16 / 35
【第三章】
この手を放せば⑥
しおりを挟む 翌日、キースはキラを胸に抱き、イオと共にワイトデ自治区へと向かった。
『移動』してしまうので、時間はかからない。
イオの屋敷の敷地内に『移動』してきて辺りを見回した。
数日前までは灰色に染まっていた町も、色を取り戻していた。
イオに聞くと、町中の灰は、風を扱える者が集めて袋に入れ、町外れに回収しているらしい。
そこから必要な分だけもらっていって、水捌けの悪い土地の土に混ぜて作物を作ったり、土嚢として使うらしい。
過去にもそうやって灰を利用して来たそうだ。
屋敷の中には入ると、領主、イオの両親がいて、お礼を言われた。
ここへ来てくれたおかげで、長引かず住民達も早く家に帰れる事になって、喜んでいると。
そしてチハヤに服を着替えされされ、彼らに連れられて、近くの社に来ていた。
そこはワイトデ自治区のアリミネ火山を祀る社。
そして、多くの人が集まりザワザワとしていたが、キースがキラを連れて姿を現すと、辺りはシーンと静まり返る。
キラは驚いたのか、キースの服にしがみついて離そうとはしない。
そんなところも可愛い…などと思っていると、イオに社の前に立つように言われ、こっそりと耳打ちされる。
「炎の結晶石をここで作って見せれるか?」
「…う~ん。どうだろう…」
キースは抱えていたキラを地面に降ろし、隣に座り込む。
「キラ、ギュウッて、熱を集めれる?」
キースが聞くとキラはじっとキースを見て、空を見上げた。
風が吹き始め、キラの頭上に集まり始める。
…始まった。
「イオ。炎の結晶石を冷やす場所はある?」
「社の池を使うと良い」
そう言って、イオは隣に有る池を視線で示す。
「お湯が涌き出ている池だから、冷たくはないが…」
無いよりはましだろう。
そんな会話をしているうちに、キラの頭上に炎の結晶石が赤くキラキラと輝いていた。
回りにいるもの達は、その美しさに見惚れている。
風が収まり、落ちてくる炎の結晶石をキースは風で包み込み、落下する場所をイオが言った池へと誘導する。
ポトンと音がして、水蒸気が舞い上がった。
辺り一面、真っ白な水蒸気に包まれ、しばらくすると次第に収まり、視界がもとに戻っていく。
イオが池に入り、炎の結晶石を拾ってきて、キラのもとへ持って来た。
そしてキラの前に膝を付いて、炎の結晶石を掲げた。
「キラ様。我らワイトデ自治区は、キラ様をアリミネ火山の守護竜としてお慕いいたします。どうぞ、お守りください」
イオがそう言うと、回りにいた人々も膝を付いて座り込み、頭を下げた。
ギュウッ!
キラがそう鳴くと、イオは微笑みキラの頭を撫でる。
「よろしく。キラ様」
キラは撫でられて気持ち良さそうに目を細める。
そして、社で宴会が始まった。
キラの前にいろんな食べ物が運ばれてきて、キラは興味深々に覗き込み、キースが食べるとキラも口を開けて催促する。
キースは少量づつ手のひらに乗せて、キラに食べさせていた。
…何でも食べるんだ。
そこへチハヤが近づいてくる。
「キラちゃん。美味しい?」
ギュウッ!
チハヤはニコニコ微笑んで、手のひらに果物を乗せてキラに食べさせてあげる。
「…お祭り騒ぎになっちゃったね」
ぽそりとチハヤが言ってくる。
「キラが認めてもらえれば良いよ。…でもこれが、後三回続くと思うと、そっちの方が気が重い…」
キースが苦笑いすると、その言葉にチハヤは笑った。
キラが炎の結晶石を作れるのは一日一個までだ。
その日の気温と、お腹の減り具合にもよる。
初めて炎の結晶石を作ったときは、お腹が減りすぎて貪るように作って食べていたらしい。
魔力の制御をするようになって、人族と同じ食べ物を食べるようになって、身体と魔力のバランスが取れるようになってきたようだ。
明日は熊族の町に行く。
賑やかな宴が終わり、イオの屋敷の客室でキラと一緒の部屋で眠った。
夜中に重くて目が覚めると、キースが眠るベッドの掛け布団の上に丸くなって、キラが眠っていた。
…キラは良い子だ。
キースは微笑みを浮かべて再び眠りについた。
『移動』してしまうので、時間はかからない。
イオの屋敷の敷地内に『移動』してきて辺りを見回した。
数日前までは灰色に染まっていた町も、色を取り戻していた。
イオに聞くと、町中の灰は、風を扱える者が集めて袋に入れ、町外れに回収しているらしい。
そこから必要な分だけもらっていって、水捌けの悪い土地の土に混ぜて作物を作ったり、土嚢として使うらしい。
過去にもそうやって灰を利用して来たそうだ。
屋敷の中には入ると、領主、イオの両親がいて、お礼を言われた。
ここへ来てくれたおかげで、長引かず住民達も早く家に帰れる事になって、喜んでいると。
そしてチハヤに服を着替えされされ、彼らに連れられて、近くの社に来ていた。
