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裏挿話・呼びかける真名(なまえ)〜美穂と茜〜【R15】
初夜【五】
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「なんか……なんか、ヘン、な、の……!」
せりあがる呼吸に合わせ、セキコの指が内側だけでなく外側もいじってくる。
「あ……あっ……」
自分の指で慣れたそこを一緒にこすられると、『ヘン』より『気持ちイイ』が勝ってくる。
「は、……っ……!!」
セキコの両腕に強くしがみついたあと、美穂はどっと脱力した。
荒く息をつく美穂の頬に、セキコがくちづける。
「大丈夫?」
「……うん」
ある程度、呼吸が落ち着いたところでセキコに問われ、美穂は素直にうなずいた。
「アタシも……気持ち良くなって、いい?」
美穂は自分の腰の辺りにある硬い感触に、いまさらながら気づいた。
(コレ、は……アレ、で……コレを、アレするんだよね……?)
「いっ、いいよ、決まってんじゃん!」
「……本当に?」
耳もとで尋ねるセキコの声音が、かすれる。初めて聞く余裕のない、声色。
美穂は、そんなセキコが、急に可愛いく思えてしまった。
ほとんどはだけて腰に引っかかるだけの衣の帯を解き、セキコに向き直る。
「いいよ。あたしにもっと、お前のコト感じさせて?」
言って、セキコの首の後ろに両腕を回し、抱きついてみせる。
「……アタシの仔猫ちゃん、スゴく大胆」
冗談めかして応じたセキコが、美穂を強く引き寄せた。
衣一枚を隔てているのがもどかしく、美穂はセキコの着物を下へと落とそうとする。
「早くお前も脱げよ」
「もうっ! 大胆通り越して、野蛮ね!」
不服そうに口をとがらせながらも、セキコはその口調に不釣り合いな肉体をさらす。
無駄な肉のない、しなやかな獣のような肢体が現れ、美穂の目を奪う。
(こいつ、着物のなかは思いきり男じゃんか!)
「美穂? 恥ずかしいから、あんまり見ないで」
汗ばんだ肌にまとわりついた赤褐色の波打つ髪をかきあげ、照れたように笑ったセキコが、美穂を押し倒した。
(中身はオトメか!)
突っ込みを入れたのは、セキコの裸体に組み敷かれた自身の胸の高鳴りをごまかすためだ。
「ゴメンね、美穂。本当にもう……止めてあげられないから」
赦して、と、告げた唇が美穂の唇を奪う。
ややして離れたあでやかな美貌をにらむように見上げ、美穂は言った。
「いいから、ひとおもいにヤッてくれよ」
「……イヤぁね。だんだん情緒がなくなるわ」
「お前が焦らすからじゃん! コッチはもう……さっきから心臓バックバクなのに!」
思わず漏れた本音。セキコの目が、優しく細められた。
「そうよね、ゴメン。
───大好きよ、美穂」
微笑みを浮かべたセキコの両手が、美穂の大腿に伸びて、おもむろにくつろげた。
先ほど高められた熱を放つ美穂に自らをこすりつけ、セキコはせつなげな息をつく。
「力、抜いてて」
「えっと……?」
「深呼吸」
セキコにしては短い返しに、彼もまた余裕がないのだと美穂は改めて思い知らされた。
(こわい、けど……こいつを、受け入れたい……!)
いつも、余裕がなくワガママな美穂を受け入れてくれている、この愛しい存在を。
『この時』だけは、自分が。
「……ッ!!」
ゆっくりと、押し入られただけなのに。
鈍い痛みが下腹部を貫く。
「美穂……? 動いても、大丈夫……?」
涙目になって見上げれば、セキコの表情も、苦しげで。
美穂は、指を上げて、セキコを求めるようにうなずいた。
赤褐色の髪に触れ、引っ張る。
「いい、よ。お前が好きなように、動いて」
「……バカ。そんなこと言って」
美穂の言葉を軽くいなしながらも、セキコは上半身を折り、ぐっと美穂との距離を縮める。
美穂のなかで熱い塊が、さらに奥へと突き進む。
「好き……! 大好きよ、美穂」
頭を抱えこまれながら、セキコから送られる律動に、美穂は息を乱しながら、必死でついていこうとする。
そのうちに、だんだんと身の内にある熱を逃したくない欲が身体に目覚めていくのが分かった。
(あ……なんか、コレ……!)
