45 / 79
第四章 真実の行方
7.いわくつきの森へ
しおりを挟む
エマが反射的に身をひるがえし、カザリンの花畑へ向かい走りだした。
もちろん、オレとギルも彼女のあとを追うように走った。
カザリンの花畑を見渡すことができるところまで来たとき、オレ達は頭上に、鳥とも何ともいえないような生き物を見た。
それは、恐竜に似ていた。
ワニのようなゴツゴツとした皮に覆われた体。
腹のあたりだけが象牙色をし、あとは全体的にくすんだ緑色をしていた。
耳の後ろに二本の角、額には血色のルビーがはめ込まれ、二つの大きな翼は、片翼が二メートル近くも広がり、一本の細長いしっぽをもっていた。
そして、二本の短い足には、長い鉤爪が双方に三本。
その爪にセラを、正確にいえば、セラの腰ひもを引っかけていた。
「助けてぇっ! エマさんっ……!!」
空中で、もがきながらセラは、こちらに必死で両腕を伸ばす。
「セラ!」
エマが青ざめてセラを見上げる。
「あれは、まさか……!」
「知ってるのか!?」
ギルのつぶやきに、オレは未知の生物から視線を下げて、ギルを見た。
「いや……僕も噂で聞いただけなんだが、おそらく」
顔を上げて《ソレ》を見つめながら、ギルは先を続けた。
「色、形、それから足首の金の輪からいって……カミューラのペットの、確か、ゼランダルという名のギャースの一種だろう」
あんなの、ペットにするかっ、フツー。
ギルの説明に、思わず突っ込んだ。
カミューラってのは、かなりの変わり者の女だよな。
ワケ分かんねー花は育てるわ、変な怪物はペットにするわでさぁ。
エマと互角に渡り合えそう……。
「エマさん! エマさんっ!」
狂ったようにセラがエマの名前を口にし、オレはカミューラに、変な感心をしている場合ではないことに気づく。
くっそ、あの高さで落とされたら、ひとたまりもねーじゃねぇか。
ゼランダルはオレ達の頭上を、奇声をあげながらグルグル回っていたが、じきに、スメルムーン城の焼け跡の向こうへ飛び去った。
「セラーっ!!」
エマが叫びながら、あとを追う。
「そっちは、ダメだ!」
ギルがエマを呼び止めようとしたが、エマは聞こえなかったように、走って行く。
スメルムーン城はまだ炎を上げて燃えているところもあり、エマはその脇をそれこそ飛ぶように走り抜けた。
「エマ、危険だ! そっちは、トゥワイドの森───」
ギルの言葉が終わらないうちに、エマはすでにトゥワイドの森に足を踏み入れていた。
トゥワイドの森───一度、足を踏み入れた者は、二度と出て来られなくなるという、いわくつきの森。
そう言ったのは、他の誰でもない、エマなんだ。
それなのに……!
ぎりっと歯がみした。
そうだ。
エマにとってセラは、そんなことを忘れさせてしまうほど、気にもさせないほど、大切な存在なんだ。
それを! ───くそっ!!
ゼランダルの飼い主がカミューラである以上、セラは彼女の思惑によってさらわれたことになる……。
「ギル、お前はここで待っててくれ。オレがエマを探す!」
「なっ」
「エマ達がもし、オレと行き違いに出て来たら……そのときは、オレのことは忘れてくれ。
いいな!?」
「待て! アサクラ!!」
ギルが止めるのも聞かずに、オレはトゥワイドの森に入った。
もちろん、オレとギルも彼女のあとを追うように走った。
カザリンの花畑を見渡すことができるところまで来たとき、オレ達は頭上に、鳥とも何ともいえないような生き物を見た。
それは、恐竜に似ていた。
ワニのようなゴツゴツとした皮に覆われた体。
腹のあたりだけが象牙色をし、あとは全体的にくすんだ緑色をしていた。
耳の後ろに二本の角、額には血色のルビーがはめ込まれ、二つの大きな翼は、片翼が二メートル近くも広がり、一本の細長いしっぽをもっていた。
そして、二本の短い足には、長い鉤爪が双方に三本。
その爪にセラを、正確にいえば、セラの腰ひもを引っかけていた。
「助けてぇっ! エマさんっ……!!」
空中で、もがきながらセラは、こちらに必死で両腕を伸ばす。
「セラ!」
エマが青ざめてセラを見上げる。
「あれは、まさか……!」
「知ってるのか!?」
ギルのつぶやきに、オレは未知の生物から視線を下げて、ギルを見た。
「いや……僕も噂で聞いただけなんだが、おそらく」
顔を上げて《ソレ》を見つめながら、ギルは先を続けた。
「色、形、それから足首の金の輪からいって……カミューラのペットの、確か、ゼランダルという名のギャースの一種だろう」
あんなの、ペットにするかっ、フツー。
ギルの説明に、思わず突っ込んだ。
カミューラってのは、かなりの変わり者の女だよな。
ワケ分かんねー花は育てるわ、変な怪物はペットにするわでさぁ。
エマと互角に渡り合えそう……。
「エマさん! エマさんっ!」
狂ったようにセラがエマの名前を口にし、オレはカミューラに、変な感心をしている場合ではないことに気づく。
くっそ、あの高さで落とされたら、ひとたまりもねーじゃねぇか。
ゼランダルはオレ達の頭上を、奇声をあげながらグルグル回っていたが、じきに、スメルムーン城の焼け跡の向こうへ飛び去った。
「セラーっ!!」
エマが叫びながら、あとを追う。
「そっちは、ダメだ!」
ギルがエマを呼び止めようとしたが、エマは聞こえなかったように、走って行く。
スメルムーン城はまだ炎を上げて燃えているところもあり、エマはその脇をそれこそ飛ぶように走り抜けた。
「エマ、危険だ! そっちは、トゥワイドの森───」
ギルの言葉が終わらないうちに、エマはすでにトゥワイドの森に足を踏み入れていた。
トゥワイドの森───一度、足を踏み入れた者は、二度と出て来られなくなるという、いわくつきの森。
そう言ったのは、他の誰でもない、エマなんだ。
それなのに……!
ぎりっと歯がみした。
そうだ。
エマにとってセラは、そんなことを忘れさせてしまうほど、気にもさせないほど、大切な存在なんだ。
それを! ───くそっ!!
ゼランダルの飼い主がカミューラである以上、セラは彼女の思惑によってさらわれたことになる……。
「ギル、お前はここで待っててくれ。オレがエマを探す!」
「なっ」
「エマ達がもし、オレと行き違いに出て来たら……そのときは、オレのことは忘れてくれ。
いいな!?」
「待て! アサクラ!!」
ギルが止めるのも聞かずに、オレはトゥワイドの森に入った。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。
木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。
その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。
本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。
リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。
しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。
なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。
竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる