レベルMAXのプレイヤー、心機一転レベル１からがんばります！

第１章 グラスディテにて

心機一転

「リリィ様。そのようなお顔をなさってなにかお悩みでもあるのですか？」
裏世界の最大級の大きさを誇る街シャリンライドの一番奥にある一際大きなお城の最上階にある部屋。最も大きく豪華で立派な部屋。部屋の奥には玉座があり、そこに銀髪のかわいらしい少女が座っている。日の光にきらきらと輝く銀髪は何よりも美しい。たとえそれがつくられたものであったとしても。少女は玉座の脇に控える若い女性に言う。
「公式ではない場所でリリィと呼ばないでと何回もいっているでしょう。」
リリィはため息まじりに女性に言う。
「では、天帝ハル様とお呼びしますね？」
女性はニコニコと声をたてずに笑う。
「ふざけてるのっ！？」
リリィの怒声に女性はコロコロと笑う。
「いえいえ。では、なんとお呼びすればよろしいですか？」
「そうねぇ。じゃあ、師匠とかどう？」
リリィの案に女性はえ、と息を飲む。
「ほら、私ってこんなみてくれでも一応レベルMAXじゃん？リリィに魔法も教えてるじゃん！だから師匠っていいかな～なんて。どうかな？」
リリィの言葉に女性は嬉しそうに何回もうなずいた。
「もちろんです！師匠と呼ばせて頂きます！」
ふと、リリィが窓をみた。窓から見える景色は街並み。
「・・・ねぇ。もし私が１からやり直したいって言ったらセリアはどう思う？」
ポツリとこぼれた言葉に女性セリアは声を失った。突然何を言い出すのかと呆気にさえとられた。
「別にデータを全部消すとかじゃないよ。」
セリアの様子に気づいたリリィは苦笑して言う。
「だってデータを消したら今までの思いでも全部消えちゃうじゃん。」
誰かに語りかけるようではない。自分自身に言い聞かせるようなそんな感じだった。
「心機一転という事ですか？」
ショックからようやく立ち直ったセリアはたずねた。
「んー、まぁそんな感じだね。ちょっと疲れちゃったんだ。ほら、回りのプレイヤーの人たちが私に向ける目がさ。外に出たらずっと付きまとうんだ。誰の目も気にしないでゲームを楽しめた最初の頃がどんなによかったかってつい最近思ったの。こういうのを初心にかえるって言うんだっけ？」
リリィはなんとも言えない表情で笑う。乾いた笑みだった。疲れきった表情はすごく苦しそうだった。
「その事でね、いろいろと話したいこととか、決めたいこととかあるから今から３時間後に私の弟子を全員ここに呼んでおいて欲しいの。頼めるかな？」リリィはセリアに笑いかける。
「もちろんです。」
セリアは頭を下げると部屋を出た。

セリアはリリィの最初の弟子がいるであろう城の最南端の部屋へと歩き出した。