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第三章 奪われた未来
10.貴様、手ぬるいぞ
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「スメルムーンの、剣じゃないか……!!」
スメルムーンの剣!? ……って、なんだ?
「王位継承者が儀式の晩、その剣を手にするんだ。
王にふさわしければ、軽々と扱うことができるが、そうでない者が持つと、触れた場所から灰に変わってしまうんだ。
ジークが死んでから、その行方が心配され、幻の剣とまで言われていた。
───君が持っていたのか、エマ」
驚くギルを尻目に、オレはエマを見た。
「オレに……これを使えって言うのかよ……?」
「そうだ。
これは、おれがジークから死の間際に直接預かった剣だ」
「でもオレ、スメルムーンとはなんの関係もないし、もちろん、王にふさわしいかどうかなんてとんでもない話だろ。
灰にさせたいのか、オレを」
困惑ぎみな怒りをぶつけるオレに、エマは不敵に微笑んでみせた。
「この剣を扱える条件が、もうひとつある。
───自分の行いに、過ちがないと心から信じていれば、この剣を扱うことは可能だ」
オレはスメルムーンの剣に目を落とした。
オレの目的は、ティアをユーヤから返してもらうこと。
それから、ジーク殺しの真相を、ユーヤから訊きだすこと。
この二つだ。
それが、間違ったことだとは、思わない。それなら……。
唇をかみしめ、緊張しながら剣へ手を伸ばす。
くっと、柄を握りしめる。
───……だ、大丈夫だよな? オレの手、そのままだよな?
ホッと全身の力を抜いて、額ににじんだ汗をぬぐった。
なんにもしないうちに、自滅するのだけは避けたいもんな。
「アサクラ。
この一件が片を付けるまで、お前に貸してやる。
宝の持ち腐れ感は否めぬが、この際だ、存分に使え。
その剣は、持つ者に力を与えてくれる。
おまけに頭も良いから、お前のことも記憶しただろう。
一時的に保管するときは、その場に置いて二度、指を鳴らしてやれ。
ふたたび必要になった時は、一度。
よいな?」
オレはうなずき、鞘から剣を抜いた。すると、光がこぼれ落ちた。
穏やかな、月の光のような輝きをもつ、剣だった。
よし。行くぜ!
柄を握り直し、目の前で一度、構える。
エマとギルを見ると、彼らは同時にうなずいた。
そして、オレは身をひるがえし、番兵たちの前に立ちはだかった。
「何者だっ!?」
さっと槍を構えてくる。
「朝倉与太郎だいっ!
おとなしくここを通させてくれれば、痛い目には合わせないぜっ」
後にも先にも、自分の名前を抵抗なく叫んだのは、この時だけだろう……。
「ほざくなっ」
瞬間、番兵の一人が、鋭く短槍で突いてきた。
おっと!
間一髪で躱し、番兵の手元を大きく蹴りあげる。
「ちいっ」
短くうめく番兵の手のなかから、思惑通り、槍は離れてくるくると宙を舞う。
落ちざま、オレは手にしたスメルムーンの剣を横なぎに叩きつけた。
重力に逆らって、ビュンとうなりながら、短槍がもう一人の番兵に向かい、飛んでいく。
ひっ……と肩をすくめた番兵の肩布の辺りを突き通し、勢いのまま、城壁へと刺さった。
それを尻目に、目の前の番兵に剣を突き付ける。
「どうする? まだやるか?」
そいつは両手を上げ、首を大きく振った。
うん、賢明な選択だな。
と、思った瞬間、後ろでうめき声があがって振り向くと、エマが自分のほうに倒れこんだ門番を、さっとかわすのが同時だった。
「貴様、手ぬるいぞ」
って、殺したんじゃねーだろうな。
地面に転がったそいつを見ると、指先がぴくぴく動いていた。
あ、生きてるみたいだ。
血も流れてないしな。よし。
「なんのためにスメルムーンの剣を持たせたのか、分からぬな。
本当に宝の持ち腐れにする気か!?」
無益な殺しがなくてホッとしていると、エマがそんなことを言うものだから、オレはムッとしながら番兵と向き直った。
「だってさ」
言って、剣の柄の部分でそいつのみぞおちを打ってやった。
直後、そいつは地面にくずれ落ちた。
「これで文句ないだろ? とりあえず、使った訳だし」
エマに向かって言うと、彼女は鼻で笑って肩をすくめた。
「話にならぬな」
なんだとっ。
仏頂面のオレに、ギルが笑いながらポンポンと、なだめるように肩を叩いてきた。
「さ、行こう」
スメルムーンの剣!? ……って、なんだ?
