表情をしたメイが言う。
「メイはまだ14歳でしょ。まだ結婚適齢期じゃないんだからいいでしょ。そんな二年も先のこと考えてどうするのよ。」
リイカが呆れたように笑う。
結婚適齢期は16歳から18歳の間。
ユリカはちょうど今日、結婚適齢期に入ったのだ。
「えー、ちょっとお母さん何言ってるのよ。16歳になってから相手探したって二年で結婚できるわけないじゃん。付き合って、性格があっているか確認して、あとは財力?追加でちゃんした職につけるのかもろもろ確認しなくちゃいけないんだから二年じゃ足りないって。」
「は?じゃあ何?メイは私がいい結婚ができないって言いたいの?」
――――――――――――――――――――――
『無能と称され婚約破棄された精霊の愛し子は国を見切ります』と関連のある話です。
『無能と称され婚約破棄された精霊の愛し子は国を見切ります』を読んだ後の方が話の内容が分かりやすいと思います。
ユナは辺境の農家の三女。
母に似て可愛らしい容姿をしている。
将来お貴族様にでも見初められるのではないかと淡い期待を抱いた両親は農家としての仕事をさせなかったし覚えさせなかった。
貴族でなくても裕福な家に嫁げるようにと両親はユナを手塩にかけて育てた。
ユナには2人の姉と1人の兄がいた。
3人とも父に似ていて可愛いと言われるような容姿ではなかった。
兄は父に似てよかったと言っていた。
でも、姉2人は父親に似たことを後悔し、ユナを羨んだ。
羨まれた方はたまったものじゃない。
ユナの仕事は洋服をたたむ、お米を研ぐ、玄関前の掃除など体力がなくてもできるものばかりだ。
今日は母リイカは近所のおばさまたちとの交流会に行く。
週に2日あり、交流会がない日は家事など家の仕事をする。
リイカが家にいる日はユナは暇になる。
その時は、ユナは兄の手伝いをする。
姉ユリカとメイが刈った稲を兄シュウが束ねて一つにする。
父シュンはシュウがまとめた稲をいくつかまとめてかついで家までもっていくのだ。
ユナがシュウの手伝いに来るたびにユリカとメイは舌打ちをした。
姉妹なのにユナだけがはじかれている気がしてユナはいつも落ち込んでいた。
「どうしたの、ユナ?」
リイカが不思議そうにユナを見る。
「ううん。何でもないよ。ちょっと考え事してたの。お米研いでおいたよ。」
ユナは台所にある釜を指さす。
「いつもありがとね。」
リイカが言うとユナは少し寂しそうに首を振った。
「お礼なんて言われる筋合ないよ、お母さん。だって私お家のお仕事の手伝いほとんどできてないじゃん。」
「そんなこと気にしなくていいのよ。ユリカとメイも少し嫉妬しているだけだから。」
そのうちおさまるわよ、とリイカが言う。
(あの様子だとおさまるわけがないと思うんだけど。お母さんって私を可愛がるわりにはいつもお姉ちゃんたちの味方するよね。)
ユナは内心不満に思いながらもうなずいた。
「そうかな。」
「たっだいまー!」
姉のユリカとメイが帰ってきた。
「もーちょー疲れたんですけど。誰かさんが仕事しないせいで。」
ユリカとメイはユナの方を見ながら言う。
「おかえり。夕食できてるよ。・・・あれ、シュウとシュンは?」
お玉を片手に出迎えたリイカは二人の後ろにシュウがシュンがいないことに気づいて首を傾げる。
「なんか、誰かさんがいないせいで終わんないんだって。」
ユリカはユナを見てクスクスと笑う。
「ふーん、そうなの。ユナ、明日からは家のことが終わったら手伝いに行ってちょうだい。」
リイカは振り返ると言う。
「うん、わかった。」
ユナがうなずくとリイカの後ろでユリアとメイがひそひそと話している。
「あら、おかえりシュン、シュウ。お疲れ様。」
リイカは二人の帰りに気づき、嬉しそうに言う。
「「ただいま。」」
二人は出迎えたリイカに言う。
「今日はユリカの誕生日だから豪勢にしたのよ。」
テーブルの上にはいつもよりもたくさんのお皿がのっている。
豚の丸焼きは近所で牧場を営んでいる夫婦からもらったもの。
牛肉のソテーの牛肉は国産のブランド牛を使っている。
このブランド牛はユナの幼馴染ミーネの実家である商家から誕生日だからということで安く売ってもらえたのだ。
野菜は近くの直売所で売られている新鮮な野菜を使った野菜炒め。
お米は家で作ったお米を。
デザートはリイカの手作りのアイスクリームだ。
「んー。おいしい!」
主役であるユリカは取り分けた料理を一番最初に食べる。
「この牛肉最高!毎日食べれたらいいのになあ。」
ユリカはちらっとユナを見る。
「ユナはいいよね。将来お金持ちのところに嫁ぐんでしょう?おいしいもの食べたい放題じゃん。」
羨ましいな、とユリカが言う。
「そうだね。私たちの分もいっぱい食べてきてくれなきゃね。」
(そうだね。私たちの分もいっぱい食べてふとって捨てられればいいのに。)
メイがクスクスと笑う。
「それはおいといて、お前もう16歳だぞ。早く結婚相手見つけて結婚しないとな。誰か相手はいるのか?」
シュンがナイフとフォークを置き、尋ねる。
「お父さんも知ってるでしょ?村の若い男たちはみーんなユナにぞっこんよ。相手なんかいるわけないでしょ。」
ユリカは憎々し気に言う。
「・・・そうか。それなら近くに大きな町があるだろう。そこに行ってみないか?俺の親戚がそこに住んでいるんだ。婚活ぐらいさせてもらえるだろう。どうする?連絡しておこうか?」
「そうね、お願いしてもいい?」
ユリカは少し考えた後うなずいた。
「わかった。」
「えーお姉ちゃんばっかずるい。私も婚活したい。」
不満そうな表情をしたメイが言う。
「メイはまだ14歳でしょ。まだ結婚適齢期じゃないんだからいいでしょ。そんな二年も先のこと考えてどうするのよ。」
リイカが呆れたように笑う。
結婚適齢期は16歳から18歳の間。
ユリカはちょうど今日、結婚適齢期に入ったのだ。
「えー、ちょっとお母さん何言ってるのよ。16歳になってから相手探したって二年で結婚できるわけないじゃん。付き合って、性格があっているか確認して、あとは財力?追加でちゃんした職につけるのかもろもろ確認しなくちゃいけないんだから二年じゃ足りないって。」
「は?じゃあ何?メイは私がいい結婚ができないって言いたいの?」
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『無能と称され婚約破棄された精霊の愛し子は国を見切ります』と関連のある話です。
『無能と称され婚約破棄された精霊の愛し子は国を見切ります』を読んだ後の方が話の内容が分かりやすいと思います。
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