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夜会

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「お兄様、どうしてあの方いるのかしら?」

ハッシュ大公家でひらかれた夜会に早々に会場入りしたトリシアはエスコート役の兄ヴィンセントに言った。

その視線の先には元夫のリトラ公爵の姿が。

まだ開催主であるハッシュ大公家当主オルレン大司教が来ていないにも関わらず給仕にワインを持ってくるように指示し、我が物顔で振舞っている。

「まるで自分こそが主役とでも言いたげだな。」

「国王陛下には伝えたんでしょう?」

「ああ。」

ヴィンセントは短く返事をするとトリシアに言った。

「ハッシュ大公閣下がいらっしゃるまで友人たちとでも話してなさい。僕は少し用事ができたからね。」

そう言うとヴィンセントはトリシアの頭を優しく撫でて、リトラ公爵のもとへと歩みを進めた。

明らかに浮いているリトラ公爵の周りには誰もおらず、だからこそ近づいていくヴィンセントが目立った。

「お久しぶりトリシア。」

「あら、エミリー。会えてうれしいわ。」

トリシアが微笑むとエミリーは興味深々といったようにヴィンセントとリトラ公爵を見た。

「ねぇ、トリシア。あのお2人喧嘩でもするの?」

「さぁ?だけどただ1つ言えるのはリトラ公爵様が招待状なしで会場入りしているということね。」

「あら、どうして?」

「オルレン大司教様には私宛に夜会の招待状が届いていたの。普通夫婦別々には送らないわ。宛名が私だけということはリトラ公爵様には来ていなかったということでしょう。それに大司教様には離縁届の件でお世話になったもの。次の日にはシュナイダー侯爵家の私宛に招待状が来たわ。ああ、エミリーのも届いたわよ。来週よね。出席するわ。」

「トリシアが来るのは楽しみにしてるけど・・・だとしたら犯罪じゃない?」

エミリーとトリシアは不安そうにヴィンセントとリトラ公爵を見つめた。








一方王宮、国王の執務室で。

少し前からシュナイダー侯爵ことヴィンセントから話を聞いていた国王オルディス・フィス・ラテラルは悩んでいた。

「国王陛下、お悩みですか?」

宰相であるティセリカ公爵ことオーサー・ティセリカが声をかける。

「お前はリトラ公爵をどう思う?」

「どう思うとは?率直に申し上げて最低な人物ですね。まず浮気は国法第7条に違反します。この時点で降爵が確定します。次に子供を差別したとのことですがこちらは国法第3条に違反します。国法を2つ以上違反した場会、降爵に加えて鉱山での10年間の労働が定められますがリトラ公爵の場合王家の血をひいているので重く受け止め一生北の塔に幽閉となります。」

「そうだな、しかしだ。幽閉だけで足りるか?あの男ならば必ずや逃げようとするだろう。」

「ええ、確かにそうですね。それではこれはいかがでしょう?」

オーサーは何枚かの紙にまとめた案をオルディスに提出した。

「ほう、これは良いな。」

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