ぎゅっと、しめつけながら、愛しい者の名を、呼ぶ。
「……聞こえ、た」
「っ……」
「アタシの、名前……」
「……は、あっ……ん、ッ!!」
声にならない声をあげ、どこか違う次元にでも行ってしまいそうな自分を、美穂は懸命にしがみつかせる。
「あ、かねっ……」
「ん」
「気持ち、イイ……?」
「いいわよ、スゴく……。おかしく、なりそう……!」
至近距離で聞きたかった答えが聞け、美穂は満足しながら、もう一度、胸中で愛しい“神獣”の真名を呼ぶ。
茜、と──。
せりあがる呼吸に合わせ、セキコの指が内側だけでなく外側もいじってくる。
「あ……あっ……」
自分の指で慣れたそこを一緒にこすられると、『ヘン』より『気持ちイイ』が勝ってくる。
「は、……っ……!!」
セキコの両腕に強くしがみついたあと、美穂はどっと脱力した。
荒く息をつく美穂の頬に、セキコがくちづける。
「大丈夫?」
「……うん」
ある程度、呼吸が落ち着いたところでセキコに問われ、美穂は素直にうなずいた。
「アタシも……気持ち良くなって、いい?」
美穂は自分の腰の辺りにある硬い感触に、いまさらながら気づいた。
(コレ、は……アレ、で……コレを、アレするんだよね……?)
「いっ、いいよ、決まってんじゃん!」
「……本当に?」
耳もとで尋ねるセキコの声音が、かすれる。初めて聞く余裕のない、声色。
美穂は、そんなセキコが、急に可愛いく思えてしまった。
ほとんどはだけて腰に引っかかるだけの衣の帯を解き、セキコに向き直る。
「いいよ。あたしにもっと、お前のコト感じさせて?」
言って、セキコの首の後ろに両腕を回し、抱きついてみせる。
「……アタシの仔猫ちゃん、スゴく大胆」
冗談めかして応じたセキコが、美穂を強く引き寄せた。
衣一枚を隔てているのがもどかしく、美穂はセキコの着物を下へと落とそうとする。
「早くお前も脱げよ」
「もうっ! 大胆通り越して、野蛮ね!」
不服そうに口をとがらせながらも、セキコはその口調に不釣り合いな肉体をさらす。
無駄な肉のない、しなやかな獣のような肢体が現れ、美穂の目を奪う。
(こいつ、着物のなかは思いきり男じゃんか!)
「美穂? 恥ずかしいから、あんまり見ないで」
汗ばんだ肌にまとわりついた赤褐色の波打つ髪をかきあげ、照れたように笑ったセキコが、美穂を押し倒した。
(中身はオトメか!)
突っ込みを入れたのは、セキコの裸体に組み敷かれた自身の胸の高鳴りをごまかすためだ。
「ゴメンね、美穂。本当にもう……止めてあげられないから」
赦して、と、告げた唇が美穂の唇を奪う。
ややして離れたあでやかな美貌をにらむように見上げ、美穂は言った。
「いいから、ひとおもいにヤッてくれよ」
「……イヤぁね。だんだん情緒がなくなるわ」
「お前が焦らすからじゃん! コッチはもう……さっきから心臓バックバクなのに!」
思わず漏れた本音。セキコの目が、優しく細められた。
「そうよね、ゴメン。
───大好きよ、美穂」
微笑みを浮かべたセキコの両手が、美穂の大腿に伸びて、おもむろにくつろげた。
先ほど高められた熱を放つ美穂に自らをこすりつけ、セキコはせつなげな息をつく。
「力、抜いてて」
「えっと……?」
「深呼吸」
セキコにしては短い返しに、彼もまた余裕がないのだと美穂は改めて思い知らされた。
(こわい、けど……こいつを、受け入れたい……!)
いつも、余裕がなくワガママな美穂を受け入れてくれている、この愛しい存在を。
『この時』だけは、自分が。
「……ッ!!」
ゆっくりと、押し入られただけなのに。
鈍い痛みが下腹部を貫く。
「美穂……? 動いても、大丈夫……?」
涙目になって見上げれば、セキコの表情も、苦しげで。
美穂は、指を上げて、セキコを求めるようにうなずいた。
赤褐色の髪に触れ、引っ張る。
「いい、よ。お前が好きなように、動いて」
「……バカ。そんなこと言って」
美穂の言葉を軽くいなしながらも、セキコは上半身を折り、ぐっと美穂との距離を縮める。
美穂のなかで熱い塊が、さらに奥へと突き進む。
「好き……! 大好きよ、美穂」
頭を抱えこまれながら、セキコから送られる律動に、美穂は息を乱しながら、必死でついていこうとする。
そのうちに、だんだんと身の内にある熱を逃したくない欲が身体に目覚めていくのが分かった。
(あ……なんか、コレ……!)
ぎゅっと、しめつけながら、愛しい者の名を、呼ぶ。
「……聞こえ、た」
「っ……」
「アタシの、名前……」
「……は、あっ……ん、ッ!!」
声にならない声をあげ、どこか違う次元にでも行ってしまいそうな自分を、美穂は懸命にしがみつかせる。
「あ、かねっ……」
「ん」
「気持ち、イイ……?」
「いいわよ、スゴく……。おかしく、なりそう……!」
至近距離で聞きたかった答えが聞け、美穂は満足しながら、もう一度、胸中で愛しい“神獣”の真名を呼ぶ。
茜、と──。
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