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6 sideサーシャ

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リリアナ様が五歳、私が十七歳の時にサラサ様とシスム殿下が結婚した。

サラサ様が十七歳、シスム殿下が十八歳だった。

その時はまだフェデナント王国は存在していて、サラサ様とシスム殿下の結婚式にはフェデナント王国の両陛下も参列した。

サラサ様はとても幸せそうで、それを見る両陛下はどこかほっとしたような表情だった。

その時はまだ、まさかフェデナント王国が滅ぶだなんて思ってはいなかった。

事の発端はサラサ様とシスム殿下の結婚式から一年後の春のことだった。

平和で自然豊かなフェデナント王国に異変が現れた。

草木が枯れ、川の水は少なくなり、農業を営んでいた農民たちは異変にいち早く気づいていた。

けれど、その異変の報が国王陛下のもとに届くまでかなりの時間を要した。

フェデナント王国が国を挙げて異変の究明を進めようとしたときには遅かった。

建物の中に移動させていたはずの家畜たちが食われていることは日常茶飯事、ひどいときには家の中で寝ている住人を食い殺すこともあった。

被害は農村などの辺境に留まらなかった。

王都周辺まで被害が拡大していた。

フェデナント王国の隣国の国々でも徐々に被害が出始め、各国が対応に動き始めていた。

フェデナント王国だけの被害であれば他国に援助を求めることもできたかもしれないが、被害は他国にまで広がっている。

かといってサラサ様の嫁ぎ先であるルディスラ帝国に助けを求めることもできない。

何故なら、ルディスラ帝国はフェデナント王国とそれなりの距離があるからだ。

応援要請をしたところでいつつくか分からない。

そんなところに頼むわけにはいかなかったようだ。

そうこうしているうちに半年が過ぎ、世界を震撼させる一つの事実が駆け巡った。

『異変は魔の兆しなり』

それは創世神ミネルヴァが残した神託だった。

遅すぎる神託だった。

最初に『魔』と呼ばれるものが現れたのは何千年も前のことだ。

その時の記録にはこう示されている。

『魔』はこの世界に存在しない魔法というものを使った。

精霊術ではその魔法には太刀打ちできなかった。

何故なら精霊術は魔法よりも弱かったから。

『魔』は多くの部下を引き連れて現れ、たくさんの人を虐殺した。

異世界から召喚した勇者により、『魔』は一時的に封印された。

今は魔王、そう呼ばれる存在が封印されている場所こそがフェデナント王国であった。

『魔』が最初にあらわれたときも今回と同じような前兆があったそうだ。

サラサ様は故郷のことを思い、泣いた。

私はその時は既にリリアナ様に仕えていたから慰めたり、側にいることができなかった。

サラサ様は皇帝陛下に奏上した。

どうか我が故郷を助けてくださるよう。

その言葉を聞き入れた皇帝陛下はすぐに神官たちに異世界召喚の準備をさせた。

そして現れたのが近藤樹。

樹様はご自分が呼ばれた理由を理解し、同情し、協力してくださった。

樹様が呼ばれて半年、異変が現れてから約一年が経過した。

勇者としての修行も終わり、いざ異変の討伐に赴いた樹様が見たものは想像を絶するものだったそうだ。

フェデナント王国は既に王都をも破壊され王城を破壊しつくされ、跡形も何もなくなっていたということを後で樹様の口から聞いた。

『魔』の前兆は既に終わっていた。

フェデナント王国は封印が解けた魔王により滅ぼされた後だった。

樹様はお仲間と力を合わせて約三年後、リリアナ様が十歳の時、やっと魔王が封印された。

魔王の封印場所は同じくフェデナント王国があった場所だった。

三年もかかっているのだから当然フェデナント王国と同じ異変に苦しめられていた国も地図から消えていた。

サラサ様はフェデナント王国が消えたことを何よりも悲しんだ。

かの地に魔王が封印されている限りサラサ様は今は亡きフェデナント王国があった土地に足を踏み入れることはできない。






リリアナ様がヴァイン王国に留学して、半月後、サラサ様の妊娠が判明した。

あの時の嬉しそうな笑顔を最後に見たのは、結婚式の時であったことを思い出し、私は悲しくなった。

でも、私も泣いてはいられない。

あともう少しでリリアナ様が戻られる。

そしたら、私がもうここに留まることができないことを伝えなくてはいけない。

それが何よりも心苦しい。






















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