【完結】拾った猫が超絶美少女だったので、彼女を救うため異世界に行って来ます!

一茅苑呼

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番外編『夢天女の涙』──ジーク視点──

3.オレ以外はみんな、分かるらしい

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その晩、気になってろくに睡眠もとれなかったオレは、翌朝、無二の親友であるユーヤ・ド・ダラスの家を訪ねた。

「ふうん。10年前の約束、ね」

オレがエマとの約束について、何か心あたりがないかと問うと、意外にもユーヤは意味ありげに笑った。

「なにか知っているのか!?」

意気込んで詰め寄ると、ユーヤは、ふっ……と笑った。

「知ってるわけじゃないけど、見当はつく」

「それ、教えろよ!」

「俺から教えるよりも、お前が自分で思いだしたほうがいい」

思わずオレは、グシャグシャと髪に片手を突っ込んだ。

「だから自分で考えて、分かんなかったから、お前に訊いてるんだよ!」

「……考えるんじゃなくて、思いだせよ」

からかうように、ユーヤがオレを見る。
ふう、と、息をついた。

「……仕方ないな。ヒントをやろう。キーワードは、夢天女だ」

少し声を落として言う。

「ゆめ……天女?」

なんだ、それは。

「そう。そこから連想するものは……ないか?」

「ない!」

きっぱり答えると、ユーヤはわざとらしく肩をすくめた。

「じゃ、ダメだね」

り捨てるように言われて、反射的に語調を荒らげた。

「お前っ、それが困ってる親友に対しての、誠意ある言葉かっ!?」

おいおい……と、子供をたしなめるようにユーヤは皮肉げに笑った。

「親友だなんて、こんなときばかり振りかざすなよ。

───とにかく、お前自身が思いださない限り、なんの意味もないことなんだからさ。

これは、そういう類いの問題だってことだよ」





しぶしぶユーヤの家を退散したものの、オレの頭からエマの言葉が離れることはなかった。

おまけに。

ユーヤのばかやろーのせいで、新たな疑問が増えちまったし。

オレは釈然としない気分を持て余し、このイライラモヤモヤする胸のうちを、誰かにぶちまけたくて仕方なかった。

そんな時、ばったり道端でオレと出くわしてしまった不運な男が、ギルバート・スミス、奴だった。

フルートの名手として知られるギルは、オレとは真逆のタイプだ。

剣の腕はまぁまぁだが、頭のいい、温厚な良識人で、老若男女問わず好かれる男だった。

「やぁ、ジーク。元気かい?」

人懐っこい笑みを浮かべて声をかけてきたのは、他の誰でもない、ギルのほうだ。

オレは今までの鬱憤うっぷんを晴らすべくして口をひらきかけたけど、ふと、待てよと思い直した。

ここで気分に任せて《がなる》よりも、気になっていた疑問を口にするほうが賢明なことに気づく。

「ギルバート……訊きたいことがあるんだ」

知らず知らずのうちに深刻な表情になっていたらしく、ギルはちょっと笑ってオレの肩を抱き、うながした。

「難しいことは、ごめんだよ。
僕に分かる程度のことならね、答えよう」

オレは探るように口を開いた。

「───夢天女って……知ってるか?」

「一応ね。詳しいことは、よく知らないけど」

手応えのある返事に、オレはエマとの約束のことや、ユーヤの言葉などを逐一もらさずに話して聞かせた。

「なるほど、それで、夢天女なのか」

どうやらギルにも、察しがついたようだった。

オレだけ分かんないって、やっぱオレってバ……いやいや、分からなきゃ、聞けばいい話だもんな。

そう思って、素直にギルから説明を受ける気満々になっていたオレに、

「じゃあ僕からも、ヒントを出そう。

───夢天女の涙、だ」

なんて、肩透かしな言葉が返ってきた。おい!

「また夢天女かよ!?」

「そうさ」

うなずいて、ギルは意味ありげに笑った。

ユーヤと同じような反応に、お前もかっ、と、怒鳴りつけたくなる。

「夢天女の涙とは、どんなものか。
それが分かれば、自然とエマとの約束も分かるはずだけど……。

そうだね。ユーヤの言う通り、これは君自身が思いださなければ、確かに意味のないことなのかもしれないな。

……何より、エマにとっても、ね」

つけ加えられたひとことに、唇をかんだ。

夢天女の涙、か……。



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