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裏挿話・呼びかける真名(なまえ)〜美穂と茜〜【R15】
初夜【三】
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「……少し、残してね?」
ごくごくと勢いよく呑む美穂に対し、失笑をもらしたセキコが告げる。
美穂は、あわてて盃をセキコに押し返した。
「はい」
かろうじて残った盃の液体を見て、セキコは苦笑いしながらふたたび盃を呷った。
ちらりと、その目が美穂をとらえ、伸ばされた長い手指が美穂のうなじにかかる。
「……!」
唇をふさがれ、驚いた拍子に口内に広がる酒の味。
深いくちづけに絡めとられた舌が、心地良さに歓喜する。
「ん、ふ……ん!」
うまく呼吸ができない美穂に気づいたらしいセキコの唇が、わずかに離れ、美穂は必死で酸素を取り込む。
上下する美穂の胸をセキコの指の甲が、猫のあご下をさするように撫で上げた。
「やだっ……」
思わず美穂は、セキコの手を捕まえてしまう。
セキコは、困ったように笑った。
「あら、もう降参?」
「ちがっ……じゃなくて、胸!」
「胸?」
「あたしの胸、ちっちゃいの知ってるくせに! なんでそんな、触ったりするんだよ!」
セキコは美穂の言葉に溜息をついた。
「そりゃ、触るわよ。アンタの胸だろうが足だろうが。
それでアンタのイイトコロを探したいもの、アタシ」
「は?」
「触って確かめて、それでアンタが気持ち良くないからヤメロっていうなら、止めてあげるわ。
だから」
少し、じっとしてて、と、言ったセキコの手のひらが、美穂の胸に押し当てられた。
布ごしに感じる体温に、思わず身震いする。
自分のものとは違う、大きな手のひらと指の腹の感触。
与えられる刺激に、小さな吐息が美穂の唇からこぼれ落ちた。
「……ほら、止めなくてイイでしょ?」
セキコのつややかな声と眼差しに、熱くなる頬をごまかすようにして、美穂はぐっと眉間に力を入れた。
にらむように、セキコを見つめ返す。
「こっち向き、ヤダ」
「え?」
「お前の目が、なんかやらしい」
セキコの愛撫に感じている自分を見られるのが恥ずかしいとは言えず、美穂はそんな身も蓋もないことを口にした。
しかしセキコは、美穂の理不尽な抗議に対し失笑を返すと、仕方ないわねと言うだけにとどめ、壊れ物を扱うように美穂の身体を軽々と持ち上げた。
「……コッチのほうが、いいの?」
くるり、と、セキコに背を向けさせられ、そのひざ上に乗せられる。
「これで良い?」
耳たぶに息がかかり、こそばゆさを覚えながらも、美穂はコクコクと首振り人形のようにうなずいてみせた。
「じゃあ……脱がせるわね」
するりと衣がはだけさせられる上半身。
羞恥に、美穂ののどが上下した。
「あっ……」
露わになった素肌をたどるように、セキコの唇が背中に押し当てられる。
しめった感触が、時折くすぐるように、つっと肌を伝う。
「ひぅ……っ」
(変な声、出た!)
瞬間、セキコが小さく笑ったのが聞こえ、美穂は思わずわめき声をあげた。
「わ、笑うなよっ。あたしだって、好きでこんな声出してるわけじゃないんだから!」
「分かってるわ。
声、我慢しなくていいわよ。反応してくれたほうが、アンタのイイトコロが解るし」
言いながら、セキコの両の手のひらがやわらかく美穂の胸をつつむ。
布ごしに触れられた時とは違い、セキコの体温がじかに感じられ、その心地良さに恥ずかしい声が漏れた。
(こんな声……あたしじゃないっ)
優しく円を描くようになでられ、熱くなる肌と高鳴る鼓動に、美穂は、自分の身体が自分のものではないような錯覚を起こしてしまう。
ごくごくと勢いよく呑む美穂に対し、失笑をもらしたセキコが告げる。
美穂は、あわてて盃をセキコに押し返した。
「はい」
かろうじて残った盃の液体を見て、セキコは苦笑いしながらふたたび盃を呷った。
ちらりと、その目が美穂をとらえ、伸ばされた長い手指が美穂のうなじにかかる。
「……!」
唇をふさがれ、驚いた拍子に口内に広がる酒の味。
深いくちづけに絡めとられた舌が、心地良さに歓喜する。
「ん、ふ……ん!」
うまく呼吸ができない美穂に気づいたらしいセキコの唇が、わずかに離れ、美穂は必死で酸素を取り込む。
上下する美穂の胸をセキコの指の甲が、猫のあご下をさするように撫で上げた。
「やだっ……」
思わず美穂は、セキコの手を捕まえてしまう。
セキコは、困ったように笑った。
「あら、もう降参?」
「ちがっ……じゃなくて、胸!」
「胸?」
「あたしの胸、ちっちゃいの知ってるくせに! なんでそんな、触ったりするんだよ!」
セキコは美穂の言葉に溜息をついた。
「そりゃ、触るわよ。アンタの胸だろうが足だろうが。
それでアンタのイイトコロを探したいもの、アタシ」
「は?」
「触って確かめて、それでアンタが気持ち良くないからヤメロっていうなら、止めてあげるわ。
だから」
少し、じっとしてて、と、言ったセキコの手のひらが、美穂の胸に押し当てられた。
布ごしに感じる体温に、思わず身震いする。
自分のものとは違う、大きな手のひらと指の腹の感触。
与えられる刺激に、小さな吐息が美穂の唇からこぼれ落ちた。
「……ほら、止めなくてイイでしょ?」
セキコのつややかな声と眼差しに、熱くなる頬をごまかすようにして、美穂はぐっと眉間に力を入れた。
にらむように、セキコを見つめ返す。
「こっち向き、ヤダ」
「え?」
「お前の目が、なんかやらしい」
セキコの愛撫に感じている自分を見られるのが恥ずかしいとは言えず、美穂はそんな身も蓋もないことを口にした。
しかしセキコは、美穂の理不尽な抗議に対し失笑を返すと、仕方ないわねと言うだけにとどめ、壊れ物を扱うように美穂の身体を軽々と持ち上げた。
「……コッチのほうが、いいの?」
くるり、と、セキコに背を向けさせられ、そのひざ上に乗せられる。
「これで良い?」
耳たぶに息がかかり、こそばゆさを覚えながらも、美穂はコクコクと首振り人形のようにうなずいてみせた。
「じゃあ……脱がせるわね」
するりと衣がはだけさせられる上半身。
羞恥に、美穂ののどが上下した。
「あっ……」
露わになった素肌をたどるように、セキコの唇が背中に押し当てられる。
しめった感触が、時折くすぐるように、つっと肌を伝う。
「ひぅ……っ」
(変な声、出た!)
瞬間、セキコが小さく笑ったのが聞こえ、美穂は思わずわめき声をあげた。
「わ、笑うなよっ。あたしだって、好きでこんな声出してるわけじゃないんだから!」
「分かってるわ。
声、我慢しなくていいわよ。反応してくれたほうが、アンタのイイトコロが解るし」
言いながら、セキコの両の手のひらがやわらかく美穂の胸をつつむ。
布ごしに触れられた時とは違い、セキコの体温がじかに感じられ、その心地良さに恥ずかしい声が漏れた。
(こんな声……あたしじゃないっ)
優しく円を描くようになでられ、熱くなる肌と高鳴る鼓動に、美穂は、自分の身体が自分のものではないような錯覚を起こしてしまう。
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