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16ヴァイン王国
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あの日のパーティー以来、ヴァイン王国王室は焦りに焦っていた。
相手がルディスラ帝国の第七皇女リリアナ・フィルア・ルディスラ殿下であったことを第三王子イージス・ヴァインが知らなかったということは婚約破棄いぜんの問題だ。
廃嫡は妥当、王籍剝奪も妥当なところとみられた。
しかしリリアナから告げられた条件は「廃嫡は同意するが王籍剝奪には同意しかねる」というものだった。
リリアナにどんな意図があったのかは容易には読めない。
ただ王籍剝奪されないという条件が必要な何かをするのではと王室は考え、ルディスラ帝国皇室の動きをよく観察していた。
このように婚約が破棄になってしまったイージスとリリアナだが、もともとは仲睦まじい婚約者だった。
小国ヴァイン王国と大国ルディスラ帝国では国力に差があり、普通なら結婚なんて認められない。
けれど、ルディスラ帝国は恋愛結婚主義国だった。
そのためリリアナに本当に好きな人ができるようにと、皇帝アイザック・フィルア・ルディスラはたくさんのパーティーをひらいた。
そのパーティーは他国の王太子、王子なども招待していた。
当然招待リストの中にはヴァイン王国の名も入っていた。
当初は第一王子ゼイラム・ヴァインと第二王子アセラス・ヴァインが参加するはずだった。
しかし一週間前になって第一王子ゼイラムが病にかかり出席が難しくなった。
つまり第三王子イージスは第一王子の代わりとして兄皇子アセラスとともにパーティーに参加したのだった。
王国側はパーティーでアセラスが見初められることはあっても、イージスが見初められることはないと思っていた。
恋愛結婚主義国とはいえどイージスは第三王子で一番王位継承には遠い。
第一王子ゼイラムは病気なので王位継承するのは難しくなっている。
今一番王位に近いのは第二王子アセラスだった。
大国ルディスラ帝国の愛され姫を娶ることができれば今後の支援や、国力の増加も期待できる。
ヴァイン王国はアセラスに多大なる期待を寄せて、イージスとともにルディスラ帝国に送り出した。
しかしいざ報告を聞くと見初められたのはまったく期待を寄せていなかったイージスの方だった。
だからといってルディスラ帝国の恋愛結婚主義国は政治的なことは何も考えていないというわけではないだろう。
ただ愛され姫には政治的なことは関係なく好きな人のところに嫁いでほしい、そう思ったが故の行動だったのだろう。
顔合わせはパーティーから一か月後と間をおかれて王国でひらかれた。
期間があいたのはただ単に帝国貴族や他の皇子、皇女の説明に時間がかかったから。
皆愛され姫であるリリアナを国外には嫁がせたくなかったのだ。
また王国で行われた理由はリリアナがそれを望んだから。
自分が嫁ぐ国がどんなところか見てみたいから。
ヴァイン王国の学園に通うことにしたのもそれが理由の一つだった。
休みの日は妃教育に王国貴族の令嬢たちとの親睦を深める茶会とたくさんの予定がありだんだんイージスとリリアナの二人だけの時間は少なくなっていった。
そして、二人の仲は決裂した。
王籍剝奪に同意しなかったのも以前好きだった相手が苦しむところは見たくなかったという思いがあるのかもしれないがそれは本人にしかわからないことだ。
帝国との同盟が破棄されないか、帝国から見放されないかが心配で、夜も眠れぬ日が続いていた国王ティンゼルはとある報告を聞いてとても喜んだ
『リリアナ殿下の名で支払いの行われない宿屋への宿泊がありました。』
相手がルディスラ帝国の第七皇女リリアナ・フィルア・ルディスラ殿下であったことを第三王子イージス・ヴァインが知らなかったということは婚約破棄いぜんの問題だ。
廃嫡は妥当、王籍剝奪も妥当なところとみられた。
しかしリリアナから告げられた条件は「廃嫡は同意するが王籍剝奪には同意しかねる」というものだった。
リリアナにどんな意図があったのかは容易には読めない。
ただ王籍剝奪されないという条件が必要な何かをするのではと王室は考え、ルディスラ帝国皇室の動きをよく観察していた。
このように婚約が破棄になってしまったイージスとリリアナだが、もともとは仲睦まじい婚約者だった。
小国ヴァイン王国と大国ルディスラ帝国では国力に差があり、普通なら結婚なんて認められない。
けれど、ルディスラ帝国は恋愛結婚主義国だった。
そのためリリアナに本当に好きな人ができるようにと、皇帝アイザック・フィルア・ルディスラはたくさんのパーティーをひらいた。
そのパーティーは他国の王太子、王子なども招待していた。
当然招待リストの中にはヴァイン王国の名も入っていた。
当初は第一王子ゼイラム・ヴァインと第二王子アセラス・ヴァインが参加するはずだった。
しかし一週間前になって第一王子ゼイラムが病にかかり出席が難しくなった。
つまり第三王子イージスは第一王子の代わりとして兄皇子アセラスとともにパーティーに参加したのだった。
王国側はパーティーでアセラスが見初められることはあっても、イージスが見初められることはないと思っていた。
恋愛結婚主義国とはいえどイージスは第三王子で一番王位継承には遠い。
第一王子ゼイラムは病気なので王位継承するのは難しくなっている。
今一番王位に近いのは第二王子アセラスだった。
大国ルディスラ帝国の愛され姫を娶ることができれば今後の支援や、国力の増加も期待できる。
ヴァイン王国はアセラスに多大なる期待を寄せて、イージスとともにルディスラ帝国に送り出した。
しかしいざ報告を聞くと見初められたのはまったく期待を寄せていなかったイージスの方だった。
だからといってルディスラ帝国の恋愛結婚主義国は政治的なことは何も考えていないというわけではないだろう。
ただ愛され姫には政治的なことは関係なく好きな人のところに嫁いでほしい、そう思ったが故の行動だったのだろう。
顔合わせはパーティーから一か月後と間をおかれて王国でひらかれた。
期間があいたのはただ単に帝国貴族や他の皇子、皇女の説明に時間がかかったから。
皆愛され姫であるリリアナを国外には嫁がせたくなかったのだ。
また王国で行われた理由はリリアナがそれを望んだから。
自分が嫁ぐ国がどんなところか見てみたいから。
ヴァイン王国の学園に通うことにしたのもそれが理由の一つだった。
休みの日は妃教育に王国貴族の令嬢たちとの親睦を深める茶会とたくさんの予定がありだんだんイージスとリリアナの二人だけの時間は少なくなっていった。
そして、二人の仲は決裂した。
王籍剝奪に同意しなかったのも以前好きだった相手が苦しむところは見たくなかったという思いがあるのかもしれないがそれは本人にしかわからないことだ。
帝国との同盟が破棄されないか、帝国から見放されないかが心配で、夜も眠れぬ日が続いていた国王ティンゼルはとある報告を聞いてとても喜んだ
『リリアナ殿下の名で支払いの行われない宿屋への宿泊がありました。』
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