そこはワイトデ自治区のアリミネ火山を祀る社。
そして、多くの人が集まりザワザワとしていたが、キースがキラを連れて姿を現すと、辺りはシーンと静まり返る。
キラは驚いたのか、キースの服にしがみついて離そうとはしない。
そんなところも可愛い…などと思っていると、イオに社の前に立つように言われ、こっそりと耳打ちされる。
「炎の結晶石をここで作って見せれるか?」
「…う~ん。どうだろう…」
キースは抱えていたキラを地面に降ろし、隣に座り込む。
「キラ、ギュウッて、熱を集めれる?」
キースが聞くとキラはじっとキースを見て、空を見上げた。
風が吹き始め、キラの頭上に集まり始める。
…始まった。
「イオ。炎の結晶石を冷やす場所はある?」
「社の池を使うと良い」
そう言って、イオは隣に有る池を視線で示す。
「お湯が涌き出ている池だから、冷たくはないが…」
無いよりはましだろう。
そんな会話をしているうちに、キラの頭上に炎の結晶石が赤くキラキラと輝いていた。
回りにいるもの達は、その美しさに見惚れている。
風が収まり、落ちてくる炎の結晶石をキースは風で包み込み、落下する場所をイオが言った池へと誘導する。
ポトンと音がして、水蒸気が舞い上がった。
辺り一面、真っ白な水蒸気に包まれ、しばらくすると次第に収まり、視界がもとに戻っていく。
イオが池に入り、炎の結晶石を拾ってきて、キラのもとへ持って来た。
そしてキラの前に膝を付いて、炎の結晶石を掲げた。
「キラ様。我らワイトデ自治区は、キラ様をアリミネ火山の守護竜としてお慕いいたします。どうぞ、お守りください」
イオがそう言うと、回りにいた人々も膝を付いて座り込み、頭を下げた。
ギュウッ!
キラがそう鳴くと、イオは微笑みキラの頭を撫でる。
「よろしく。キラ様」
キラは撫でられて気持ち良さそうに目を細める。
そして、社で宴会が始まった。
キラの前にいろんな食べ物が運ばれてきて、キラは興味深々に覗き込み、キースが食べるとキラも口を開けて催促する。
キースは少量づつ手のひらに乗せて、キラに食べさせていた。
…何でも食べるんだ。
そこへチハヤが近づいてくる。
「キラちゃん。美味しい?」
ギュウッ!
チハヤはニコニコ微笑んで、手のひらに果物を乗せてキラに食べさせてあげる。
「…お祭り騒ぎになっちゃったね」
ぽそりとチハヤが言ってくる。
「キラが認めてもらえれば良いよ。…でもこれが、後三回続くと思うと、そっちの方が気が重い…」
キースが苦笑いすると、その言葉にチハヤは笑った。
キラが炎の結晶石を作れるのは一日一個までだ。
その日の気温と、お腹の減り具合にもよる。
初めて炎の結晶石を作ったときは、お腹が減りすぎて貪るように作って食べていたらしい。
魔力の制御をするようになって、人族と同じ食べ物を食べるようになって、身体と魔力のバランスが取れるようになってきたようだ。
明日は熊族の町に行く。
賑やかな宴が終わり、イオの屋敷の客室でキラと一緒の部屋で眠った。
夜中に重くて目が覚めると、キースが眠るベッドの掛け布団の上に丸くなって、キラが眠っていた。
…キラは良い子だ。
キースは微笑みを浮かべて再び眠りについた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
夢の国~フューチャースノーパーク~Future Snow Park
Algo Lighter
青春
この作品の舞台は「近未来のテーマパーク」。子供の頃、夢はまるで空から降る雪のように純白で、光を反射して「キラキラ」と輝き、無限の可能性を感じさせました。しかし、成長するにつれて、その夢は時に道に落ちた雪のように、薄暗く、どうしようもなく思えてしまうこともあります。人は夢を持つことで儚さを知ると言われますが、だからこそその夢の本質を多面的に描きたかった。この作品が、読者の皆様が抱える夢に対する新たな視点を与え、再認識するきっかけとなることを願っています。
ライトブルー
ジンギスカン
青春
同級生のウザ絡みに頭を抱える椚田司は念願のハッピースクールライフを手に入れるため、遂に陰湿な復讐を決行する。その陰湿さが故、自分が犯人だと気づかれる訳にはいかない。次々と襲い来る「お前が犯人だ」の声を椚田は切り抜けることができるのか。
【完結】君への祈りが届くとき
remo
青春
私は秘密を抱えている。
深夜1時43分。震えるスマートフォンの相手は、ふいに姿を消した学校の有名人。
彼の声は私の心臓を鷲掴みにする。
ただ愛しい。あなたがそこにいてくれるだけで。
あなたの思う電話の相手が、私ではないとしても。
彼を想うと、胸の奥がヒリヒリする。

私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる