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「リリアナ様、先ほどぶりでございます。」

お茶会の会場である春の宮へと足を進めるリリアナ達一行に、声をかけた者がいた。

お察しの通り、アポなし突撃をしたアーサー・ルネ・フィオレンス公爵が秋の宮と皇宮の渡り廊下、皇宮側の出入り口のところに立っていた。

「アーサー、あなたまだいたの?」

リリアナがあきれ顔で言う。

「お話したいことがありまして。」

「申し訳ないのだけど、私これからお姉様たちとのお茶会があるのよ。悪いのだけど後日でもよろしいかしら?」

リリアナが微笑むとアーサーはしぶしぶうなづいた。

「それでは明日またお会いしましょう。」

リリアナはアーサーの脇を通って、皇宮の中に足を踏み入れる。

皇宮の中は豪華絢爛そのものだった。

調度品はもちろん絵画も一流の職人が手掛けた作品だと一目でわかるほどの出来栄えだ。

それだけではない。

階段手すりやドアノブにいたるまですべて最高級品だ。

手すりに彫られた綺麗な模様はリリアナの大好きな物の一つだった。

さてルディスラ帝国皇都は皇宮を中心とした円状の都市である。

皇都のうち、皇宮以外の場所は三つに分けられる。

皇族街、貴族街、平民街だ。

皇族街は第七皇女リリアナの住む秋の宮、第三皇女ユフェリアが住む春の宮、第一皇子シスムが住む夏の宮、第一皇女ハルが住む冬の宮がある。

そして側妃、つまり皇妃三人の子、第二皇女と第四皇女、第五皇女はハルの住む冬の宮に居を構えている。

他の皇子と第六皇女は皇族街にそれぞれの宮を持っている。

しかしこの三人は自分たちは将来は軍人になる、というような根っからの脳筋であるためそんな豪華な宮はいらないと、皇族街に平民が住むような一軒家をたてようとしたのだ。

それを咎めた皇帝が何ならすでに軍人であるハルのところで寝泊まりし、剣や精霊術に関して教えてもらえということでハルの宮に居を構えている。

実際、ハルは仕事が忙しくほとんど宮には帰らないので、皇帝の思惑は外れたと言える。

今回お茶会が開かれるのは第三皇女ユフェリアが住む春の宮だ。

つまり主催者はユフェリアだ。

この実の姉はやることなすことが大胆なので、リリアナ達姉妹はいつもひやひやしていた。

今回、お茶会に呼ばれた時も、主催者がユフェリアだと聞いて、リリアナが青ざめたほどだった。

秋の宮は皇宮の西に、春の宮は皇宮の東にある。

つまり真逆なのだ。

皇宮は皇帝、皇后、皇妃たちが住むところであるためとにかく大きく、広い。

そこを端から端まで歩くとなると恐ろしい時間を要するのだ。

「リリアナ様、やはり馬車を用意した方が良かったのではないでしょうか?」

リリアナの後ろからついていく侍女のうちの一人が声をかけた。

「いいのよ、運動にもなるでしょう?」

リリアナの言葉に侍女たちは大きくうなづいた。

そのまま歩くこと20分。

ようやく皇宮の端が見えてきた。

そこから渡り廊下が伸びていて、その先に淡いピンク色の建物が見えた。

春の宮だった。

春の宮に到着し、宮の扉を守る護衛騎士にリリアナは名乗った。

「リリアナ様ですね。お待ちしていました、どうぞこちらへ。」

護衛騎士はリリアナを茶会の会場となっている庭に案内した。

「まあ、リリアナ!待っていたのよ!」

やって来たリリアナに気づいた第三皇女ユフェリアはドレスの裾をたくし上げて走って来た。

あまりの奇行にリリアナは呆気にとられた。

「お、お姉様!?」

他の皇女たちも驚いたような表情をする。

「お姉様、はしたないです。」

「そんなこと気にしなくていいのよ!ここには私達姉妹しかいないんだから!」

ユフェリアは皇女らしかぬ大声を出す。

実際は、リリアナを案内した護衛騎士、そしてリリアナ専属侍女たちがいる。

他の皇女の侍女は既に控室にいるようでこの場にはいなかった。

「さあ、リリアナ座って。今日皆に集まってもらったのは理由があるのよ。」

リリアナを椅子に座らせると、ユフェリアは芝居ががった様子で言う。

「早く本題に入りなさい。能天気で皇女教育もろくにせず遊び惚けているあなたと違って、私は忙しいのだから。」

そんなユフェリアに嫌味を何重にも重ねた棘のある声がかけられた。

「ハル姉様!そんなこと言わないでちゃんと私の話を聞いてください!」

「あー、はいはい。」

頬を膨らませて怒るユフェリアにハルはめんどくさそうに顔をそむけた。

「まったく、いい年してまだ子供のつもりなのかしら・・・?」

実際ユフェリアは結婚適齢期真っ只中の18歳。

本来なら婚約者の一人や二人・・・二人いたらだめだが・・・いてもおかしくはない。

しかしユフェリアにはほとんど縁談が来ないのだ。

理由は皇女教育をまったく身に着けていないこの無知さに、素直すぎる性格、そして精神年齢が幼すぎるからだ。

何度も教育係が変えられても、どの教育係も一週間で根を上げた。

「今日は、リリアナに特別なプレゼントがあります!」

そういった瞬間、リリアナの表情が固まった。

他の皇女たちの表情も固まっている。

ユフェリアの言うプレゼントは碌なものがないことは姉妹であればだれでも知っていることだった。









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更新遅くなりました。
学校のテストが控えているので更新はゆっくり遅めになります。
申し訳ありません。







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