【完結】拾った猫が超絶美少女だったので、彼女を救うため異世界に行って来ます!

一茅苑呼

文字の大きさ
上 下
37 / 79
第三章 奪われた未来

14.ティアは、どこだ!?

しおりを挟む

     ◆ ◆ ◆

目を覚ますと、天井が見えた。

大きな部屋のものだと分かったのは、オレの視線が垂直な壁とぶつかるまで、時間がかかったからだ。

オレ……気、失って。

ケンカする前の直哉との会話とかを、夢のなかで思いだしてたってことか。

謝らなきゃ、なんて思いながら目が覚めるなんて、後味悪いな。

「目が、覚めたようだな」

その声にハッとして、上半身を持ち上げようとした。

うっ……。

身体中に痛みが走る。
びりびりっと、しびれる感覚が全身を突き抜けていく。

ひと息ついて、今度はおそるおそる身体を起こしてみる。

それでも痛みはあったけど、耐えられないほどではなかった。

「お前……」

誰だよ、と、続けようとして、オレは口をつぐんだ。

その男は、ふっ……と、笑った。

大理石で出来た、椅子のような物に腰掛けている。
この部屋にいるのは、オレと、その男だけだった。

部屋が実際よりも広々と感じたのは、男が腰掛けている物以外、何もない殺風景な所だったからのようだ。

「……ネズミが三匹入ったとの報告は受けたが、岩石の仕掛けに、ここへ飛ばされた君は運がいい」

男にしては、高い抑揚のある声で告げたそいつを、オレはようやくまともに見ることができた。

「───君の、名前をこうか」

言われて真っすぐに向けられた瞳の色は、ブルー・グレイ。

いままで意識が朦朧もうろうとしていたせいで気づかなかったけど、こいつって、かなりの美形。

褐色の長めの前髪の奥から向けられる、理知的な眼差しは、その男の落ち着きを表していた。

「オレに名前訊く前に、てめーの名前名乗んな」

ぶっきらぼうに言い返した。実は、ちょっと悔しかったんだ。

名前に全然似合わない、良いルックスをもつ男、と。
友人に言われるオレが、不機嫌になるくらいの容貌の男に、腹が立った。

オレ、名前で泣いたことはあるけど、容姿ではないんだぜっ。

この状況でそんなくだらないことを考えるオレの前で、男はちょっと笑ってみせた。

「いいよ、答えよう。
俺は、ここの城主、ユーヤ・ド・ダラスだ」

一瞬、息が止まるかと思った。

目の前にいる男が、オレ達が会おうとしていたユーヤだったなんて……。

「俺は答えた。さぁ、君の番だ」
「───朝倉だ」

奴を見据えながら、短く答えた。

こいつが、ユーヤ・ド・ダラス……。

ユーヤは静かに口をひらいた。

「では訊こう。
アサクラ、君は、なんのためにここに来た?」
「ティアを!」

問いかけに、思わず声を大にして言った。

「ティアを、返してもらいたいんだ! 彼女は、どこにいるんだ!? 教えろよっ!」

するとユーヤは、ゆっくりと瞬きをした。

「ティア……?」
「とぼけるなよ!
お前がティアをさらったのは、分かってるんだ!」
「ティアの行方は、俺も知らない」

きっぱりと言いきったあと、ニヤッと笑った。

「もっとも、知っていたところで、君に教える道理はないと思うが。
───彼女を、どうするつもりだ?」
「それこそ、答える必要ないだろ」

オレは身体の痛みに耐えながら、立ち上がってユーヤに近寄った。

「なんで、ウソつくんだよ!」

噛みつくように言ったが、ユーヤは無表情にオレを見返した。

「知らないものを知っているとは言えない。
……君のいう通り嘘をつくことになる」
「こいつっ!」

揶揄やゆするように返された言葉に、座ったままのユーヤを見下ろす形で、オレは奴の胸ぐらをつかんだ。

「ふざけてないで、言えよ! ティアはどこだっ!?
彼女は、この国に戻りたくないって言ってたんだぞ!
なんで、連れ戻したりなんかしたんだよっ!!」
「───今度は力づくか。虚しいな」

初めてユーヤの顔に、嫌悪が浮かんだ。
が、それは一瞬のことで、すぐに感情は消え去っていた。

「……仕方ない、君の相手をしよう。この手を放してくれ」

穏やかな口調でユーヤに言われ、オレは手を放した。

思わずカッとなってしまった自分に気づき、ばつが悪かった。

直哉がいると、あいつのほうがカッとなりやすくて、オレは、なだめ役に回るんだけどなぁ。

オレって実は、血の気の多いほうだったんだな。

「……オレが勝ったら、ティアの居場所、教えろよ」

ぼそっと言うと、ユーヤは小さく笑った。

「君が勝つとは思えないが、まぁ、そういう約束にしよう。
ただし、俺が勝ったら、即座に君に城を去ってもらおう。
俺も、暇じゃないんでね。
君の話には、これ以上、付き合えない」

けっ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...