【完結】Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?

一茅苑呼

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Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?

間接キス──デリカシーゼロ女【1】

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交通量の多い国道から横にれた、もうじき桜も咲き始めるだろう並木道。

昼間との寒暖差に夜風が染みて、思わずぶるっと震えがきて、肩をすぼめる。

……うう、まだ防寒着必要だった。ストール、車の中だよ。

「使いますか」

自転車を止めた進藤くんが、デイパックのなかから翠色のマフラーをつかむと、こちらに差し出してくる。

なんでもないことのような自然な気遣い。進藤くんは、いつもこうだ。

私がその度に胸の奥をぎゅっとつかまれて、息が苦しくなって、泣きそうになっているなんて。
きっと彼は、思いもしないだろう。

努めて明るく、阿呆みたいなテンションで喜ぶ。

「ありがとう~っ! やー、もうさぁ、最悪だよね。
家鍵と車のキー、一緒にしちゃってるから、車中泊もできないし」

受け取ったそれをおもむろに首に巻きつけながら、私は自分に起きた不運を嘆く。

そう、私は今日、鍵を無くした。

せめて、車のキーさえあれば暖房つけてなんとか一夜を過ごせたのに。

せめて、無くしたであろう場所、空のコンテナの本部回収が、あと一時間遅かったら。

『ああ、災難でしたね。見つかったら明日の朝便の連絡バッグに入れておくってことで、埼玉工場のほうに言っときますよ』

と。急いで電話したエリアマネージャーには口先だけの同情と事務的な対応をされた。

いや、私が悪いんだけどさ。余計な仕事増やした自覚はあるけどさ。

親元は、県外。給料日前のカツカツな生活。

消費者金融にお金借りて市内のビジネスホテルに一泊……も、考えなくもなかった。

十年来の親友も、ここ数年の感染騒ぎの同調圧力に屈して疎遠になってるし。
こんな状況とばかりに連絡をとるのも気が引ける。

───なんて。

そんなの、全部いい訳だ。確かに私は面倒くさがりの行動力ゼロの女だけれど。

本気で本気の対応を考えれば、こんな手段にはでなかったはずだ。

片想い中の年下くんに、恥も外聞もかなぐり捨てて、泊めてくれだなんて言うとか。
誰が聞いてもおかしな話だ。

「コンビニ寄りますか」
「えっ……あ、そうだよね!」

遅い時間となる夕飯はもちろん、下着とか歯ブラシとか、いわゆるお泊まりセットは必須。

……って、お風呂も借りる前提だけど、いや、やっぱり図々しいのかな? いまさらか?

住宅地のなかにある大手コンビニは、そこだけやけにまばゆい光を放っていた。

ホッとするような、それでいて夜分に片想いの彼と訪れるには、浮足立つ気持ちとわずかな後ろめたさがつきまとう。

そそくさと必要なものだけを買って店の外に出て待ってると、

「飲みますか」

ふわっと香る、コーヒーの匂い。

ありがとうと、なんのてらいもなく手を伸ばしたけれど。
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