【完結】拾った猫が超絶美少女だったので、彼女を救うため異世界に行って来ます!

一茅苑呼

文字の大きさ
上 下
48 / 79
第四章 真実の行方

10.ユーヤ、ごめん

しおりを挟む
「カミュ……ラ。おま、え……間違っ……て、る、よ……」

オレの言葉に、カミューラはちょっと笑った。

「間違い? そんなこと、最初から分かっていたわ。
他人を犠牲にして、それでも私は、ユーヤを王に就かせたかった。
だからティアもつくったわ。
ユーヤは……王にふさわしかったもの……」

半ば目を伏せて、カミューラは静かに口を閉ざす。

───カミューラは、ユーヤのことしか考えられなかったんだ。

ここの人々から拒まれ続けていた彼女が、信じられたのは、ユーヤだけだったんだ……。

───だから。

ユーヤしか、目に入らなかった。
ユーヤ以外の人間を、思いやることができなかったんだ……。

そんなカミューラを思うと、何も言えなかった。

世界中の、いやせめて学校中の人々を敵にまわしたとき、オレは彼らのことを思いやれるだろうか?

そんな敵だらけのなかで、たった一人でも自分の味方になってくれる人が出てきたら、オレはきっと、その人のことしか考えられなくなるんじゃないだろうか───。

「ユーヤは……本当に、それを……望んでいたのかよ……?」

尋ねてみた。
ユーヤはカミューラを、責めなかったのだろうか?

だって、親友を殺されたんだぜ? しかも、自分が疑われるような方法で。

カミューラは、頬にかかったブロンドの髪を、優雅に耳の後ろに流しながら答えた。

「これで王位はあなたのものよって、ユーヤに言った時、彼はありがとうって、応えてくれたわ。
望んでいたはずよ」

それを聞いた瞬間、オレはたまらなくなって、片手を地面に叩きつけた。

どうして……!

やりきれない思いで、カミューラを見た。

「ユーヤは、君の気持ちを考えて、そう言ったんだ!
こんなことをされて迷惑だなんて、ユーヤには、どうしても言えなかったんだ!」

わめき散らすように言ってしまったオレの前で、カミューラは表情を強ばらせた。

「そん、な……うそよ……。
だって、ユーヤは確かに、ありがとうって───」
「本当のことを言えば、君を傷つけると思ったんだ。
君が彼のためにしたことを、ユーヤは、自分の責任に感じたんだ。
だからっ……」

激情のあまり声を失いながら、それでもカミューラに伝えようと、必死になって言葉をつむいだ。

「だから、自分のなかのジークへの想いを抑えて、ただ君だけの想いを大事にして、ユーヤはありがとうって、言ったんだ」

オレの言葉のひとつひとつを、カミューラは思いつめたように繰り返し、つぶやく。

「私は、ただ……ユーヤのためを思って───」

口もとを覆って、カミューラは視線を宙に浮かせる。
その姿は、やり場のない悲しみを持て余しているように、見えた。

オレは、思わずうつむいた。

ユーヤ、ごめん。
お前が懸命にかばったカミューラの想いを、オレが傷つけちゃったよ。

でもオレは、お前の気持ちを、彼女に知って欲しかったんだ。
───赦してくれるよな……?

「きゃっ……」

小さな悲鳴のあと、もみ合う音がオレの耳に届く。

顔を上げれば、カミューラを地面に押し倒し、馬乗りになって彼女に剣を振り上げるエマが目に入った。

「やめろよ、エマっ!」

思わず叫ぶと、エマは鋭くこちらを見返した。

「貴様に、何が分かる!
ジークは……ジークは、こいつ一人の勝手な思い込みで、殺されたんだぞっ!
ただ、それだけで……!」

唇をかみしめ、エマは剣を逆手に持ちかえた。

「カミューラ、死ね!」
「やめ───」

そこまで言った瞬間、剣は真っすぐに突き立てられていた……。
エマは肩を大きく上下させ、目の前を凝視していた。

「エマ……カミューラ……!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...