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第三章 王女と奏者

新人歌姫と新人世話係【2】

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清史朗が着ているものと同じ、従業員用の制服だった。

「まさか、あんたまでここの従業員になったとか言うんじゃないでしょうねぇ?」

「あったり! 今日から僕が、未優専属の世話係だよ」

いたずらっぽく笑って片目をつむる薫に、未優はげっ……とつぶやいたが、響子が咳払いすると、薫は肩をすくめてみせた。

「……なんていうのは半分冗談で半分ホント。
世話係になったのは本当だよ。ただ担当は、未優を含めて“地位”の低い『偶像』と『踊り子』なんだけどね。
でも、気持ちは未優専属ってコトで、頼りにして欲しいな」

語尾にハートマークでもつけてそうな薫の口調に、未優はげんなりとした。

「どうか、お願いだから平等に……できればあたしだけ放っておく方向でいてくれる?」

「えーっ! そんなの、僕が世話係になった意味ないじゃん! ひょっとして未優ってば、照れ屋さんだったりする?」

(……薫って、やっぱりちょっと感覚がズレてる気がする……)

いちいち反応するのも面倒になった未優が黙っていると、響子がパンッ、と大きな音で手を叩いた。

「坊っちゃんは、ちっと黙っててくれるかい。
未優、アタシに話があるんだろ」

「あ、はい! あの……あたし、いつになったら“舞台”に立てますか?」

響子にうながされ、未優はここに来た目的を思いだす。響子はニヤッと笑った。

「そりゃあんたの実力次第さ。
スケジュール表、見たんだろ? 今のままじゃいくら待ったって、あんたは“舞台”に立つことなんて、できゃしないよ。
果報は寝て待ってちゃ、ダメってことさ」

「───あの、具体的にどういうことか、教えてくれますか?」

真剣な面持ちで未優が問う。響子は涼子に説明するよう、無言でうながした。

「“連鎖舞台”って、解るかしら?」

「あ……週末の三日間、そう書いてあるのを見ました。でも、どういう意味かまでは……」

「あなたが“舞台”に立てるとしたら、“連鎖舞台”しかないわ。まずは、そこに立てるだけの実力があると、皆に……他のナイチンゲール達に示すことね」

涼子の言葉に、未優は息をのんだ。

他の“歌姫”に自分の実力を示す。
そんなことが可能なのかどうか、今の段階では、まったく見当もつかなかった……。




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