【完結】拾った猫が超絶美少女だったので、彼女を救うため異世界に行って来ます!

一茅苑呼

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第四章 真実の行方

5.消えゆくもの

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「なんだ、これは……!」

エマの問いに、これはユーヤが望んだことだと話した。

しばらくの間エマは何かを考えていたようだけど、結局、分かったというように、オレを見てうなずいた。
「行こう」と、うながされる。

オレ達は互いを支え合いながら、歩行を速めた。

突然、ぱらぱらっと目の前に小石が降ってきた直後、ダーンと物凄い音を立てて、天井がオレ達の行く手をさえぎるようにして、落ちてきた。

げ、ヤバイぞ、これは……。

エマが舌打ちする。

「崩れるのが早いな。
ユーヤの奴、おれ達を逃がして置きながら、実は道連れにするつもりだったのか?」

おいおい……。

オレは苦笑した。
が、すぐに、そんな場合じゃないことに気づいた。

臭いな……焦げ臭い。
嫌な予感。

ゆっくりと後ろを振り返ると、さっき曲がった角の陰から、火の粉が飛び散っているのが見えた。

絶体絶命って、きっとこのことを言うんだろうな。

「アサクラ、おれを降ろせ」

エマが言い、オレは彼女が気分が悪くなったのかと思って、壁に寄りかからせた。

「そこを見てみろ」

天井が落ち、瓦礫がれきが積み重なった所の一ヶ所を、エマの指が差す。

「一人くらいなら、通れそうな大きさだ。おれを置いて、くぐり抜けろ、アサクラ」

ぎょっとして、オレはエマを見た。

「おれは……置いて行け。死に損ないを、助ける必要はない」

ふっ……と、エマが笑う。

「行けよ。……貴様には、待っている親父殿がいる。
さぁ、行け」

冗談、と、オレはつぶやいた。

「行くなら、エマも一緒だ。
オレはユーヤからエマを頼むって言われてるんだ。
第一、エマをここへ置き去りにしたら、ジークに化けて出られちまうよ」

軽口をたたきながら、オレはエマが見つけた隙間に、先にエマを通した。

火の勢いが増し、オレのすぐ側まできていた。

煙を吸わないように、片手で口もとを覆い、向こう側にエマが抜けるのを待つ。

じりっと、着ていたシャツのすそが燃え、オレはあわててシャツを脱ぎ捨てた。

片そでになっていたとはいえ、もったいない話だな。
背に腹は代えられないとは、よくいったもんだぜ。

エマが向こうにくぐり抜けたのを確認し、次いでオレも抜けようとしたけど。

体格差もあってか、エマのようにはすんなりと抜けられず、瓦礫にあちこちを傷つけられる。

ああ、生傷が増えっぱなしだぜ、トホホ……。

ようやくくぐり抜けたそこからゴォーッといううなりが聞こえてきたが、崩れた天井のおかげで、炎は一時的にとどまっていた。

オレはあせりながらも、エマを連れて重い身体を引きずって、ひたすら出口をめざして歩いた。

一度は遠ざかった火の追っ手が、だんだんと迫ってくる。

くそっ……。

エマと二人、必死で、気持ちだけは前へと、走るように歩く。

見えた……! 出口だ!!

朝方らしく、さわやかな朝日の光が、差しこんできている。

オレ達は城を出て、少し離れたところまで行き、力尽きて転がるように座りこんだ。

「城がっ……」

エマのかすれた声に、オレは肩で息をしながら、後方の城を振り返った。

物凄い地響きと共に、城は崩れ落ち、そして燃えていた。

業火がゆれる向こう側にある城は、鮮やかな朱色に染まって見え、形あるものはいずれは消えゆくものなんだと、オレに感じさせた。

あのなかに……ティアやユーヤがいるんだと思うと、たまらない気がした。

「エマ……アサクラ……無事だったのか……」

声のした方向を振り返ると、ギルが、オレの知らない女の子を連れ、こちらに歩いてきていた。

「セラ!」

エマが、女の子を見て目を見開く。

この子が、ジークの妹さんか……。そういえば、目もとが似ているな。

オレは、ぼんやりとそんなことを思いながら、隣のギルに視線を移し、ハッとなった。

うっわー、オレってば、すっかりギルの安否を気遣うの、忘れてたよ……。

「ごめんな、ギル」

ポン、と、肩を叩いて言うと、ギルはきょとんとオレを見返した。

「なんの話だい?」

うう、こいつ人が善すぎる……。
オレよりも、ここに住むのに適してない人間じゃないのか?
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