【完結】拾った猫が超絶美少女だったので、彼女を救うため異世界に行って来ます!

一茅苑呼

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第三章 奪われた未来

3.肖像画に描かれた男女

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「飲まないのかい?」

口をつけずにいたエメラルド色の液体が入ったグラスを指差された。

やっぱ、飲まないと失礼にあたるよな。
……けど、わけワカランものをいきなり飲むのはなぁ。

などと思っていると、そんなオレに気づいたのか、ギルが答えてくれた。

「あぁ、これね。
エメラルドを“スメルムーンの雫”で溶かしたものだよ。
僕はたいていこうして“スメルムーンの涙”を口にしているんだ」
「エマはガリガリ食べてたけど?」
「そうだね。ほとんどの人は、そうやって口にしているな。
この食べ方は、本当は、異国の人に対するもてなし方だったんだ。こうすると、ここの国の人でなくても、消化できるらしいから」

───消化……しているのか、やっぱり。

オレは、エマと言い争っていた時と違い、温厚に話すギルを見た。

そういった単語がでてくるってことは、そうなんだろうな、きっと。
どういう胃袋をしてるんだ、ここのやつらは。

「それより、君に見せたい物があるんだ。
ちょっと待っていてくれよ」

ポン、と、軽くオレの肩を叩き、ギルは隣室に続くらしいドアを開け、なかに入って行った。

なんだろーなー、見せたい物って……。

ぺろっと、おそるおそるエメラルドを溶かしたという液体を、なめてみる。
ふんわりとした、ほどよい甘さが口のなかに広がった。

ん? なかなかイケるぞ。
今度は、ひとくち飲んでみる。
……うん、フツーに、美味うまいかも。

「お待たせ。じゃ、これを見てくれよ」

声と共に、ギルが隣室から戻って来た。

テーブルの上に、何やら四角い、新聞をふたつ折りくらいにしたサイズの少し厚みがある物が、バタンと置かれた。

よく見ると、肖像画だった。少しだけ、ほこりをかぶっている。

描かれていたのは、一組の男女。

男のほうは、オレと同じくらいの歳の感じ。
漆黒の硬そうな黒髪と、漆黒の瞳をもった、精悍せいかんな顔立ちをしていた。
肩幅はガッチリとしてたくましく、全体的に凛々《りり》しい印象を受ける。

そして隣には、寄り添うように可憐な少女が、描かれていた。目鼻立ちのはっきりした、いわゆる美少女ってやつだな。

あれ……?
でも、どこかで見たような……うーん。

描かれた少女を、じっくりと見つめる。

───え……。これって、もしかして───。

「エマ……エマっ? エマだぁっ!!」

思わず指を突き付け、叫んでしまった。

ウソだろ……ぱっと見、まったくの別人としか、思えなかったよ。

顔の造りは、絵と変わってない。

ただ、オレの知っているエマが大人びて見えるのに対して、ここに描かれたエマは無邪気な印象を受け、幼く見える。

それが眼差しのせいだと気づくのは、たやすいことだった。
一途な、疑いを知らない瞳と、氷のように冷たい瞳の───。

決定的に違うのは、とび色の髪の長さ。
絵のなかのエマは、背のなかほどまであるだろう髪を、片手で払うようなしぐさをしている。

「───かなり変わってしまっているだろう? これは、今から三年前に、僕が描いた物だ」

驚いて黙りこんでいるオレに、ギルは静かに声をかけてきた。小さく笑う。
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