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第五章 ── 村上 和哉 ──

恋愛遊戯の傍観者【3】

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話しながら近づいてきた葵の指が、瑤子の髪をすくい、自らの口もとへ寄せる。

葵が、ちらりと、瑤子を見やった。

「神田さんは、おまけに綺麗だし……人のものでなければ、僕がもらうんだけどなぁ」

妖しい色気に満ちた瞳が、向けられる。

一瞬後、するりと髪から指を抜き葵はカメラを構えた。

(なんだか、女の子に告白された気分だわ……)

軽い眩暈めまいをおぼえる。

瑤子は、おもむろに口をひらいた。

「ごめんなさい───人の物で」

「そうだよ。残念だなぁ。
女性で綺麗だなんて認めたの、神田さんが初めてだったのに」

瑤子の皮肉をものともせず、葵は肩を揺らした。
よく笑う男だと、瑤子はあきれてしまう。

「───そういう意味じゃ、村上も撮りたかったんだけどね、僕は」

さりげなくもちだされた名前に、ぎくっとする。

(和哉くんも撮りたかったって……)

「神田さんも知ってるだろうけど、彼、いい身体してるでしょ?
実に僕好みなんだけどねぇ……あっさり、断わられちゃって。
でも、あなたは引き受けてくれるよね? モデル」

「───本当は和哉くんとの写真、撮ってるんじゃないの?」

葵の言葉を無視して問う。
和哉の名前がだされ、かずにはいられなくなる。

「やだなぁ、疑ってるの? 僕は、そんな嘘はつかないよ。
第一、もしそんな写真があるとしたら、僕はそれを利用するし、そうしたら村上は、あなたのためにモデルを引き受けると思うけど?」

確かに……そうだ。
律儀で誠実な和哉のことだから、そうするに違いない。

「どうかな? 引き受けてくれるなら、この現像した写真は、神田さんにあげるよ。
残りの写真とネガは、モデルの件が終わってから」

「───一週間、考えさせて」

即答はできなかった。
ヌードではないと言っても、そんな保証は、どこにもない。

下手をすれば、また、強請ゆすりの材料にされる恐れがある。

「答えはでてると思うけどなぁ。
……オーケィ。一週間、待ってあげるよ」



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