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第四章 連鎖舞台

成長の軌跡【2】

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(あれは……『狐族』の「水の舞い」の型から《盗んだ》ものだね)

他人の技術力を得ようと思ったら、それを受け入れる素地と感性……そして努力が必要だ。

ただの物真似にならなかったのは、未優が自分のうちできちんと消化し、自分の技術ものとしてしまったからだろう。

(歌の方も、少し色気がでてきたようだし)

成長著しい。
響子はそんな未優を見て、ふっと微笑んだ。

(こりゃ、あとでクギさしとかなきゃいけないねぇ)

脳裏に、黒髪のヴァイオリニストの姿が浮かぶ。

さて、どちらからにしようか───響子が思いあぐねた時、目の前で未優の演技が終わった。


†††††


涼子が言っていた「他のナイチンゲール達に実力を示す」というのは、こういう意味もあったのか、と、未優は思った。

“連鎖舞台”への出演希望の者すべての演技が終わったのち、もう一人の世話係である薫が、“歌姫”一人一人を回ってノート型の端末機に各演目の各幕、それぞれふさわしいと思う者を投票させたからだ。

「……僕が端末握ってるからって不正は一切ナシだから、安心して?」

さりげなさを装い、薫が未優にささやいてきた。

「当たり前じゃない、もう」

ムッと薫をにらみ、未優は薫に端末機を返す。

薫はそんな未優に片目をつむってみせてから、次の“歌姫”へと近寄って行く。

やがてすべての“歌姫”を回った薫が集計操作を行い、端末機を響子に手渡した。

「じゃ、結果を発表するよ。
『灰かぶり』第一幕、『偶像』愛美まなみ。第二幕、『偶像』───」

手元の端末機を見ながら、響子は抑揚もなく名前を読みあげていく。

「───第二幕、『禁忌』未優」

瞬間、未優の身体に鳥肌が立った。

選ばれた、自分が! あの舞台に、もう一度立てるのだ!

(留加と一緒に、また……!)

嬉しさのあまり、未優は、その場で飛び上がりそうになる自分を押さえこむのに精一杯だった……。


†††††


全体練習を終え、未優は一目散に留加の元へ向かった。

例によって防音室でヴァイオリンを弾いていた留加に結果を告げると、彼は静かにうなずいた。

「そうか。良かったな」
「……なんか、反応があっさりしすぎじゃない?」
「君の目的は、メンバーに選ばれることだったのか? “舞台”に立つことではなく」
「……“舞台”に立つこと、デス」

切り返されて、未優はぼそぼそと答えた。
留加の言うことは最もだが、もう少し喜びを分かち合ってくれてもいいのではないだろうか。

(一番に、この気持ちを伝えたかったのに……)
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