魔法少女に転生したけど、俺はオジサンです

第7話: 「宿敵との初戦、オッサン的魔法炸裂」

俺、田中和也。45歳、独身のオッサンだ。異世界で「魔法少女リリィ」として転生してからというもの、ビール魔法や筋力でモンスターを倒してきた。村の人々は俺を救世主として崇めてくれているが、魔法少女としてのキュートな魔法はまるで使えない。俺の魔法は完全にオッサン的だ。

だが、平和な日常も長くは続かない。村に訪れる更なる脅威、そして俺がこの世界で初めて向き合う「宿敵」が、ついに現れる時が来た。

ある日、村の見張り役の少年が、慌てた様子で村長の元に駆け込んできた。

「村長！ 大変です！ 魔王軍の指揮官が村に向かってきています！」

「何だと！？」

村長が驚き、俺の方を見つめる。村がモンスターに襲われることは何度かあったが、魔王軍の指揮官が直接やってくるのは初めてだ。

「リリィ様、お願いです…村をお救いください！」

俺は一瞬躊躇したが、オッサン的な意地で決意を固めた。これまでの戦いは偶然や筋力で何とかなったが、今回は「魔王軍の指揮官」。つまり、ただのモンスターとは違い、知恵も力も持った相手だ。

「よし、わかった。俺が行くしかないな…」

俺は深呼吸をし、村の外に向かった。ミナや村の若者たちも不安そうな顔をして見守っているが、ここで逃げるわけにはいかない。

村の外れに到着すると、遠くから一人の男が歩いてくるのが見えた。黒い鎧に身を包み、目つきの鋭い男。俺は直感的に、この男がただ者ではないことを感じ取った。

「…来たな、宿敵か」

男は俺を見据え、冷たく笑った。

「ようやく現れたか、魔法少女リリィよ。お前がこの村を守っているという噂は聞いていたが、見た目に反して強いと聞いている。だが…見たところ、ただの小娘だな」

「…小娘？」

俺は心の中で苦笑した。見た目は魔法少女、でも中身は45歳のオッサンだ。小娘と言われるのも仕方がない。

「お前は誰だ？ 何のためにこの村に来たんだ？」

「俺の名はクロード。魔王軍の指揮官だ。お前を倒すためにここまで来たのさ。お前がこの村を守る限り、俺たちの計画が進まない。だから、この場で決着をつける」

クロードは悠然と剣を構え、俺を睨んだ。俺はビール魔法でこれまでなんとかしてきたが、相手が魔王軍の指揮官ともなれば、今までのやり方では通用しないかもしれない。だが、ここで逃げるわけにはいかない。

「…俺はこの村を守るために、戦うしかないってわけか」

クロードは一瞬の隙をついて、素早く俺に向かって剣を振り下ろしてきた。俺は咄嗟に身をかわすが、その動きの鋭さに驚いた。まるで現実世界での剣道の達人とでも戦っているかのような感覚だ。

「こいつ…強い！」

だが、俺もここで怯んではいられない。俺はすかさず手をかざし、必死に魔法を発動しようとした。頼む、今度こそ可愛らしい魔法を出してくれ…！

「ビール、召喚！」

やっぱり出てきたのはビール缶だった。俺は思わず苦笑したが、ビールで戦うのも慣れてきた。全力でクロードに向かってビール缶を投げつけた。

「これでも食らえ、ビールボンバー！」

ビール缶はロケットのように飛び、クロードの鎧に直撃。だが、彼は驚くほど素早く反応し、剣でビール缶を弾き飛ばした。

「そんなものが俺に通用すると思うか？」

「くそっ…！ これじゃ効かないか！」

俺は焦った。筋力とビール魔法を駆使して戦ってきたが、クロードは明らかに今までの敵とは違う。素早い動き、強力な剣技、そして何より冷徹な表情。これまでのモンスターとは一線を画している。

「魔法少女リリィと言われてはいるが、貴様は大したことはないな」

クロードの言葉に俺は内心で苛立ちを感じた。確かに、俺の魔法はオッサン的だし、可愛らしい魔法なんて使えない。だが、だからといって村を見捨てることはできない。俺はもう一度決意を固め、クロードに向かって突進した。

「筋力なら負けねえぞ…！」

俺は全力でクロードに拳を振り下ろした。クロードは驚いた様子で受け止めようとしたが、俺の筋力は尋常じゃない。「オッサン的筋力」を駆使して、クロードを押し返すことに成功した。

「この…力、何だ！？」

「これが、俺の…オッサンの力だ！」

俺は再び拳を振り上げ、クロードに攻撃を仕掛けた。まるで格闘ゲームのように、筋力を全開にして戦う。ビール魔法は効かないかもしれないが、俺の肉体そのものが武器となることがわかってきた。

クロードは少しずつ後退し、明らかに俺の力に驚いている様子だった。俺はこのチャンスを逃すまいと、さらに攻撃を仕掛けた。

「オッサンパワー、全開だ！」

俺は全力で拳をクロードに打ち込んだ。クロードは剣で防ごうとするが、俺の筋力に押され、ついに地面に倒れ込んだ。

「…やった！」

俺は勝利を確信した。しかし、その瞬間、クロードは不敵に笑いながら立ち上がった。

「ふん、さすがだな…だが、これで終わりではない」

そう言うと、クロードは突然消え去り、姿を消した。俺は驚きながらも、なんとか初めての宿敵との戦いに勝利したことを実感した。

村に戻ると、村人たちは歓声を上げて俺を迎えてくれた。

「リリィ様！ 勝ったんですね！」

「ええ、まあ…なんとかね」

俺は少し照れくさくなりながらも、初めての宿敵との戦いを乗り越えたことで、自分の力に少し自信を持ち始めていた。だが、クロードは完全に倒れたわけではなく、まだ魔王との戦いは続く。

俺はオッサン的な魔法と筋力で、次の試練に備えるしかない。