【完結】拾った猫が超絶美少女だったので、彼女を救うため異世界に行って来ます!

一茅苑呼

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第四章 真実の行方

3.第三者の存在

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一途に訴えかける眼差しに、何も言えなくなった。

……ティアがユーヤを好きなことを、知っていたから。

でもオレは……ユーヤが赦せなかった。

ティアから向けられる痛いほどの真剣な想いに胸をつかれながら、オレは手のひらを、ギュッと握りしめていた。

「ティア、どくんだ」

そう告げるユーヤを、ティアは、白金の髪を散らして振り返った。

「でも!」
「いいから。
───そして君は、もう一度、スメルムーンを離れるんだよ。
ここにいては、いけない」

静かなユーヤの声音を聞き、オレは何か引っ掛かるものを感じた。

まさか……。

「ユーヤ……もしかして、お前───」

その先を続けようとして、一瞬、言いよどむ。

そんな、じゃあ、いままでのことは……。

オレは思いきって、先を続けた。

「お前、ジークを殺してないんじゃないのか……?」

さっきオレが殴りつけたとき、ユーヤは全然、抵抗しなかった。

あれって、変だよな、いままでのユーヤの態度からしたら。

誰かを、かばっているとか……。
───ん? ちょっと、待てよ。

誰か、なんて思いつきで言ったけど、ジーク殺しには第三者が絡んでくるってことか……?

「いや、俺がジークを殺したんだ」

言ってユーヤは立ち上がったけど、オレはますます確信をもった。

ユーヤは、ジークを殺してないと。誰かを、かばっているんだと。

「アサクラ、いま、城外まで迷わずに行ける道を開く。
君は、エマとティアを連れて、城を出てくれ。
……この城は、いまから俺が崩す。そういう仕掛けをしてあるんだ」
「なっ……なんだよ、それ! どういうつもりだよ!?」

いきなりのユーヤの発言に、驚いて詰め寄るオレから視線を外し、ユーヤは気を失って倒れたままのエマを見た。

「彼女はジークを殺した者に復讐するために、いまのような姿になって自分を奮い立たせるしかなかったんだろう。
俺が死ねば、エマはもう男の身なりをしなくても、いいはずだ。
復讐の相手はいなくなるんだから。
さぁ、早く行ってくれ」
「でも……」
「早く!」

鋭く、切れるような眼差しを向けられる。

オレは息をのんだ。こいつ、本気だ。

「───分かったよ」

他に、答えようがなかった。

オレの説得じゃ、ユーヤは首を縦に振ることはないように思えた。

「ユーヤ様。
あたし……あたしは、ユーヤ様の側にいます。ずっと」

横からティアが、思いつめたような表情で言った。

ユーヤは困ったように笑って、ティアに近寄り、彼女の白金髪をくしゃっとかきまぜた。

「駄目だよ」

ティアは声にならない声で何か言いながら、首を振った。

「あたし……ユーヤ様の側に、いたいんです」

───宝石が散った。

ダイヤモンド、サファイア、ルビー……ティアのひざもとで、転がっては光り輝く。

「ティア……」

首を傾けて、ユーヤはティアをのぞきこんだ。

「君は、もう少し感情をコントロールできるようになったほうがいい。
新しい地で暮らしていくためには」

それから、オレを振り返る。

「アサクラ、きちんと止血したほうがいいな。
城を出るまでに、倒れないとは限らないし」

言いながら窓辺に寄り、カーテンを力任せに引きちぎり、それを包帯がわりにして、オレの傷口の応急手当てをしてくれた。

「じゃあ……ティアとエマを頼むよ」
「ユーヤ様。
あたし、ここに残ります、絶対に!」

床に手をつき、意地でも動かないという口調で、ティアが言う。

あぁ、ティアは本当にユーヤが好きなんだなって、そう思えた。

困ったな……。
ユーヤも困るだろうけど、オレも困るよ。

ティアは、ユーヤの側にいたいんだ、ずっと。

でも、だからって、彼女を置いて行ってもいいのかな……。
なんたって、ユーヤは死ぬつもりなんだし。

オレは、ティアを見た。
ユーヤをじっと、青い大きな瞳で見つめている。

溜息をついた。

ティアの……したいようにさせるのが、一番だよな。

悲しいけどオレは、ティアのためには、それがいいと思った。

「ユーヤ。
ティアは、オレ……連れて行けないよ。こんなに、ユーヤの側にいたがってる」

オレの言葉にユーヤは何か言いたげに、口を動かしかけたが、結局、何も言わなかった。

「じゃあ……ティア、ユーヤ。
もし生まれ変わるってことがあるなら、また会えるといいな」

ティアは、小さくうなずいた……。

「急いでくれ、アサクラ。エマを頼む」
「あぁ、分かってる」

オレは気を失ってしまっているエマの腕を、痛めてないほうの自分の肩に乗せた。

そして、部屋を出ようとして、ふと思いだして言った。

「エマに……本当のことを話すよ」

そうさ、真実ほんとうのことを、すべて───。



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