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壱 オトコの正体
どこにもない『居場所』【後】
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美穂の家の事情は、クラスメイトの一部は知っているだろう。
だが、知らない生徒を含め、改めて美穂の口から出た『身の上話』に、教室内がふたたび憶測まじりにざわつき始めた。
援助交際、万引き。叔母夫婦からの身体的虐待、などなど。
女子高生の想像力は豊かで果てがない。
美穂は、それらのうわさ話を否定することもなく、残りわずかな休み時間をまた眠りに費やそうとした。
そんな美穂に、声をかけてきたクラスメイトが申し訳なさそうに言った。
「えっと……なんだかゴメンね、豊田さん。わたし、なんにも知らなくて……」
さらし者にされたのは、自分のほうなのに。
目の前の少女のほうが泣きそうな顔をしていたことに、美穂はたまらなく罪悪感を覚えたのだった……。
*
岩場に腰かけた美穂の隣で、しょぼくれたように肩を落としている、赤い法被を着たニホンザル。
「あのさ」
美穂は急に居心地が悪くなり、口を開く。
「この世界の動物って、みんなあんたみたいに話せるの?」
とたん、猿助は嬉しそうに、つぶらな瞳を輝かせた。
「や、話せるモノも話せないモノもおり、色々でござんす、ハイ」
「ふーん」
「セキ様にはあっしの他に、ネコの半妖とスズメの“眷属”がおりまして、そいつらも話したり話さなかったりで」
あ、“眷属”というのは───と、また猿助の長話が始まった。
美穂は、うなずきながらも、自分のまぶたが重くなるのを感じていた。
だが、知らない生徒を含め、改めて美穂の口から出た『身の上話』に、教室内がふたたび憶測まじりにざわつき始めた。
援助交際、万引き。叔母夫婦からの身体的虐待、などなど。
女子高生の想像力は豊かで果てがない。
美穂は、それらのうわさ話を否定することもなく、残りわずかな休み時間をまた眠りに費やそうとした。
そんな美穂に、声をかけてきたクラスメイトが申し訳なさそうに言った。
「えっと……なんだかゴメンね、豊田さん。わたし、なんにも知らなくて……」
さらし者にされたのは、自分のほうなのに。
目の前の少女のほうが泣きそうな顔をしていたことに、美穂はたまらなく罪悪感を覚えたのだった……。
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岩場に腰かけた美穂の隣で、しょぼくれたように肩を落としている、赤い法被を着たニホンザル。
「あのさ」
美穂は急に居心地が悪くなり、口を開く。
「この世界の動物って、みんなあんたみたいに話せるの?」
とたん、猿助は嬉しそうに、つぶらな瞳を輝かせた。
「や、話せるモノも話せないモノもおり、色々でござんす、ハイ」
「ふーん」
「セキ様にはあっしの他に、ネコの半妖とスズメの“眷属”がおりまして、そいつらも話したり話さなかったりで」
あ、“眷属”というのは───と、また猿助の長話が始まった。
美穂は、うなずきながらも、自分のまぶたが重くなるのを感じていた。
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