魔法少女に転生したけど、俺はオジサンです

第12話: 「オッサン少女、世界を救う」

異世界に転生し、見た目は魔法少女、中身は45歳独身オッサンの俺、田中和也。これまでビール魔法や筋力、そしてオッサン特有のギャグでこの異世界を守り、人々を笑顔にしてきたが、ついに迎えるべき時が来た。魔王との決戦だ。

俺は村の人々の期待を背負い、決戦の場へと足を運んでいた。心の中では不安が渦巻いていたが、同時にこれまでの経験が自分を支えていることを感じる。異世界に転生してから、ただのオッサンではなく、リリィという魔法少女として成長してきた。だが、魔王を倒すには、今まで以上の力が必要だ。

「さあ、いよいよだな…」

俺は自らを奮い立たせ、魔王城の門を開け放った。

暗い広間の奥に、魔王は待ち構えていた。黒いマントを身にまとい、冷たい瞳で俺を見つめる。今までの敵とは違う圧倒的な存在感が、俺を襲う。

「やっと来たか、魔法少女リリィ。いや、田中和也…中身はオッサンだな」

魔王は俺の本当の姿を見抜いていた。俺の中身がオッサンであることも、全て知っているようだ。

「ふん、そうだよ。中身は45歳のオッサンだ。だけど、この異世界じゃ俺が魔法少女リリィだ。だから、お前を倒すために来た！」

俺は拳を握り、魔王に向かって一歩踏み出した。だが、魔王は冷静な表情のまま、ゆっくりと立ち上がる。

「リリィ、貴様の力など俺には通じない。お前が召喚するビールや、オッサン的な力でこの俺を倒せると思うか？」

「いや、オッサンの力を甘く見るなよ。これまでだって、俺はこの力で異世界を守ってきたんだ！」

そう言いながら、俺は手をかざし、いつものビール缶を召喚した。だが、今回は違う。これまでの戦いで培った魔力を総動員し、俺の魔法を極限まで強化する。

「行け、ビールボンバー！」

俺の全力のビールボンバーが炸裂し、魔王に向かって一直線に飛んでいった。だが、魔王はその攻撃を軽々とかわし、ニヤリと笑った。

「その程度の力で、俺を倒せると思うなよ！」

魔王は黒い炎をまとった剣を振りかざし、俺に向かって強力な一撃を放ってきた。俺は瞬時に身をかわすが、その威力は凄まじく、地面が割れ、広間全体が揺れた。

「やばい…強すぎる！」

俺は内心焦りながらも、これまでの戦いで学んだことを思い出す。ビールやつまみを召喚して戦うだけでは、魔王には勝てない。だが、俺はこの異世界で多くの人々と出会い、彼らに笑顔や癒しを与えてきた。そんな自分の力を信じるしかない。

「俺には、みんながいるんだ…！」

そう呟いた瞬間、俺の体が光り始めた。ビール魔法だけでなく、これまで村人たちに届けてきた癒しや笑いが、俺の中に新たな力を与えてくれていたのだ。

「なんだ、この光は…？」

魔王も驚いた様子で俺を見つめる。俺の体から溢れ出した光は、ただの魔力ではない。村人たちの思い、彼らの笑顔や感謝の気持ちが、俺に力を与えているのだ。

「行くぞ…オッサンパワー、全開だ！」

俺は再びビール缶を召喚し、今度はそのビールに村人たちの思いを込めた。ビールの缶は光り輝き、まるで小さな太陽のような力を放っている。

「この一撃で…終わりだ！ ビールソーラー！」

俺の渾身の力を込めたビールソーラーが魔王に向かって放たれた。魔王はその力に驚き、剣で防ごうとするが、ビールソーラーの光が彼を包み込み、黒い炎を消し去った。

「ぐわあああああっ…！ こんな…力が…！」

魔王は叫び声を上げながら崩れ落ち、そのまま光の中に消えていった。

「終わった…」

俺は倒れた魔王を見つめ、ようやく肩の力を抜いた。これまでの異世界での戦いが、今ここで結実した瞬間だった。

村に戻ると、村人たちが大歓声で俺を迎えてくれた。

「リリィ様、ありがとうございます！ 魔王を倒してくれて！」

「リリィ様がいてくれたおかげで、私たちはこれからも安心して暮らせます！」

俺は少し照れながらも、村人たちの声援に手を振って応えた。確かに中身はオッサンだが、この異世界では俺が救世主となり、人々を救うことができたのだ。

「いやあ、やっぱりオッサンでもやれるもんだな」

俺はそう呟きながら、再びビールを召喚し、村人たちと一緒に乾杯した。異世界での戦いは終わったが、これからは「オッサン的な癒し」をもっと広げていくつもりだ。

「さあ、これからも俺らしく…行くか！」

こうして、魔法少女リリィ（中身はオッサン）の物語は幕を閉じた。しかし、異世界での俺の冒険はまだまだ続く。次なる挑戦が、俺を待っているかもしれない。だが、どんな時でもオッサンらしく、笑いとビールで乗り越えていく。

「オッサンでも、世界を救えるんだよな」

俺はそう言って、今日もまた一杯のビールを飲み干した。