「王位継承者が儀式の晩、その剣を手にするんだ。
王にふさわしければ、軽々と扱うことができるが、そうでない者が持つと、触れた場所から灰に変わってしまうんだ。
ジークが死んでから、その行方が心配され、幻の剣とまで言われていた。
───君が持っていたのか、エマ」
驚くギルを尻目に、オレはエマを見た。
「オレに……これを使えって言うのかよ……?」
「そうだ。
これは、おれがジークから死の間際に直接預かった剣だ」
「でもオレ、スメルムーンとはなんの関係もないし、もちろん、王にふさわしいかどうかなんてとんでもない話だろ。
灰にさせたいのか、オレを」
困惑ぎみな怒りをぶつけるオレに、エマは不敵に微笑んでみせた。
「この剣を扱える条件が、もうひとつある。
───自分の行いに、過ちがないと心から信じていれば、この剣を扱うことは可能だ」
オレはスメルムーンの剣に目を落とした。
オレの目的は、ティアをユーヤから返してもらうこと。
それから、ジーク殺しの真相を、ユーヤから訊きだすこと。
この二つだ。
それが、間違ったことだとは、思わない。それなら……。
唇をかみしめ、緊張しながら剣へ手を伸ばす。
くっと、柄を握りしめる。
───……だ、大丈夫だよな? オレの手、そのままだよな?
ホッと全身の力を抜いて、額ににじんだ汗をぬぐった。
なんにもしないうちに、自滅するのだけは避けたいもんな。
「アサクラ。
この一件が片を付けるまで、お前に貸してやる。
宝の持ち腐れ感は否めぬが、この際だ、存分に使え。
その剣は、持つ者に力を与えてくれる。
おまけに頭も良いから、お前のことも記憶しただろう。
一時的に保管するときは、その場に置いて二度、指を鳴らしてやれ。
ふたたび必要になった時は、一度。
よいな?」
オレはうなずき、鞘から剣を抜いた。すると、光がこぼれ落ちた。
穏やかな、月の光のような輝きをもつ、剣だった。
よし。行くぜ!
柄を握り直し、目の前で一度、構える。
エマとギルを見ると、彼らは同時にうなずいた。
そして、オレは身をひるがえし、番兵たちの前に立ちはだかった。
「何者だっ!?」
さっと槍を構えてくる。
「朝倉与太郎だいっ!
おとなしくここを通させてくれれば、痛い目には合わせないぜっ」
後にも先にも、自分の名前を抵抗なく叫んだのは、この時だけだろう……。
「ほざくなっ」
瞬間、番兵の一人が、鋭く短槍で突いてきた。
おっと!
間一髪で躱し、番兵の手元を大きく蹴りあげる。
「ちいっ」
短くうめく番兵の手のなかから、思惑通り、槍は離れてくるくると宙を舞う。
落ちざま、オレは手にしたスメルムーンの剣を横なぎに叩きつけた。
重力に逆らって、ビュンとうなりながら、短槍がもう一人の番兵に向かい、飛んでいく。
ひっ……と肩をすくめた番兵の肩布の辺りを突き通し、勢いのまま、城壁へと刺さった。
それを尻目に、目の前の番兵に剣を突き付ける。
「どうする? まだやるか?」
そいつは両手を上げ、首を大きく振った。
うん、賢明な選択だな。
と、思った瞬間、後ろでうめき声があがって振り向くと、エマが自分のほうに倒れこんだ門番を、さっとかわすのが同時だった。
「貴様、手ぬるいぞ」
って、殺したんじゃねーだろうな。
地面に転がったそいつを見ると、指先がぴくぴく動いていた。
あ、生きてるみたいだ。
血も流れてないしな。よし。
「なんのためにスメルムーンの剣を持たせたのか、分からぬな。
本当に宝の持ち腐れにする気か!?」
無益な殺しがなくてホッとしていると、エマがそんなことを言うものだから、オレはムッとしながら番兵と向き直った。
「だってさ」
言って、剣の柄の部分でそいつのみぞおちを打ってやった。
直後、そいつは地面にくずれ落ちた。
「これで文句ないだろ? とりあえず、使った訳だし」
エマに向かって言うと、彼女は鼻で笑って肩をすくめた。
「話にならぬな」
なんだとっ。
仏頂面のオレに、ギルが笑いながらポンポンと、なだめるように肩を叩いてきた。
「さ、行こう」
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